15. 貴方の傍では全てが素晴らしかった
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Everything was sweet by your side, my love.
貴方の傍では全てが素晴らしかった
オズとユラが出会ってから1週間後。
ユラ邸にて。
会場内は人という人で溢れかえっていた。
ヴィンセントとギルの2人がいることで女性陣もそわそわと落ち着かない様子だ。
しかしそんなただのイケメンには興味がない。
夜を閉じ込めたような紺色のドレスを着たおなまーえは会場をぐるりと見渡して目的の人物をロックオンした。
すれ違う人々なぞなんのその。一直線に彼に向かう。
「ブレイク様!!」
「げっ」
「好き!!(挨拶)」
次の瞬間、彼の持っていたステッキで床に頭を埋められる。
ひどい、いつもより気合を入れて髪を結ったのに。
「こらおなまーえ、はしたないぞ」
「…その声は兄様?」
上質なカーペットから顔を上げるとレイムとオズがこちらを覗き込んでいた。
「今日我々はルーファス様の名代として…」
「あ、オズ様、この度は社交界デビューおめでとうございますぅ」
兄の言葉を遮って今日の主役に挨拶をする。
床に伸びながら腕を伸ばして白い羽を差し出した。
これはオズが一人前と認められるために必要な儀式のようなもの。
彼はこれから会場中を回ってこの羽根を集めなければ成人として認めてもらえないのだ。
オズの髪がひょこっと跳ねた。
「……その髪型イカしてますね」
どうやらワックスを使って一生懸命髪の跳ねを抑えたようだが、彼の癖っ毛には勝てず先程からヒョコヒョコと毛が飛び出てきている。
「ははは、ミス・おなまーえもいつにも増してお美しい」
「えへへ、気合入れてきました!」
「ブレイクに見せたくて?」
「さすが、バレバレですね!」
一瞬オズが困ったような顔をした。
おなまーえも思わず「あ」と声を出す。
(そうだ、彼は目が見えないんだった)
ブレイクがいつも自然体に振る舞うため、ついつい忘れがちなのだが、彼の目にもう光は届かない。
気合を入れた髪型も、キラキラとしたドレスも、彼からもらった青い羽根を通したネックレスも、ブレイクの目には映らない。
「……っと、よいしょっと」
ブレイクの目が見えていないことはオズもレイムも知っている。
妙な空気を作ってしまったのでフォローしなければ。
立ち上がって彼の前に立つ。
「どうです、ブレイク様!頂いた青い羽根、宝石も通してネックレスにしてみたんです。似合ってますか?」
「は?」
これに声をあげたのはレイム。
なんだバカ兄貴、ブレイク様とのいちゃいちゃの邪魔をするな。
「ちょっと待て、おなまーえ。それコイツから貰ったのか?」
「うん、聖ブリジット・デイに」
「お前はその意味知って――いだいいだい!やめろザークシーズ!」
レイムの言葉を遮るように、ブレイクは彼の足の甲にステッキをグリグリと押し込んだ。
あれは痛い。
「どうされました?ブレイク様」
「いえ、なんでもないですよ。とても素敵ですね。これに加えてもう少し大人しくなれば嫁の貰い手も出てくるというものを。」
「あ、今のセクハラですね!ブレイク様からなら大歓迎です!もっと言ってください!」
「これだからなぁ…」
オズとアリスは苦笑いをした。
「じゃ、オレ達もう行くね」
2人は主役ということもあって忙しいらしい。
すぐに他のゲストに挨拶をするためにどこかへ行ってしまった。
「おなまーえ、忘れてはいないだろうが我々は…」
「ルーファス様の名代でしょう。大丈夫。その手の作法は弁えてる。」
シンクレア家で貴族としての振る舞いは叩き込まれている。
先の行動は少しふざけたが社交界のマナーは理解しているつもりだ。
「ルーファス様の代わりに皆様にご挨拶して来ますから。兄様はどうぞご自分の仕事をなさってください。」
「……わかった。頼むぞ。」
レイムはこの後パンドラ構成員と共にユラ邸の捜索にあたる。
ここにはグレン=バスカヴィルの封印の石があるのだという。
「兄様、どうかお気をつけて…」
おなまーえほど体力はないが、レイムは諜報に関しては彼女よりは優れているはず。
心配する必要などないはずなのに、なぜか胸が騒ついた。
彼女はそれだけ言うとレイムとブレイクに背を向け華やかな世界に飛び込んでいった。