8. 雨の中、寒さに震えている私を抱きしめて
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Come and hold me close, I'm shivering cold in the heart of rain.
雨の中、寒さに震えている私を抱きしめて
レイムとおなまーえは歌劇場の入り口で左右対称に立つ。
揃いの金の瞳がジッと馬車から降りる一行を見つめていた。
先日ブレイクに頼まれたバルマ公とオズ一行の面会が叶ったのだ。
「お待ちしておりました、オズ=ベザリウス様」
「これより我らの主、ルーファス=バルマ公の元へご案内致します」
オズ、アリス、ギル、ブレイクを連れておなまーえとレイムはオペラハウスの奥に進んでいく。
ルーファス=バルマの評判はだいたい噂に聞いているようだ。
彼らの目的は「サブリエの悲劇」についての情報を得ること。
果たしてルーファスはその情報を開示してくれるのだろうか。
「失礼致します、ルーファス様」
ルーファス=バルマのいる部屋に到着し一行を中に入れようとした。
「オズ=ベザリウスご一行をお連れしまし」
「あらあらあら〜、いいお茶日和ねぇ、皆さん♡」
「「レインズワース女公爵!?」」
(あぁ…これは…)
チェインの能力ゆえ、私はすぐにわかってしまった。
そこにいたのは紛れもなくレインズワースの長、シェリル=レインズワースの姿。
彼女は優雅な仕草でこちらに手を振る。
慌てるレイムとギルに対して、おなまーえは随分と落ち着いていた。
「はぁい?」
「な、なぜここにいらっしゃるのですか!!」
「だって私もルー君に招待されたんだもの♡」
オズとアリスは疑問符を浮かべていた。
2人はまだ彼女に会ったことがないのだろう。
「ちゃんとお会いするのはこれが初めてね、オズ=ベザリウス君」
「あ……はい、お会いできて光栄です、シェリル=レインズワース様」
「ふふふ、雰囲気がオスカーさんにそっくりねえ」
ここからは客人とルーファスの駆け引きの時間。
おなまーえとレイムは互いに目で合図して部屋の外に出た。
部屋を出る際にテラスでずっと舞台を見下ろしていたブレイクと目があった。
パタンと扉を閉めると兄が話しかけてきた。
「あのシェリル様は…」
「幻影ですよ。ブレイク様はお気づきになられていたようだけれど。」
「やはりか」
「どうする?」
「どうするもなにも、私たちじゃどうしようもないだろう」
眉間のシワを触りながらレイムは答える。
「…ルーファス様のことだからきっと無事じゃすまないよ?」
「……あぁ、考えておく」
彼は頭を悩ませながらおなまーえとは反対の方向に向かった。
「兄様苦労してるなぁ」
彼女は同情の視線を向けて、一階に向かった。
オズ一行を届けた後はオペラでも観劇しているよう指示されていた。
その真意は「邪魔だから他所に行っておれ」ということなのだろう。
幻影で作られたオペラはルーファスのセンスに満ち溢れ、たいそう美しかった。
舞台もそろそろ終盤という頃、一行がいるであろうテラスからルーファスの作った偽のバルマ公が飛び出てきた。
それは床に転がると幼子のように駄々をこねた。
「あああああ、またもや想定外じゃ〜。認めたくない〜認めたくない〜。情報を更新して対応しなければばばばばぎぎぎ」
「ルーファス様、いかがされましたか?」
思惑がうまくいかなかったのだろうか。
おなまーえが偽バルマに近寄ろうとすると、突如後ろから何者かにステッキで押さえつけられた。
「っ!?」
「アレに近づかない方がいい」
「ブレイクさま…?」
胸元を斜めに縦断するように無機質な棒で押さえ込まれる。
彼はドタバタと暴れ回るルーファスを見て不敵に笑った。
「いい気味ですネェ」
背中に当たる彼の胸板が熱い。
その熱はおなまーえの頬にも伝わり、彼女は顔を赤らめた。
「さて、バルマ公。そろそろ舞台も終幕のようなのでお聞きしますが、貴方の目的、それはオズ君ではなく私ですね?」
おなまーえを押さえたまま確信したように問いかけるブレイクに、偽バルマは押し黙った。
「………」
「今まで私の面会の申し出に応じたことのない貴方が、今回は突然私も共に招待してきた。おなまーえさんを介入したとはいえあまりにも不自然だ。」
偽バルマは立ち上がると帽子をかぶりなおす。
「それに貴方は言いましたね。『情報が欲しければ対価を寄こせ」と。私の持つ情報で貴方の興味を引くものといえば1つ。」
ブレイクはゆっくりとおなまーえにかけていたステッキを外した。
「――私の過去を調べな?バルマ公爵」
偽バルマはニヤァと笑った。
「ああ、ようやくたどり着いたぞ。ケビン=レグナードよ…!」
――ドクン
(ケビン…レグナード…?)
『ね…い………、ケ…』
「!?」
おなまーえの頭に見たことのない景色がフラッシュバックした。
映像は鮮明ではなく、金髪の少女が暗い部屋にいることくらいしかわからない。
ブレイクがおなまーえの肩を掴み無理やり下がらせた。
彼女はそこで我に帰る。
「ちょ…」
――ドシュッ
次の瞬間、彼はステッキを素早く振り偽バルマを真っ二つに割いた。
「いい加減姿を見せてもらいましょうか。ルーファス=バルマ!!」
ステッキをもう一振りして空間を切り裂くと、歌劇場にいた人々が全て消え去っていった。
降りて来たオズたちは空気中に散らばっていくそれを呆気にとられた目で見つめる。
「やれやれ、我が心を込めて作った幻影が台無しじゃよ」
そういったのは我らの主人、ルーファス=バルマ。
椅子に腰掛け艶かしく顔を傾けていた。
「まこと嫌らしい力じゃのう、帽子屋よ」