16. 貴方の最後の言葉を想って紅い涙を流す
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Ruby tears have come to me, for your last words.
貴方の最後の言葉を想って紅い涙を流す
「……ふぅ」
「そろそろ踊り疲れましたか?」
「えぇ、すみません」
おなまーえは慣れないヒールに足が痛くなってしまった。
ダンスも相手に気を使うのであまり好きではない。
「では少し夜風に当たりましょう。飲み物を持っていくので先にテラスに出ていてください。」
「はい、わざわざありがとうございます」
男と一旦別れて空いているテラスを探す。
しかし今宵の社交界が始まってから数刻は経っている。
どのテラスも先約がいた。
(あら?あの2人は…っ――)
シャロンがブレイクの手を取ってダンスの指導をしていた。
2人とも何もやましいことはしていなかったのに、何故か見ていけないものを見てしまった気持ちに陥る。
(あぁ、もう。余計な感情はいらないのに。)
ブレイク――ケビンと過ごせる時はそう長くはない。
だからこそ、今まで通り彼と接して最期の時まで楽しもうと思っていたのに。
(あの場所は、私のものだったのに…なんて)
なんて醜い感情。
こんな感情が自分の中にあるだなんて知りたくなかった。
おなまーえは胸元の青い羽根を優しく握る。
「おなまーえさん、お待たせしました」
「ひゃぁっ!」
声をかけられて振り向くと、先程まで一緒にダンスをしていた男性がおなまーえの肩を叩いていた。
彼の片手はグラスを二つ器用に支えている。
「何かございましたか?」
「いえ、なんでもないです。ごめんなさい、テラス満席みたいで。」
「そうですか、それならお庭に出ましょうか」
まだ出会って数十分だが優しく笑ったこの男は(ギルバートやヴィンセントほどではないが)それなりに女性人気が高いと言うことが痛いほどよくわかった。
女性の視線は正直だ。
彼にエスコートされ庭に出てグラスを受け取った。
2人で小さく乾杯をあげる。
「そういえば」
グラスに二口目をつけようとしたところで男が声をかけてきた。
「その胸元のネックレス、とても素敵ですね」
「あぁ、これですか?ありがとうございます。羽根は人から貰ったものなのですが、ネックレス自体は私の手作りなんです。」
そっと羽根に触れるとくすぐったい感覚が指先に走る。
「貰い物…?もしかして…聖ブリジット・デイですか?」
「えぇ、そうです」
「男性から?」
「?…はい」
その回答を聞いた瞬間、男は眉間に手を当てて少し空を仰いだ。
「……はぁ〜〜」
そして大きく溜息をつく。
「……貴女も人が悪い」
「え?」
顔をあげた男は苦笑いをしていた。
「その、何か失礼をしてしまいましたか…?」
「いやー…ねぇ…」
「え?え?」
「……もしかしておなまーえさんはその羽根の意味、ご存知ないのですか?」
「えっと……"落ち着いてください"…でしたっけ」
おなまーえは首を傾げる。
ブレイクは確かそう言っていた。
あれ、そういえばレイムも羽根の意味が云々と言っていたような……
「はは、違いますよ。聖ブリジット・デイは天空の天使様が人間に恋をしたお話です。それにあやかって、好きな人に青い羽根をプレゼントする風習があるんです。」
「…は?」
いけない。
思わず素が出てしまった。
「ご、ごめんなさい。びっくりしちゃって…」
「いえ…。それで、そのー…渡された方なんですけれど、青い羽根を受け取るということは、その告白を承諾したという意味になるんです。」
「うそ…」
ブレイクはこのことを知っていたのだろうか?
いや、知らないだろう。
知っていたらおなまーえに羽根なんて絶対渡さないはず。
「はは、それがおなまーえさんの素ですか?」
「ご、ごめんなさい…!その、そんなつもりは…」
「いいんです。私も父におなまーえさんに取り入るようにと言われて……あまり乗り気ではなかったので。」
男はぐいっとグラスを飲み干す。
おそらくおなまーえに近づけ、あわよくば恋仲になれと言われていたのだろう。
しかしそのおなまーえにはすでに想いを交わした(?)男性がいた。
ブレイクの渡した羽根は虫除けの効果を存分に発揮したのだ。