2月3日
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セイバー戦は見ずに、おなまーえは帰路についていた。
言峰に対して納得いかないことがいくつかある。
「あのエセ神父……何か企んでるとは思ったけど……手を切るのも時間の問題か…」
彼が、何か別の人間に見えた。
性善説/性悪説というものをご存知だろうか。
性善説とは、人間の本質を善ととり、成長するにつれ悪に汚染されていくという考え方。
性悪説とは、生まれながらにして人間の本質は悪であり、その業を背負って生を全うするという考え方。
彼はその性悪説の代表格のようなものだと感じた。
あれは善悪を見分けた上で悪に加担する者。何かが欠落した人間。
他者を愛せない愚か者。
(……かわいそうな人)
おなまーえはそう感じた。
2月3日
ふわっと風が起きる。
「待たせたな、嬢ちゃん」
ランサーが帰ってきた。
「おなまーえって言ってって何度言えばわかるのよ」
「はは、わりぃわりぃ」
「お疲れランサー。2戦も疲れたでしょ。」
「このくらいケルトじゃ日常茶飯事だ。むしろやっと戦争してるって気がしてきたぜ。」
「そっか…」
おなまーえは顔をうつむかせた。
思いつめた表情から、ランサーは彼女の気持ちを汲み取る。
「…あの小僧のことは気にすんな。どんな方法を使ったかは知らねぇが、不思議なことにとりあえず生きてやがる。」
「でも」
「あの指示がお前の本心じゃないことも、オレはわかってる」
「……ありがとう」
ランサーはおなまーえにはもったいないくらいのサーヴァントだ。
主人の指示には必ず従い、文句を言わずに仕事を遂行する。
ランサーがもっと嫌な奴だったら、こんなに罪悪感でいっぱいになることもないだろう。
ランサーはおなまーえの体を慣れた手つきで抱えた。
1度目に抱えられた時はバーサーカーに追われている時だった。
2度目に抱えられた時は意識がなかった。
故に、初めてのことに彼女は戸惑う。
「手は首に回せ」
「こ、こう?」
「クククっ、そりゃくすぐってぇぞ、嬢ちゃん。もっとしっかり掴まれ。」
言われた通り、彼の首に抱きついた。
ランサーの装束はぴっちりとしたスーツだ。
故に体の起伏が直にわかる。
「……ランサーって意外に筋肉あるよね」
「ん?喧嘩売ってんのか?」
「ち、ちがうちがう!」
細い体にしてはがっしりしていると、思ったことを口にしただけだ。
――ふわっ
体が浮いた。
宙に放り出されたわけではなく、ランサーがおなまーえを抱えたまま地面を蹴って飛び上がったのだ。
「ひっ!」
先ほど掴まれと言われた首を強く締め付ける。
冷たい風におなまーえが冷やされないよう、ランサーは気を遣ってくれているようだった。
「嬢ちゃんの扱いもだんだんわかってきたな。あんた、慣れてないことされるとビビって声出せなくなるだろう。」
「しょ、しょうがないで――ひゃああ!!」
「はっはっはっー!」
わざと高いところから落ちておなまーえをからかうランサー。
元気づけようとしてくれているのだろうか。
確かにこんな乱暴な扱いをされればどんな悩みだって吹っ飛ぶ。
だが荒治療にも程があろう。
「ふ、ふざけないでよバカー!」
冬木のあけぼのにおなまーえの悲鳴が響き渡った。