13. 暗闇がやってくる、夏はもう行ってしまう
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体調を崩しているそぶりなどしていただろうか。
彼は首を傾げながらも、しゃがみこみ彼女の隣に膝をついた。
「おなまーえさんにかつての主人の姿を重ねて見ているだなんて、オズ君には言えませんネェ。」
ブレイクもわかっている。
姿を重ねるという行為はおなまーえ=ルネットに対しても、おなまーえ=シンクレアに対しても失礼なことだと。
だが理解していても割り切ることは難しい。
「ほらおなまーえさん、起きてください。そろそろお開きだそうです。」
おなまーえの肩を揺さぶった。
彼女はゆっくりとまぶたを上げるがまだ半分ほどしか開いていない。
「……あと…5分…」
「!」
似たような会話を以前したことがある。こうやってよくあのお方のことも起こしていたっけ、と彼は頬を緩めた。
「長すぎデス。いつまでもこんなところにいたら風邪ひきますよ。」
おなまーえは腕を引っぱられ、夢うつつのまま立ち上がらさせられた。
眠い目をこすりながら彼女は小さな声で抗議した。
「…ケビ…じゃ…きゃ…ヤ……」
「どうされました?」
ブレイクにはその声を聞き取ることができなかった。
「ブレイク!」
正面にシャロンが手招きしているのが見えた。
どうやら主催者であるオスカーの呼びかけで、全員で写真を撮るという。
「おなまーえさん、いい加減起きてくだサイ」
「……んっ……あ、れ…?ブレイク様…?」
「オスカー様が集合写真を撮ると仰っていますよ。」
「あぁ、そうですか……え、写真!?」
ひどい顔なので嫌だと行ったが、破天荒で底なしに明るいオスカーがそれを許すはずもなくブレイクの手に引かれてカメラの前に連れて行かれる。
「その、今日は特に記念日ってわけでもないし、それを使うにはもったいないよ…」
しかし主催者に一番近しいオズがカメラを使うことに反対した。
そのカメラには何かしらの想いがあるのだろう。
オスカーは困った子だと言わんばかりの顔をしてオズを思い切り抱きしめた。
「問題ない!お前はオレの大切な息子なんだから!」
2人は叔父と甥の関係であって、決して親子ではない。
しかしオスカーは息子と表現した。
2人の絆は本当の親子よりも固いように見えた。
「それに間違っているぞ、オズ!今日は記念日ではないが、それと同時にれっきとした記念日なのだ!」
オスカーはオズを手放しあたりを見る。
「空は晴れ、風は澄み、花は綺麗だ!オレはこの年になっても元気出してまだまだモテるし…オズがいて、ギルがいて、アリス君がいて。みんながここにいて、今時を共有できる奇跡!どうだ?素晴らしき"なんでもない日"だろう?」
彼が紅茶を手に取ったのでおなまーえとシャロンもそれに倣う。
目線より少し上の高さまで上げてオスカーは力強い声を出す。
「ハッピーアンバースデー!」
まばゆい陽射し、涼しい風、笑顔の仲間。
こんな穏やかな時間は長くは続かない。
でもそれでも願わずにはいられない。
この夢のようなひとときが、永遠に続けばいいのにと。
end