6. 薔薇は死に秘密は苦痛の中に隠されました
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Roses die, the secret is inside the pain.
薔薇は死に秘密は苦痛の中に隠されました
『たかがケーキを口に放り込まれただけだというのに、なんだこの体たらくは。全くけしからん。』
『主もそう思うか?』
『いや、しかし奴は不意打ちを狙ってきたのですぞ!』
『ぐぬぬぬ、なんと卑怯な』
『ええい、であえであえぃ!』
『お待ちください、彼は悪くありません!』
脳内のプチおなまーえ達がプチ時代劇、もとい会議をしている。
(あああー!ケーキ食べさせてもらった!)
お部屋の掃除の対価にしては豪華過ぎるご褒美。
おなまーえは頬のにやけを堪えることができなかった。
「ご機嫌よう、おなまーえさん」
「はっ…えぇ、ご機嫌よう!」
すれ違ったのは何度か話をしたことのあるメイド。
いけない、これから仕事なのだ。
おなまーえはパチンと頬を叩きいつも通りの業務に戻る。
まずルーファスからの連絡がないかの確認をしよう。
そう思い、歩き出した瞬間。
――ツカツカツカツカ
殺気立ってパンドラを歩き回るレイムが目の前を横切った。
「あ、兄様!」
――ピタッ
あんなに早歩きで歩いていたというのに、前につんのめることもなく彼はピタリと足を止める。
そして首だけをこちらに向けた。
彼は笑顔だった。
「兄様!昨日はお…」
「おなまーえ、お前…」
くるっと振り向いてレイムがこちらに歩いてきた。
笑っているのにとても怖いオーラが醸し出されている。
思わずあとずさりした。
「私1人にオズ様を任せてお前はどこに行っていたぁーー!!」
「ヒッ、お、落ち着いて兄様!」
ズンズン歩いてきたかと思うと肩をがっしりと掴み、レイムは彼女に迫った。
「一体全体何が起こっているんだ!説明しろ!!」
「え、わ、私何も!ブレイク様が…」
「じゃあそのザークシーズはどこだ!?」
「ヒィィ!あ、案内するから!ご無体はやめて!!」
****
――たたたたたた
「兄様待って!!」
おそらく今ブレイクがいるであろう部屋を教えたところ、彼は風の速さで走り出した。
普段デスクワークばかりしているレイムと鍛錬も行なっているおなまーえだと、男女の差を考慮してもおなまーえの方が筋力では優っているはずだった。
だが、その彼女が追いつかないほどのスピードでレイムはパンドラの廊下を走っていく。
「どの部屋だ!おなまーえ!」
「み、3つ目の…」
「ここか!…ザークシーズ=ブレーイク!!」
レイムはドアをぶち破る勢いで体当たりをした。
「オヤ、レイムさん♡」
「ようやく見つけたぞ、貴様〜!」
ニコニコと笑うブレイクに詰め寄り、先程おなまーえにしたことと同じことをする。
「オズ様のことを私に任せたまま何処かに消えやがって!!あの後何があった!シャロン様は」
「あーうるさいうるさい」
おなまーえが部屋に入ってまず目に止めたのは、詰め寄る兄でも、愛しいブレイクでもない。
「おおおおオズ様!!」
床に伸びているのは、頭から血を流すオズ=ベザリウス。
レイムが勢いよく開けた扉に頭をぶつけたのだろう。
「だ、大丈夫ですか!しっかりしてくださいまし!!あ、兄様!!」
兄はブレイクを問いただすことに夢中で気づいていない。
「兄様…!」
「後でちゃんと説明するつもりでしたヨォ〜」
「嘘つけ!!お前は昔からそう言いつつうやむやにするだろうが!」
「あ!に!さ!ま!!」
「…なんだおなまーえ。私は今忙し…」
彼がこちらを見た。
その眼に映るのは半泣きのおなまーえと、頭から血を流して倒れているオズ。
ようやく彼は状況を察し、顔から血の気が失せたのである。
****
「本当にっ、申し訳ありませんでした、オズ様…!」
綺麗な土下座。
被害者のオズはそのレイムの前にしゃがみこみ、彼をツンツンと指で刺していた。
「いや、もういいって」
「23回目。謝罪記録更新だなぁ。」
「前回の記録は?」
「19回。ルーファス様の書斎の本を崩した時。」
完璧主義故、失敗した時のレイムの謝罪はしつこい。
あの時のルーファス様もうんざりしていたなと思い出す。
「大丈夫だよ兄様、オズ様って殺しても死ななさそうな顔してるし」
「そうですヨー、あと5〜6回ぶつけてあげれば可愛げも出るってもんデス」
「おなまーえさんもブレイクもうるさいよー」
おなまーえの冗談にオズはちゃんと返してくれた。
「あれ、おなまーえさんさっき『兄様』って言ってた?」
「はいそうです〜」
「はっ、私は…」
自己紹介もせずに延々と謝罪をしていたことに気づいたレイムはガバッと顔を上げた。
その彼の手をブレイクが引っ張って立ち上がらせる。
「この人はレイムさん。パンドラ構成員であり、私の大っ切な友達デス♡」
腕を絡めて嬉しそうに紹介するブレイク。
「友達…?」
「えぇ、かれこれ10年以上の付き合いになりますネェ〜」
「兄様、そこ代わって」
「は、放せ!ザークシーズ!」
真顔で迫ってくるおなまーえを見て、レイムは必死に腕を振りほどいた。
「そっか、ブレイク友達いるんだぁ…!」
「何その笑顔、超ムカツク」
オズもオズとて、なかなかぞんざいにブレイクのことを扱った。
彼はおなまーえとレイムを交互に見る。
「へー、兄妹か。髪と目の色は同じだけど顔は結構違うねー」
「そりゃそうですよ」
「へ?」
ブレイクの言葉にオズは首を傾げた。
「私はルネット家の養子なので、兄様とは血は繋がってないですよ」
呆気からんと言えば、まずいことを聞いたとオズが顔色を変える。
「あ、大丈夫ですよー。ルネット家は良いお家…とは言えませんけど」
「言えないんかい」
「でも、レイム兄様が仲良くしてくれましたし、ルーファス様は良い御方です。」
ニッコリと笑えば彼もほっと安心した表情を浮かべた。
レイムは照れ臭そうにそっぽを向く。
話がひと段落し、ブレイクが声をかけた。
「まぁいいでしょう。丁度オズ君にも説明するところでしたし、お嬢様の様子を見に行きがてらお話ししましょう。あの夜のことを。」