28. 貴方がやってくるまで
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Until you come.
貴方がやってくるまで
梟の力を借り、一行はラトウィッジからサブリエに降り立った。
「な、なに、これ…」
目の前に広がるのはアヴィスから溢れ出てくるチェイン。
これらは皆、意思を持って町の人に襲いかかっていた。
「お嬢様、念のため状況を説明してくれませんか?」
ブレイクはおなまーえを下ろし、その後シャロンを抱えて下ろした。
「……サブリエの空に沢山の道が今、出現しています。チェインが、溢れ出てきています!」
オズは町の人に襲いかかっていたチェインの一匹を鎌で斬り伏せた。
初めて黒うさぎの力を見て、おなまーえは目を奪われる。
「お行きなさい、オズ君」
自分たちの身の回りのものだけでも駆逐すると、シェリルは優しい、それでいて芯のある声でオズに先を急ぐように促した。
「残念だけど今のわたしでは貴方達をサブリエの奥まで運んであげるのは無理そうなの。だからね、私はこれよりパンドラサブリエ支部と合流して指揮をとります!ここは私に任せて、貴方は今貴方にしかできないことをしっかりおやりなさい!」
「は、はい!」
2人のやり取りを見届け、おなまーえは体をを兄の方に向けた。
なんとなく、もう2度とレイムに会えないような気がしたのだ。
「ザークシーズ、おなまーえ……私も…」
「君が来てもただの足手まといデース!」
「"無能なレイムさん"ですからね、兄様も諦めてください」
「まだ何も言ってないだろうがぁ!」
「図星な癖にー」
「…ッ!」
彼も薄々感じているのだろう。
3人でこうして会えるのが最後だということを。
おなまーえはレイムに近づいて、彼の耳元に向かって背伸びをした。
「兄様、好きな人にはアタックしないと伝わりませんよ」
「なっ…!?」
彼は赤面して後ずさる。
「オヤオヤ〜、何を言ったんです?おなまーえ〜?」
「ナイショですよー。兄妹水入らずというやつです。」
おなまーえは笑顔で振り返り、ブレイクの後ろに回った。
次は彼の番。
「レイムさん。シェリル様のこと、お任せしましたよ」
「ああ」
「うん……あとはヨロシク」
自分がいなくなった後でも主君のことを守ってくれと。
言葉にせずともレイムにはすべてが伝わった。
「…ザクス!おなまーえ!」
小さくなった梟を抱える傷だらけのレイムは、なんだか少し頼りない。
「し、しっかりやれよ!」
でも私たちは知っている。
レイムが誰よりも優秀で強い心を持っているということを。
「「ハイ!」」
****
サブリエの町は石畳が敷かれ、かつての面影を再現していた。
一行が進めば進むほど、チェインに襲われる頻度も増えてくる。
オズに襲いかかろうとしたチェインに、ブレイクがすかさず斬りかかった。
おなまーえの目にも止まらぬ速さであったが、あろうことか彼は剣を落としてしまった。
「ブレイク、ありがとう」
「……」
彼は落とした剣を信じたくないという目で見ている。
体の内部だけでなく、筋力などにも衰えが見られていた。
「ブレイク?」
「いえ……それよりも」
剣を拾って振り向いた彼は真剣な目で忠告をした。
「気をつけてください。ここから先は何が起こっても不思議ではありませんよ。」
サブリエの奥は最早アヴィスの空気感と遜色なかった。
まだ奥行きという概念があるだけマシではあるが。
「寒いですわね」
「霧が濃くなってきましたからね」
「みんなはぐれるなよ」
「ひとまず中心に向かって進んでみるか。あの時計塔を目印に。」
ギルが指指した方向を見上げると、たしかにサブリエのシンボルであろう時計塔がある。
「うん、そうだね」
一同はコクリと頷いた。
その次の瞬間、重々しい音が辺りに響き渡った。
――ゴーン
――ゴーン
時計塔の鐘の音だ。
特になにか起きたわけではないが、一行の間に緊迫した空気が漂う。
おなまーえもブレイクもギルも気を張り巡らせて周囲を警戒した。
――ゴーン
ゴーン――