7. 風が強くて貴方の声が聞こえない
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「ってどう見てもジュースじゃないよこの液体!!」
完全に潰れたギルバート、四つん這いになってなんとか意識を保っているシャロン、口元を押さえているブレイク。
3人共にソファにダウンしていた。
おなまーえは静かに湯水の如くゴクゴクと飲んでいる。
「何言ってる、アルコール入りのただのジュースだ」
「世間一般ではそれをお酒と言うんだよ、叔父さん」
「まぁいいだろう?お前ももう25歳だし」
「あー、それもそうだねー」
「では、今この瞬間の幸せに乾杯」
仲睦まじく乾杯をする2人はまるでほんとうの父子のようであった。
「あーあー、ギルったら情けない顔してるなぁ」
「相変わらず酒には弱いみたいだな」
「ああ、ギルバート様、そんな格好じゃ風邪引いちゃいますよ…」
おなまーえはタオルを彼にそっとかけた。
すると隣のアリスがむくっと起き上がる。
「アリス…?」
「……あつい」
「アリスーー!!?何やってんのおおお!」
「何って、暑いから服を…」
「脱いじゃいけませんっ!」
上着を脱ぎ、ワイシャツのボタンを外そうとするアリスをオズが必死に引き止める。
「おなまーえちゃんも脱いじゃうかー?」
「やだー、オスカー様ヘンターイ」
おなまーえとオスカーはお酒を飲む手を止めずにキャバクラのようなやり取りをしている。
オズは頼みの綱のシャロンに助けを乞うた。
「シャロンちゃんも何か言ってやって!」
「……あら、私に頼みごとをしたければ跪いて乞いなさい、このブタども!」
綺麗に言い切った彼女は女王様の風格そのもの。
シャロンも決して酒に強くはなかったのだ。
オスカーがまたグラスをみんなに配った。
「よーし、今夜は飲むぞー!」
「おー!」
****
オスカーは顔に落書きをされ、アリスはすでに寝落ちてしまった。
おなまーえも流石に飲みすぎたためオズやブレイクとともにベランダに出て夜風に当たる。
「みんな潰れちゃったねぇ〜」
「そうですネェ〜」
「そうですネェ〜」
「真似しないでくだサイ。まぁ私もそろそろおネムな感じですヨォ〜。」
「あはは、そっかー」
余韻に浸りつつ、おなまーえはウトウトとしていた。
「と言いつつ全く酔ってないでしょ、ブレイク」
ぶほっと飲んでいたジュースを吹き出すブレイク。
なぜバレたと言わんばかりの表情だ。
「君は…本当にかわいくないガキだネェ」
「お褒めに預かり光栄でーす。でもなんでわざわざ酔ったふりするわけ?」
「そりゃあ、そうでもしないとあそこの空気壊しちゃうでしょう」
「へー意外だなぁ。ブレイクにも読める空気ってこの世に存在するんだねぇ」
「喧嘩売ってんですか?」
ブレイクの持っているコップに青筋よろしくヒビが入った。
おなまーえは器用なもので、立ったままポテッと塀に突っ伏した。
「俺にはお酒強いってかっこいいと思うけどなぁ」
「そんないいもんじゃないですヨ?」
ヒビの入ったコップを置き、突っ伏したまま動かないおなまーえの髪を一房掬う。
「どんなに酔いたくともかないはしない。もしかしたらそれは、まだ死ねないと常に気を張っているせいなのかもしれませんがネェ。」
真剣な面持ちで呟いた彼に、オズは申し訳なさそうな顔をした。
「ごめん」
「何がです?」
「いや、よくわかんないけど」
「はは、どうしたんです?しおらしいオズくんなんて気持ち悪いだけですよ」
「確かにその通りかもー」
2人がしんみりと会話をしていた。
そこに割って入ったのは気持ち良さそうな顔で寝ているおなまーえではなかった。
「何を言っている!俺のマスターを侮辱するな!プレイク!!」
「「出たよ、酔っぱらい」」
「お、オレは、酔ってねぇっ」
背中に「I am HEUARE」と書かれた紙を貼り付けられたワカメこと、ギルバート=ナイトレイがそこにいた。
彼はオズに自分を大切にするように訴えかける。
以前までのオズならば笑ってごまかしていたところを、今夜の彼はギルの話を素直に聞き入れた。
「今度聞かせてくれ。おまえのこと、ナイトレイのこと、この10年間のことを!」
そう綺麗に笑ったオズにギルは心が追いつかなかった。
オズに無茶をして欲しくなかったし、自身の体を大切にして欲しかった。
誰よりもそれを望んだのは10年間ずっと想っていたギル自身であったが、しかしいざオズが心を改め前に進むと置いていかれたという感情が強く出てしまった。
「これはこれは…何があったか知らないケレド、随分可愛げが出てきたじゃないですか」
オズが室内に戻り、座り込んでいたギルにブレイクが話しかけた。
思考が追いつかずボーッとしていたギルはようやく意識を取り戻す。
「よかったですネェ。君の気苦労も少しは減るんじゃないですカ?」
「あ、あぁ、そう…だな。これで…オレ…も…」
ブレイクは俯いたギルに意味深げに視線を投げた。
そして塀の上に座ると、幸せそうな顔をしているおなまーえの頭をそっと撫でた。