13. 暗闇がやってくる、夏はもう行ってしまう
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Darkness falls, and summer will be gone.
暗闇がやってくる、夏はもう行ってしまう
暗闇の中、先に進む人を追いかける。
私が「待って」と呼びかければその人は足を止めてこちらを振り向いてくれた。
しょうがないと赤いマントを翻し、こちらに手を出してくれるあなたは、誰?
****
三日間はあっという間に過ぎ去り、決して万全ではないものの、ブレイクもすぐに復帰した。
というのも、パンドラの内部は再び現れた首狩りの対応でてんてこ舞いで、猫の手も借りたいほどだったのである。
おなまーえもその現場検証のために足を運んだが酷い有様だった。
オズたちが屋敷を離れて約5分でここまでできるのかと思うほどであった。
「んー……ちょっと眠いかなぁ……」
おなまーえも徹夜で仕事をしなければならず、目の下のクマがくっきりと現れていた。
睡眠時間も、食事の時間も、プライベートの時間も、満足にとれていない。
おなまーえだけではなく、パンドラ内部全体がどんよりとしていたが、彼女は体調の悪さも相まって人よりも特にダメージを受けていた。
吐血も頻繁に起こるようになり、この前など任務中に倒れて迷惑をかけてしまった。
(ケビンみたいに目が見えなくなったら困るなぁ)
ふと窓の外を眺める。
「あり?」
暗いパンドラの中で一際賑わっている場所を見つけた。
中庭にはテーブルがたくさん設置され、お菓子やら紅茶やらが置かれていた。
なんとなく気になっておなまーえはフラフラと外に出る。
「あら、おなまーえさんもいらしたのですか」
「シャロン様…」
シャロンに呼び止められた。
「ご機嫌よう。これは一体…」
「オスカー様が気分転換にとお茶会を催してくださったのです。おなまーえさんも良ければご一緒にいかがですか?」
柔らかい笑顔で微笑むシャロン。
あぁ、ブレイクはもう彼女の笑顔を見ることができないのか。
そう思うとズンと暗い気持ちと疲労感が増してきた。
「……折角のお誘いですが、私はまだ仕事が残っていますので……」
「お嬢様、紅茶をお待ちいたしました。オヤ、おなまーえさんじゃないですカ。」
まるで目が見えているかのようにブレイクはこちらを見て反応してみせた。
「ご機嫌よう、ブレイク様。……あぁ…ブレイク様は3人になってもお綺麗ですね…」
おなまーえの目にはブレイクが3人に映って見える。
目が限界なのか、脳が限界なのか。
「何言ってるのかわかりませんが、おなまーえさんも召し上がりますカ?」
「いえ、折角のお誘いですが遠慮しますよ」
普段であればおなまーえは大喜びでもらうが、いかんせん本当に仕事が溜まっている。
体調も決して良くはないし、ここはお断りしようと足を一歩後ろに引いた。
「あれ、おなまーえさんじゃん」
遠くから声をかけてきたのはオズ。
仔犬のようにこちらに走ってくる。
「うわ、どうしたの?すごい顔だよ」
「あー、ちょっと寝不足で……ご心配おかけしてすみません」
そう言う彼女はテーブルの上のケーキ皿のタワーに向かって深々とお辞儀をしていた。
これは相当疲れている。
オズとブレイクは顔を見合わせた。
「……うわっ」
顔を上げた瞬間おなまーえに目隠しがされた。細くて繊細な手。
指の隙間から辛うじて光は見えるがほとんど前が見えない。
「ちょっ」
「おなまーえさん、無理し過ぎです。お嬢様も心配してますから休んでくだサイ。」
声から目隠しをしたのはブレイクだとすぐにわかった。
「…でも」
「それかお茶会参加していってよ。すっごくやつれてるみたいだし、お腹に何か入れた方がいいよ。」
「オズ様…」
手にもっていた資料がスッと取られた。
同時にブレイクの目隠しも外され、眩しさに少しだけ目を細める。
「今だけはこんなこと忘れておなまーえさんも参加して行ってよ!」
オズの言う通り、確かに昨晩から何も食べていない。
どうやらレイムも参加してるみたいだし、ここで一つ休憩しても誰も怒ったりはしないだろう。
「……もう、オズ様はわがままですねぇ」
ニッコリと笑っておなまーえは側にあったケーキ皿からマカロンを手に取った。
「いいですよ、お茶会参加させて頂きますとも!」