11. 明日にこそ叶う約束のために歌いましょう
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Singing for the promises tommorow may bring.
明日にこそ叶う約束のために歌いましょう
翌朝、おなまーえは兄とともに公務に当たっていた。
今は書類を運んでいる最中である。
おなまーえの手には完成された書類が、顔の高さほどまで積み上げられている。
この兄妹2人でやった仕事だ。
とは言いつつもそのうち7割が兄の書いたものである。
その兄の手にはおなまーえの持つ書類の倍の量の未完成の仕事と資料が積み上げられていた。
「〜〜♪」
「ご機嫌だな、おなまーえ」
「ええ!ちょっと嬉しいことがあったので!」
鼻歌交じりで歌を唄い、足取りも軽やかなおなまーえを見てレイムは何かを感じ取った。
「……もしやブレイクと何かあったのか?」
「えぇ〜?まっさか〜」
実にわかりやすい。
確実に何かあったのだろう。
「あいつを追いかけるのを止めはしないが…程々にしないとお前の評判に関わるからな」
「もぅ、妹のプライベートにまで口出さないでくださいな、兄様!兄様こそそろそろ結婚しないと婚期逃しますよ?」
「っ、お前はそういうことを軽々しくなぁ!」
兄の想い人ならなんとなく想像がつく。
だがその女性は一介の使用人では、とてもじゃないが手を出せない相手。
レイムは彼女に想いを伝える気などないのだろう。
そしていずれは親の決めた相手と結婚をする。
「………」
兄は真面目な仕事人間だ。
公私をキッチリと分け、規律正しくあろうと心がけている。
「……兄様」
でも決して冷徹なわけではない。
心優しく、周囲からも慕われている存在だ。
「兄様は、もう少しオシャレしてみたらいかがですか?」
「私がか?」
「ええ。髪もその長さは乾かしやすいのでしょうがちょっと味気ないです。それからメガネも"こんたくと"に変えてみたら良いんですよ。」
「"こんたくと"?なんだそれは」
「かの国の品物で、私もルーファス様から頂いているんだけど、こう、薄い膜を眼球に貼って」
おなまーえが横を向いて"こんたくと"の説明をしようとした時、兄は正面の何かにぶつかってしまった。
――ガツン
「のわっ!?」
「あ」
前が見えない兄をおなまーえが誘導していたのだがついついよそ見をしてしまっていた。
「すみません、オズ様」
「あ、おなまーえさんとレイムさんか」
「オズ様!?こ、これは失礼致しました!」
グラグラする資料を必死に抑えながら兄は謝罪する。
「いや…すごい量の書類だね」
「なんです?また仕事を押し付けられたんですカァ?」
「シャロン様、ブレイク様、それからエミリー様、ご機嫌よう」
おなまーえは丁寧にブレイクの肩に乗っている人形にまで挨拶をした。
以前ブレイクはこの人形を幸運の人形と呼んでいた。
であるならば、ぜひともおなまーえとブレイクの幸せな未来を祈っておかなければ。
「君がもう少し働いてくれれば私も楽になるのだがね、ザークシーズ=ブレイク」
「またそんなカタイ言い方してっ!シャロン様の前だからってそんなにかしこまる必要はないんですヨォ?」
「パンドラ内だからだっ!!君はもう少し自分の立場というものを理解して振る舞うべきだと思うぞ!?」
レイムはノンブレスかつ早口で日頃の鬱憤をブレイクに話す。
そんな性格だからブレイクに友達がいないだとか、そのせいで彼に関する苦情がレイムの元へ来るだとか、おなまーえもうつつを抜かしてどうのこうのだとか。
まるで小うるさい姑のようだ。
「もぅ、うるさい男は嫌いですヨ!」
ブレイクもいい加減聞き飽きたのだろう。
書類を持って動けないレイムの脇腹に指を突き刺した。
「えいっ☆」
「ひょえぇああァ!!?」
「兄様それさっき整理したばかりの書類ぃいーー!!」
ドサドサッと散らばる未完成の書類たち。
堅物のレイムも脇腹攻撃には耐えられなかった。
「あぁーーっ!」
おなまーえとレイムは半分絶望した顔で散らばった書類を見つめる。
「ほーらお嬢様、今のうちに逃げますヨー」
「ザークシーズ!貴様!!」
ブレイクはヒョイっとシャロンを担ぎ上げると駆け足でその場を去っていった。
残されたオズは呆然としている。
「こら待てー!」
「はぁ……兄様、無駄だよ」
ブレイクの逃げ足は速く、もう彼の姿は見えない。
床に散らばった紙や本をみて、おなまーえはため息をついた。
「こっちのできてる方わたし出してくるから、兄様はこれ拾っておいて。すぐ戻りますから。」
「……あぁ、そうだな」