26. 貴方は私の喜びであり、歌であり、希望でした
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「あーあーあーあー!なっさけないなぁ、おまえらー!」
これからどうするか話し合おうとしていた矢先、ある少女の声がホールに響き渡った。
「エコー、さん?」
「いや、違う。あればツヴァイです」
おなまーえはシャロンとシェリルを自分の背に回すようにした。
目を瞑ったままブレイクが剣を構える。
「あ、こっち来ないでよぉ、帽子屋。でないとぉ、この女殺しちゃうよぉ?」
そう言うと彼女は引きずってきたそれをぐっと前に持ち上げた。
「っ!?」
「エイダ!?」
おなまーえは気づいていなかったが、同じホールにいた男が声を上げた。
(待って、あのお方って…!?)
滅多に人前に出ない貴族。
たとえ四大公爵家の集会があろうとも絶対に顔を出さなかったオズの父親、ザイ=ベザリウスがそこにいた。
「なんだよあんた。やっぱり娘のことは大事なんだぁ?」
彼はツヴァイのドルダムに縛られているようで動けない。
「
エイダを人質に取られている以上、ザイも無駄な抵抗はできなかった。
ツヴァイは無遠慮にグリフォンの背に乗る。
勿論ザイとエイダも共にだ。
「ツヴァイ!?」
ロッティが3人を見上げた。
「ぼくはサブリエに行くよぉ。早くヴィンセントに会いたいんだ。」
ダグがロッティを抱えてグリフォンに乗り込む姿が見えた。
「待て…!」
ブレイクが引き止めようとしたが、次の瞬間、あたりが大きく揺れ始めた。
「地震…!?」
立っていられずにおなまーえは膝をつく。
「うっ…!?ゲホッ、ゲホッ」
「おなまーえさん!?」
シャロンが這いつくばりながら駆け寄る。
(あぁ、私なんて心配しなくていいのに…)
自分を見失い、シャロンに嫉妬していたことが恥ずかしくて仕方ない。
クラクラする頭で、おなまーえは声を振り絞った。
「どうか、私を…サブリエに…」
――パタリ
おなまーえはそこで意識を失った。
****
「生きてて恥ずかしくないのか?」
そう黒い影に問いかけられた。
「いいえ。私には償わなければならないものがあります。グレン=バスカヴィルを止めるまで、それまでは死ねません。」
おなまーえはまっすぐに答えた。
「おまえは所詮過去の人間。なぜ今の世界を助けようとする?」
「ええ、おなまーえ=シンクレアは過去の人間です。けれど、今の私はおなまーえ=ルネットです。この時代の流れに沿って生きている。」
「それも多くの犠牲の上になっていると理解した上でか?」
「はい。私はもう過去からも今からも目を背けたくはありません。」
これは夢の中。
されどおなまーえの心象の中だと彼女は気づいていた。
「最期の時まで、私は戦いたいのです」
パァッと視界が明るくなる。
黒い影が光に飲まれていった。
覚醒の時だ。
「ごめんなさい。ありがとう、お父様。」
おなまーえは小さく、影のいた場所に声をかけた。