12. 過去の薔薇と、色褪せた愛をここで守っているのです
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
I harbour all the old affection, roses of the past.
過去の薔薇と、色褪せた愛をここで守っているのです
扉を開けると、ベットの上で寝ている人物が額に手を当てていた。
「ブレイク様!」
「ザークシーズ、気がついたのか」
「レイムさん、おなまーえさん…」
彼はまだ状況が飲み込めていないようで、視線だけをキョロキョロと動かしている。
「ここはどこです?私はまだサブリエにいるんですカ?」
「は、何を寝ボケて」
「ここは私とブレイク様の愛の巣ですよ!」
おなまーえはブレイクの布団にダイブした。
きっと押し返されるか吹っ飛ばされるかするだろうと受け身の姿勢の準備をしたが、ブレイクは抵抗せず、というよりおなまーえに果敢せずといった様子で気に留めていなかった。
「…ブレイク様…?」
「いいえ!ここはレインズワースの別邸ですわっ」
「あ…」
とある人物が入ってきたことで、ピリッとした空気が部屋一帯に張り巡らされる。
「ようやく目を覚ましましたわねぇぇえ?ブレイクゥウウ!!」
ぱしっぱしっとハリセンを鳴らしているのはブレイクの主、シャロン=レインズワース。
ルーファスから耳にタコができるほど聞いた言葉、レインズワースの女性がハリセンを持つと怖い。
おなまーえはすごすごとベットから退散した。
「おじょ!?」
――バシーン
言い訳の余地など与えず、シャロンのハリセンはブレイクの頭にヒットした。
(何かがおかしい…)
先ほどおなまーえやことを突きかえさなかったことといい、今ハリセン攻撃を素直に受け入れたことといい、いつものブレイクらしからぬ行動に違和感を覚えた。
「全く、レイムさんとコソコソしているかと思えば急にどこかへと消えて、どうして事前に報告するということが貴方にはできないんですか!しかも独断専行の果てにこのザマですわよ!?」
あまりの迫力に、おなまーえとレイムはついつい正座をしてしまう。
怒られている当の本人は床に転がっている。
「一人で突っ走るからいつもそうやってボロボロになるんでしょう!?」
いや、いま彼が床で伸びている原因は確実にハリセンのせいだと思うがおなまーえもレイムも口には出さなかった。
うるっとシャロンの目元が歪んでいく。
「な、何度呼びかけても貴方は目を覚まさなくて、わたし怖くて本当に怖くて!」
「シャロン様…」
ブレイクは言い訳はせず、気まずそうに視線を逸らした。
泣き出すシャロンにおなまーえは胸を貸した。
肩を震わせる彼女は少女漫画のヒロインさながらの魅力がある。
「ほら、ザークシーズ、これだけシャロン様にご心配をおかけしていたんだぞ。一言くらい謝罪したらどうだね」
「そーだよ、女の子泣かすなんてブレイクサイテー」
「いや全くその通り…って、オズ様!!」
レイムと一緒になってブレイクの対応に文句をつけたのはいつのまに入ってきたのかわからないオズ。
アリスも隣にいる。
「おはよーブレイクー。体大丈夫?」
「チッなんだ、生きてたのか」
「ほらギルも早く入ってこいってー」
キィと鳴る扉からそっとこちらの様子を伺うのはギルバート=ナイトレイ。
見るからにじめじめとしたオーラが出ている。
「ブ、ブレイク…その、体はもう…大丈夫なの…か?」
「……じめじめマックスのワカメ頭見たら気分が悪くなりました」
「ザークシーズ!!」
あくまで使用人の分際でナイトレイのご子息を粗末にするブレイクにとうとうレイムが声を上げた。
ブレイクに対する違和感から、おなまーえは自身の憶測を確信へと変えた。
「それはそうと、おなまーえさん、私ってどのくらい寝てました?」
「えーっと、丸3日ですねぇ」
「3日…」
起き上がったブレイクの身の回りの世話をしながらおなまーえは答える。
もう彼女は"わかっている"。
それでもブレイクが周りに悟られないように動くのであれば、おなまーえもわざわざ指摘する必要はない。
「もー、大変だったんだよー。ブレイクが倒れた後、変な地震が起こるし、オレ達も無理矢理帰らせられるし。」
「変な地震?」
「こっちも結構揺れましたよー。パンドラ内もプチパニック状態でした。」
「うん、なんていうか…嫌な感じがするっていうか…」
オズはサブリエであった出来事をつらつらと語り出した。
ブレイクがあっと声を上げてそれを遮る。
「ああ、おなまーえさん、すみませんがケーキを」
「もうメイドに頼んであります」
「じゃあ紅茶」
「それも頼んであります」
遠ざけられているのは以前からヒシヒシと感じていた。
しかしここまで渦中に片足を突っ込んでいて、これ以上無関係は貫けない。
「ブレイク様、そろそろ私も関係ないふりはできません」
"彼の目が見えなくなっているのであれば"尚更だ。
「そもそも、兄様は良くて何故私はダメなのですか?」
「……」
「そうだぞブレイク!いくら恋人のことが心配だからって」
「だーれが恋人ですか」
ブレイクはふぅと一つため息を吐くと「いいでしょう」とおなまーえの在室を許可した。
「じゃあまずオレ達がサブリエに着いた直後から話すね。フィオナの家って言う……」