26. 貴方は私の喜びであり、歌であり、希望でした
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You are all my pleasure, my hope and my song.
貴方は私の喜びであり、歌であり、希望でした
「おなまーえさん、それを貸してください」
「あ、はい」
つい二人の世界に入ってしまったが、今は絶体絶命の大ピンチ。
2人とシャロンはバスカヴィルに囲まれていた。
ブレイクはおなまーえから剣を借りるとヒュッと軽く手慣らしする。
「……いい剣ですね」
「かの国のカシューナッツさんが作ってくださったそうです」
「それはそれは、香ばしそうだ」
ダッと彼は走り出した。
バスカヴィルもブレイクに応戦する。
その間におなまーえはシャロンとシェリル、そして生き残ったパンドラの構成員を一箇所にまとめて警護した。
ブレイクの太刀筋は凄まじいものだった。
おなまーえと勝負したときは相当手を抜いたことがよくわかる。
イカレ帽子屋の力はチェインだけでなく、バスカヴィルにとっても脅威足りうるようで、彼らはブレイクに手も足も出ない。
次々と倒れる赤いフードに、おなまーえは顔をしかめた。
ブレイクはおなまーえ同様身体にガタがきているはず。
短時間にこんなに力を使っていては体への影響は計り知れない。
案の定、ブレイクは突如動きを止めた。
「っ、フレイム!!」
ブレイクと対峙していたダグの間に赤の騎士が割ってはいる。
おなまーえ自身もよろけたブレイクを背後から抱きとめた。
「……おなまーえ」
「ブレイク様、もう十分です。私もまだ戦えますから、休んでください。貴方の体も限界でしょう?」
「………」
ブレイクが振り返り頬に手を当てた。
短くなった金色の髪が彼の手の甲に触れる。
「殴られたのは、どこですか?」
「え?…あ、頭…ですけど…」
見えないブレイクはペタペタとおなまーえの頭を触る。
そしてまだ乾ききっていない傷口に触れた瞬間、険しい顔つきをする。
「……まだだ。こんなもので済ますつもりはない!」
ブレイクの殺気にバスカヴィルはたじろいだ。
「みんな!帽子屋から離れて!」
それを鼓舞したのはロッティだった。
「無理に攻める必要はないわ。一定の距離を保ち続けて。そうすればあっちが勝手に自滅するわ。」
「……」
図星。
痛いところを指摘され、おなまーえとブレイクのは眉を顰めた。
「…ザッ君」
そんな彼に声をかけたのは、予想もしていなかった人物だった。
「シェリル様…」
「いいわね?少しの間しか保たないわ。それでも、貴方には十分でしょう?」
柔らかく微笑んだシェリル。
おなまーえは驚きの表情を浮かべた。
レインズワースが梟を所持していたのはもちろん知っている。
だがその能力はルーファスもおなまーえには伝えないほど秘密にされていた。
ブレイクはおなまーえの頬から手を離した。
「はい、勿論です!」
――バサッ
次の瞬間バスカヴィルの動きが止まった。
ブレイクは走り出し、次々と赤いフードに剣を差し込んで行く。
赤の騎士の能力のため、梟の作り出す無音の闇はおなまーえに通じなかったが、それ故に一部始終をきっちりと目視することができた。
数秒も経たないうちに闇が取り払われる。
シェリルはふらっと体を傾かせた。
おなまーえは慌てて彼女に駆け寄る。
「ごめんなさい、ザッ君。やっぱりこれ以上は無理みたい。」
「問題ありません、シェリル様」
「どうかご無理はなさらずに…」
シェリルの体のなんと細いことか。
(ルーファス様に報告しなきゃ……)
おなまーえは密かに役得だと微笑んだ。
「おなまーえ、バルマ公からはほかに何か聞いていないんですか?」
「それが、その、ルーファス様の賭けはここまでしか聞いていなくて…」
そもそも当初の予定ではブレイクやシャロンの処刑にルーファスも立ち会うつもりだったのだ。
それが昨日グレンに連れられサブリエに立ってしまった。
賭けは成功したが、すでにイレギュラーな事態なのだ。