27. 私は過去に想いを馳せて微唾んでいる
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「あははは。ごめんねブレイク。騒がしくしちゃって。」
ギルとアリスを追い出してオズが最後に部屋を出ようとした時。
「オズ君!」
ブレイクがオズを呼び止めた。
部屋に入ってきた3人を見て、おなまーえもブレイクも思うところは同じだったのだろう。
レイムから聞いた彼らがここに至るまでの道のりはあまりに過酷で、潰されそうになるのを必死に耐えているものとそう思っていたのに。
(変わった)
それぞれを取り巻く空気が、強くなった。
(時間にすればたった1日のことなのに)
彼らは悲観せず、前を向いていた。
「何?ブレイク」
呼び止めただけで何も言わないブレイクにオズは優しく笑った。
その笑顔にすら、以前の儚い少年の面影はない。
「いえ?若いってのはいいなぁとそう思っただけデス」
「なにそれ」
「齢70歳の私もそう思いますよ、オズ様」
おなまーえは立ち上がりブレイクの隣に腰をかけた。
彼が立ち上がるので手を貸す。
「残念だよ。今の君の顔をこの目で視れないのが。」
ブレイクは歩み寄り、オズの顔を覗き込んだ。
「ねぇオズ君。以前と同じ質問をもう一度君にしてもいいかな。」
開いた窓からふわりと心地よい風が吹き込んだ。
「君は一体どこにいるんだい?」
「……オレは」
恥ずかしげに、それでいて自信を持って彼は答えた。
おなまーえと同じように自分の正体に悩んでいただろうに、この短期間で彼は成長した。
「ふっ、生意気言うようになりましたネェ」
「ええ、本当に」
そう微笑む彼女の顔も随分と晴れやかなものであった。
ブレイクはオズの頭をガシッと掴んで撫でくりまわす。
「うりうりうり」
「うわっ」
「あ、羨ましい!私もやってくださいブレイク!」
オズはセットした頭を崩されて頬を膨らませた。
こちらにあっかんべーと舌を出して部屋を出て行く。
「うるさいガキンチョ供が一緒だと、大人はヘコんでる暇もないな」
「そうだな」
「子供は傷の治りが早いですからね」
決してその傷跡は消えることはないが、彼らはそれをも抱えてまた前に進むのだろう。
ブレイクはぽふんと横になった。
おなまーえは優しく彼の白髪を撫でる。
「不思議なものだね、レイム、おなまーえ」
闇しか映さないこの瞳に――
「届くんだよ」
光が――
「視えなくても」
眩しい光が――
end