7. 風が強くて貴方の声が聞こえない
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Winds are high up on the hill, I cannot hear you.
風が強くて貴方の声が聞こえない
"こんたくと"なるものをルーファスからもらったのは彼に拾われて間もなくの頃だった。
赤い目は禍罪の子と呼ばれ珍しいため、奇異の目で見られると彼は危惧してくれたらしい。
あくまで昔の話だが、確かに年配の人からそう言った偏見の声が上がっているのは聞いたことがある。
まぁ実のところルーファス真意はおなまーえの認識とは異なるのだが、彼女は寝るとき以外は必ずその"こんたくと"をつけていた。
「…ぃ…おい、聞いておるか?おなまーえ?」
「ハッ…すみません、ルーファス様…」
主人の前だと言うのに、ボーッとしてしまっていた。
おなまーえはすぐさま頭を下げて謝る。
パンドラから一度バルマ邸に戻り、近況報告を行っていたのである。
ルーファス=バルマはふぅとため息をつき、もう一度説明をしてくれた。
「全く、弛んでおるな。今回の仕事は汝の喜びそうなものだというのに。」
喜びそうな仕事…?
彼女は顔を上げた。
「ザークシーズ=ブレイクについて、調査し…」
「喜んでお引き受けさせていただきます!」
「最後まで聞けい」
「し、失礼しました」
おなまーえは再び頭を下げる。
「それからもう一つ、調べたいことがある。50年前の事件じゃが、汝の記憶の手がかりになるやもしれん。心してかかれ。」
「!」
彼女はルーファスに拾われルネット家に引き取られる以前の記憶がない。
(私のことが、これでわかる…)
彼女は金色の目を閉じて主人に感謝の意を伝えた。
「承知いたしました」
****
昼間はルーファスの言っていた50年前のとある事件について調べた。
この頃といえば貴族間抗争が激化し、多くの家系が滅んだ時期。
四大公爵家もほとほと手を焼いていたらしい。
特にめぼしい情報はなかったが言われた通りの調査は済ませた。
そしてその足で彼女はレインズワースのもとを訪れたのだった。
「おなまーえじゃないか」
夕方過ぎにレインズワース邸に到着すると先客が門の前に立っていた。
「オスカー様ご機嫌よう。なぜこちらに?」
「なぁに、甥っ子が世話になっててな」
太陽のような笑顔でオスカーは笑った。
「おなまーえこそ、どうしてここに?」
「ブレイク様に会いに」
「はっはっはっ、お前も懲りないなぁ!」
貴族らしからぬ振る舞いをするオスカーは使用人の間でも評判が良い。
豪快におなまーえの肩を叩くと「せっかくだし一杯飲んでけ」と彼は言った。
おなまーえは彼にエスコートされて中に入る。
「お、みんな揃ってるな?」
「オスカー叔父さんに、おなまーえさん!」
オズ、シャロン、ブレイク、ギルバート、そして見知らぬ黒髪の少女が部屋にいた。
「オヤオヤ、誰かと思えば女生徒の制服を盗んだ容疑で捕まっていた変質者さんじゃありませんか☆」
「それを言うか、ザークシーズ」
「へっ?オスカー様、そんなご趣味が…」
ササササーとおなまーえはオスカーから離れる。
「いやいや、俺は無実だって。ちゃんと証明されたし、おなまーえもそんなに警戒すんな。」
「なんだ、それならよかった…」
「でもまぁ、レディに蔑んだ目で見られるのもなかなか悪くなかった!」
頬を染めて決めポーズしながら言う彼に、おなまーえはもう一度蔑みの視線をぶつけた。
「うわぁ…」
「はっはっはっ、このドMゥ〜」
オスカーのおかげで自然な流れでブレイクに接触することができた。
「おい、オズ」
「ん?どうした、アリス?」
「こいつはなんだ?」
黒髪の少女がおなまーえを指差して問いかけた。
心なしか頬が膨れている。
「ああ、この人はおなまーえさんって人でブレイクの婚約者」
「適当なこと言わないでくれますかネェ」
すると頬の膨れていたアリスはみるみる笑顔になった。
黒い笑いを浮かべてブレイクを見る。
「ほう!ピエロ、お前に恋仲とな!よほど稀有な女とみえる!」
「あの、話聞いてマス?」
「まぁまぁまぁ!なんと素敵な方なのでしょう!アリス様?でしたっけ。そうですよ、私とブレイク様は恋仲ですの!」
「んっとに、揃いも揃って都合の良い耳してますネェ」
人から恋仲と認められたのは初めてのことだ。
おなまーえの中でアリスはすごく良い人という位置付けになった。
「はっはっ、若いとは素晴らしい!」
一連の流れを見ていたオスカーが豪快に笑った。
そのタイミングでメイドがジュースとお菓子を持って入ってくる。
「おや、ジュースのお土産ですか?」
「おうよ!今回は結局エイダの想い人を知るには至らなかったが…」
(エイダ……エイダ=ベザリウスのことか)
彼女のことなら少し知っている。
想い人は確か…いや、彼らに言うのはよそう。
何せその想い人は四方八方から恨みを買っている人物だ。
快く思わない者もいるだろう。
「まぁみんな無事だったんだ。とりあえずは祝ってパーっとやろうや!」
そう言ってオスカーはグラスを配り始めた。