Chapter.2
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Chapter.2
翌朝。
「じゃ、行ってくるよ」
「はーい。帰りに頼んだもの買ってきてねー。」
「わかってるって」
彼の左手の細い指にはおなまーえが作った指輪が嵌められている。
心に浮かべたものを見つける、古より伝わる魔法具。
……そう、何故か作れちゃった品物だ。
昨日マルクルと昼飯を食べたあと、本来の自分の仕事の前に、(どうせいつものように失敗するとは思うが)本日の指輪作成チャレンジを終わらせようと机の上に置いた帽子を持ち上げたところ。
『ん?……ぅえ!?ええぇーー!?!?』
城中に私の叫び声がこだました。
マルクル曰く、おなまーえはそれはそれは珍しく狼狽えていて、三軒先の家からも「何かありましたか?」と聞かれたらしい。
そりゃあそうだ。
何年かけても成功しなかったものが、ちょっと目を離した隙に完成していたのだから。
何が良かったのだろうか。
いつもと違う点といえば帽子をかぶせていたことくらいしかないが――
――帽子。
そうだ。
この帽子にはもともと微力ながら魔力が備わっていた。
本当にただ一般人と遜色ないくらいの保有量だがその質は大変上質なものであった。
だからこそおなまーえも店先で惹かれたのであって、この魔力の持ち主に会えれば何かしらヒントが得られるかもしれない。
彼女はそう考えた。
指輪を完成させた昨日は、その原因究明に1日を費やしてしまったため、彼女にきている本来の仕事(国からの仕事や市民から依頼されているもの)に手をつけることができなかった。
本日はそのしわ寄せを消化しなければならないので、帽子の製作者を訪ねるのは明日になってしまうだろう。
いや、明日訪れるためにも何が何でも本日中に前倒しで仕事を終わらせたい。
「カルシファー第2、第4高炉300℃」
「げぇ、また随分と上げるなぁ」
「しょうがないでしょう。お国様に使って頂く本物の兵器なんだから。」
市民から依頼される魔法具は「家内安全のための結界装置」や「魔女避けの人形」など可愛らしいものばかりだが、国から依頼される魔法具というのは、いわゆる大砲のことである。
魔力で強化された大砲は通常のミサイルの威力の比ではない。
おなまーえが作ったこのちっぽけな筒で、一体どれだけの人が命を落とすのだろうか。
(私もサリマンと大差ないわね)
闘うのは他人に任せて、自分は安全なところから高みの見物。
今の自分の仕事に疑念を抱いたことは何度もあるが、その度に高等学校入学の際の契約証が頭にちらつく。
「今日中に片付けたい仕事がたくさんあるんだからよろしくね」
「へいへい」
薪を二本くべると、おなまーえは自身の工房に引きこもっていった。
****
「ふぅ」
ひと段落して窓の外を見ると随分と暗くなっていた。
「あー、もうこんな時間か。マルクルに夕飯作らないと。」
放っておけばカビの生えたパンですら食してしまう。
ハウルの弟子とはいえ一緒に住んでいる以上、彼は弟のような存在であった。
キリのいいところまでやりきれたので今日はここまでにしようとおなまーえは工房を後にした。
マルクルと昨日作ったチキンライスの残りと、新たに作ったスープとサラダを平らげ、おなまーえは風呂に入った。
どうやらその間にハウルも帰宅したのだろう。
上の階から勢いよく蛇口を開けた水音がした。
はじめの頃はあの優等生で人気の高いハウルと二人暮らしすることに緊張していたが、何度も体を重ねているうちにそんな緊張は不要だと感じた。
やがてマルクルも弟子として居候してくるといよいよ長年連れ添った夫婦じみてきて、このまま結婚しなくてもいいかななんて惰性も生まれてきた。
とはいえおなまーえとハウルの間に恋愛感情なんてものは存在しない。
体を重ねるのはあくまで魔力供給のため。
おなまーえが毎晩彼のベットで寝ているのも、いつハウルが魔力を求めてくるかわからないからだ。
(今日は何色にしよっかな……)
またタオルを巻きつけたままの格好で今晩の下着の色を検討する。
(昨日青だったから、今日は黄色にしてみよ)
どうせ体を見られるなら可愛いように見られたい。
彼はそんなこといちいち気にはしていないだろうが、おなまーえは一応毎晩準備はしていた。