5. その枯れない花の中に私たちは居たのです
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We were there, in everlasting bloom.
その枯れない花の中に私たちは居たのです
翌朝。
窓から差し込むまばゆい日差しに起こされた。
上質な布団についついもう一眠りしよう、と考えたところで慌てて起き上がる。
どうやら昨晩はシャロンの看病をしたまま眠りこけてしまっていたようだ。
彼女の顔色を伺うと、昨日とは打って変わって健康的で呼吸も安定している。
これならば問題ないだろうとおなまーえは水を張った桶を持ってシャロンの部屋を出ていった。
「あ、オハヨウゴザイマス」
部屋を出てすぐ、丁度そこにいたのはおなまーえの想い人。
「ひゃっ」
驚いて体がビクッと反応してしまった。
桶の水がちゃぷんと跳ねる。
「オヤ、珍しい反応ですね」
「……寝起きなのであまり見ないでください」
おなまーえは顔をうつむかせた。
「ハッハッ、いつもそうやっていじらしくしてればまだ可愛げがあるものを」
「ブレイク様への愛情表現は私の生きがいなのでやめませんよ」
彼女はぷくっと頬を膨らませた。
意外にもブレイクは穏やかな笑みを浮かべる。
「部屋、片付けてくれてありがとうございマス。それからお嬢様の世話も。」
「いえ、それくらいならお安い御用ですよ」
「お礼に、よろしければお茶でもしませんか」
「!?!?」
再び桶の水が大きく跳ねる。
なんだ、自分は今夢を見ているのか?
頬をつねるにしても、今は両手が塞がっている。
いやしかし夢だとしてもなんだこの美味しい状況は。
よし、ここはクールに優雅に返事をしよう。
淑女たるもの、常に余裕を持って優雅たれ。
彼女はスゥッと息を吸う。
「よよよよよ喜んで…!!」
****
「まぁ、わかってたさ…わかっていましたとも…」
先にテラスに出て紅茶の準備をしていてくださいと言われ、おなまーえは浮き足立ってモーニング茶会の準備をしていた。
戻ってきたブレイクの後ろにいたのはオズ=ベザリウス。
ブレイクがおなまーえを誘って2人きりで紅茶を飲むなんてことがあった日には槍でも降るのではないのだろうか。
わかっていたとはいえ少しガッカリする。
彼はオズを席に座らせると神妙な面持ちで口を開いた。
「まずオズくんには最初に謝らねばいけないネェ」
「え…?」
「ホラ、今回はとんでもないことに巻き込んでしまったから」
パンドラ内で彼の存在をバラしてしまったことだろうか?
おなまーえは首をかしげる。
「ゴメンナサイ」
ブレイクはぺこりんと頭を下げた。
オズは驚いて一瞬息がつまる。
「……どうしたの?ブレイクが謝るなんて変だよ?あ、更年期障害??」
「ご安心を!私が手取り足取り介護して差し上げます!」
「ほんっと失礼なガキ共だよねぇ、君らは♡」
おなまーえは“ガキ”という年齢ではないのだが、飄々としている彼からしてみればそんなものなのだろう。
「だってブレイクがオレ達を巻き込むのなんていつものことじゃん」
「まぁそうなんですけどネー」
「否定しないところも流石ブレイク様です」
「あは♡」
彼はテロンと伸ばした袖ごと器用に紅茶ポットを持ち上げる。
「ただなんというか、今回はそれに見合った成果を最後に失ったのが自分としては許せなくて」
そしてオズのティーカップに紅茶を注いだ。
「成果…?」
「えぇ」
「……ブレイクはアリスが攫われるとき…」
「っと、その前に。おなまーえさん厨房からケーキ持ってきてください。」
あからさまにオズの話を遮り、ブレイクはおなまーえに一時退散するよう指示した。
「え?オズ様いるけど、これってデートじゃ…」
「私そんなこと言ってませんヨ」
「え、でも…」
「ホラ、早くしてください」
「そ、そんなぁ…」
しょぼんとして台車をひいていくおなまーえの背中を2人は見送る。
オズはニヤリとブレイクを見た。
「……ブレイクはあの子のこと巻き込みたくないんだね」
おそらく彼女にはアリスやチェシャ猫のことなど一切伝えてないのだろう。
関わらせないことで彼女を守ろうとしているのだ。
いつもおなまーえが一方的に愛を伝えているが、ブレイクもそれなりに彼女のことを大切にしているようにオズには見えた。
「何言ってんですか、あーゆーのにウロチョロされると私が動きにくいだけのことですよ」
口ではそう言っているが、本気で嫌がっているわけではないのだろう。
口角が少し上がっている。
「………まぁそういうことにしておくよ。で、アリスが攫われたときのことだけど」