11. 明日にこそ叶う約束のために歌いましょう
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「あー…オズ様、兄に何をしたんですか…」
完成した書類を提出してレイムのいたところに戻れば、干からびた兄とツヤツヤした表情のオズがいた。
明らかに尋問した痕跡がある。
「んー、ちょっと聞きたいことがあったんだけどー…レイムさんって口カタイね」
「まぁじゃないとルーファス様の第一秘書なんてやってませんって」
おなまーえはくすくすと笑った。
しかし次の瞬間。
「っ!?ごほっ、ごほっ!」
「え、おなまーえさん!?」
口から血を吐き出した彼女は、廊下に膝をついた。
一部始終を見てしまったオズは慌てておなまーえに駆け寄る。
幸いレイムは気絶しているようでこちらを見ていない。
「だ、大丈夫!?」
「ごほっ…大丈夫です。ご心配をおかけしました。」
「大丈夫って顔してないけど」
唇まで真っ青だ。
「失礼」と謝ってオズはおなまーえの目の下をまくった。
「うわ、貧血も起こしてるでしょ、おなまーえさん」
「…はい…」
必死に周囲を確認するおなまーえを見てオズは何かを悟った。
彼は立ち上がって彼女の腕を掴む。
「なにを…!」
「見られたくないんでしょ、他の人に。ほらこっち。」
「ご迷惑を、かけるわけには…」
それでもおなまーえは頑なにオズに頼ろうとはしなかった。
彼は痺れを切らして首元に唇を寄せるとフゥと息を吐く。
「ひゃあっ!?」
おなまーえはへなへなとオズに体を預ける。
「そうそう、ほら、ここの書庫室ならしばらく休めるよ」
「面目、ありません…」
レイムを干した場所からすぐそばの、小さな部屋におなまーえは押し込まれた。
荒い息をする彼女を放っておいていいのかとオズは迷ったが、やりたいことがあるのも事実。
「いいです。行ってください、オズ様。そのかわりこのことは…」
「誰にも言わないよ。その代わりサブリエのこと少しだけ教えて?おなまーえさん」
「……はい」
****
ブレイクはレイムの様子を見るために先ほどの廊下に戻ってきた。
戻った彼の見た光景は、まるで干し芋のように干からびたレイム=ルネット。
「……」
「これはこれは…見事に干し上がってますネェ〜」
かろうじてレイムの指が動いたので意識はあるのだろう。
ブレイクはツンツンと横たわるレイムをつつく。
「オズくんにやられたんですカァ〜?」
「よ…よくわからない…。オズ様に…何かとても恐ろしいことを囁かれたような気がするのだが……」
「サブリエのこと、オズくんに話しちゃいマシタ?」
「いや…ない!それだけは絶対に!」
「相変わらずまでおカタイですネェ〜」
「ただおなまーえは…あれ?おなまーえはどこだ…?」
レイムは辺りを見渡す。
おなまーえの所持品や持っていた書類は辺りに散らばっているのに、彼女の姿が見当たらなかった。
ブレイクはすぐそばの書庫の扉が中途半端に開いていることに気づいた。
「………」
訝しげに歩み寄った彼はキィっと扉を開ける。
暗い室内に廊下から入りこむ光が照らし出したのは、女性特有のなだらかな曲線。
――ガリッ
ブレイクは口に含んでいた飴を噛み砕いた。
「あの…クソガキ…」
くったりと倒れているのはおなまーえであった。
彼女の頬は紅潮していて、息遣いが少々荒い。
艶やかすぎる光景に、思わず顔をしかめた。
ブレイクは上着を脱いでばさっと彼女にかけた。
「さてと、私はどう動きましょうか」
****
おなまーえはぼんやりと目を覚ました。
「気がついたか」
「兄様…。私倒れたんですか?」
「あぁ、過労だそうだ。無理はするな。」
過労。
おなまーえの場合それは1日や2日で蓄積されたものではない。
(70年分のしわ寄せがきてるのね…)
彼女はため息をついた。
「何かあったのか?」
「いいえ、なんでもないです兄様。そんなことよりブレイク様エネルギーが不足してます。ブレイク様はどこですか?」
「ふざけるな…と言いたいところだが、私も今から会いに行くところだ。」
「え、私も行きます!」
「構わないが、あまり騒がしくするなよ。あいつも今は病人だからな。」
end