8. 雨の中、寒さに震えている私を抱きしめて
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ゴホッゴフッ」
ブレイクが大きく咳き込んだ。
手で抑えてはいるが血を吐いているのがわかる。
「ブレイク様!!」
「無様じゃのう。無闇に力を使うからそういうことになるのじゃ。バカめ。」
未だ目の前の人物が本物か見極めきれていないオズをみて、ブレイクは飴を投げつけた。
幻影であればすり抜けるはずのそれをルーファスは難なく受け止めた。
即ちこのバルマ公は実在する人物である。
「先程汝が言った通り、我の望みは汝の持つ情報じゃ」
ヒールを鳴らし、ルーファスは鉄の扇を取り出した。
「まずは見せてもらおうかの。汝がケビン=レグナードであるという証をな!」
ルーファスは扇でブレイクを殴りつけるが、彼はステッキでそれを受け止めた。
ビリビリとした衝撃が間近にいたおなまーえにも伝わる。
「おやめください、ルーファス様!」
「兄様バカ!!」
そんな中、戦闘能力も武器も持たないレイムが飛び出し、ブレイクを庇うように立つ。
振りかざされたルーファスの鉄扇は止まれず、レイムの頭部に直撃した。
「レイム…!」
「兄様!」
「馬鹿め、役立たずは下がっていろ」
「しかし彼は今体が…!」
頭から血を流しながら、レイムはそれでも抗議した。
おなまーえが彼の手を引き、2人から下がらせる。
「契約の影響でガタがきていると本気で信じておるのか?違うよなぁ?汝の場合はそれが二度目だからじゃろう!?」
鉄扇がブレイクの胸に振り落とされた。
それは彼自身ではなく、彼の服を切り裂く。
「っ…!?」
露わになったソレに一同は言葉が出ない。
(何あれ……なんで、ブレイク様"も"あの文様を持っているの……!?)
現れたのは禍々しい文様。
時計のような12の指針。
違法契約者の刻印が、ブレイクの左胸にくっきりと彫られていた。
――ズキンッ
「うっ…」
おなまーえは頭を抑える。
『ねぇいか…で、ケ…』
まただ。
先程から見えるこの景色は一体何なのだろうか。
金髪の少女は何かに縋りながら必死に手を伸ばす。
「ほう、二まわり目は個々によって刻印が異なるのか」
ルーファスの楽しげな声で意識を戻す。
「いやはや。無様で歪で、罪人に似合いの烙印じゃのう」
「は、そんなこと、言われなくても…」
「あっ…」
倒れこむブレイクをおなまーえが受け止めた。
とはいいつつも彼との身長差は15センチ近くあるためおなまーえも尻餅をつく。
「レイム、おなまーえ。汝らはその刻印のことを知っておったのか?」
「…いいえ」
「…存じておりませんでした」
レイムは大きく目を見開き俯く。
おなまーえは座り込みながらも真剣な表情で答えた。
「だがこの名は、ケビン=レグナードの名は知っておるじゃろう」
文献で少しだけ読んだことがある。
その時はなんとも感じなかったのに今はその名を聞くだけで頭痛がする。
「今から50年ほど前、1人の違法契約者が夜な夜な街を徘徊し自らの欲のために出会うものを次々とチェインの供物に捧げていたそうじゃ。闇夜に浮かぶ紅い瞳が人ならざる者のようだと恐れられ、こう呼ばれておったそうじゃ、紅眼の亡霊と。」
ルーファスが事件のあらましを説明する。
オズたちは知らなかったようで訝しげに顔をしかめていた。
「我の祖父はそいつを捕まえるためにあらゆる手を尽くしたと聞いておるが、結果それが報われることはなかった。」
すうっと息を吸う。
「116人。それだけの人間を贄にしたにもかかわらず奴はアヴィスへと堕とされたのじゃ。」
「……」
「……」
「……」
「なんだ。その話は。ピエロのことなのか?」
「ブレイクが…違法契約者?」
にわかには信じられない。
これは50年前の事件だ。
その上ケビン=レグナードはすでにアヴィスに堕ちたはず。
アヴィスに堕ちて戻ってこれた者など聞いたことがない。
「それで?貴方の望みはブレイクを犯罪者として捕まえることですか?バルマ公爵。」
オズがルーファスを睨みつけた。
「それはそれで面白そうじゃがのう。我が求めるのは情報。そやつがアヴィスに落とされてからふたたびこちらに戻ってくるまでの空白の時間、我はこう思っておるのじゃ。引き摺り込まれた深淵で、其奴ら見えたのではないかと。パンドラが求めし存在、アヴィスの意思に!」