13. 暗闇がやってくる、夏はもう行ってしまう
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
お茶会も終盤に差し掛かり、随分と多くの人が集まった。
そんな中、端の木の下でこくりこくりと船を漕いでいるのはおなまーえ=ルネットだ。
お腹が満たされついつい居眠りをしてしまったのだ。
「あ、おなまーえさん寝てるー」
それを目敏く見つけたのはオズだった。
ブレイクとシャロンは木の下に目をやる。
無防備にもおなまーえは半口を開けて熟睡していた。
オズは近寄っておなまーえをまじまじと見つめる。
「こうしてみると本当美人だよね、おなまーえさん。」
「オズ君、それ以上近づいたら次の稽古の時コテンパにしてやりますヨ?」
ブレイクはいつもより低い声で警告を出した。
「えー、ブレイク手加減してても強いのにー」
「そういえば、ゴタゴタのせいですっかり忘れてましたがサブリエに行く前に彼女にちょっかい出してたみたいじゃないですか。」
「ああ、あれのこと?いやー、おなまーえさん可愛くてついついヤっちゃった☆」
「……やっぱりサブリエでくたばってればよかったのに、このガキ……」
「オズ様もブレイクも、一体何の話ですの…?」
「お嬢様は知らなくて結構ですよ。」
2人のやりとりを不思議そうに見ていたシャロンが質問を投げかけたがはぐらかされた。
彼女は本のキスシーンを見るだけで顔を赤くしていたほどウブなのである。
これ以上会話を聞かせないためにも、そそくさとシャロンをレイムのいる方に引き渡すとブレイクは再度オズと向かい合った。
「で、ナニしたんですか?」
「ナニって、何も?やましいことはしてないよー」
余裕のないブレイクに対してオズは飄々としている。
それが彼をさらに苛立たせていた。
「いいですか、彼女はあくまで使用人です。そんな彼女と四大公爵家の人間が変な噂を立てられては」
「ブレイクってさぁ、やっぱりおなまーえさんのこと好きでしょ?」
「……は?」
彼は鳩が豆鉄砲を食ったような顔をした。
何を言っているのだ、この少年は。
好き?自分がこの迷惑小娘を?
「やっぱり自分でも気づいてないみたいだね。あのさブレイク、何でオレにこれ以上近づくなって言ったの?」
「…何言ってるんですか?私はあくまで世間体として良くないと申しているだけですよ?」
オズは静かに首を振った。
「アリスのことを伝えていなかったのも、バスカヴィルやアヴィス関係の話をするときに敢えて席を外させたのも全部彼女を巻き込みたくなかったから、でしょ?」
「………」
「オレには、巻き込みたくないくらい大切に思ってるってふうに見えたよ。」
違う、そんなことはないと。
言うことはきっと簡単なのになぜか言葉が出てこなかった。
アリスのことを伝えなかったのは黒うさぎの説明が面倒だったから。
話し合いに参加させなかったのも対して戦力にならない彼女にうろちょろしてほしくなかったから。
………本当に?
「ブレイク…?」
「……いやー、すみません、ビックリしすぎて声が出せませんでしたよ。あまりにも的はずれすぎて拍子抜けしてしまいました。」
オズは目を細めてじっとブレイクを見た。
その目が「違うだろう?」と語りかけてきていてひどく居心地が悪かった。
「おーい!オズー!」
遠くでオスカーがオズを呼ぶ声が聞こえた。
「そろそろお開きにするぞー!」
「…はーい!」
ブレイクは内心オスカーに感謝した。
これ以上この聡い少年と対峙していたくはなかった。
「私がおなまーえさんを起こしておきますから、オズ君はオスカー様の元へ行ってください。」
「うん…」
オズは去り際にブレイクの耳元でボソッとつぶやいた。
「おなまーえさん、最近本当に体調良くないみたいだから、気をつけて見ていてあげてね。」
「え…?」
再度問いかけようとブレイクが振り向いた時には、既にオズはオスカーの元へと走っていた。