1月31日
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白い日差しがカーテンの隙間から入り込む。
目が覚めたおなまーえはゆっくりとした動きで起き上がり、のろのろと着替えはじめた。
今日は買い物と街案内に行く日。
いくら聖杯から冬木の地形の知識が与えられているとはいえ、実際に街中を見ると印象も変わるだろう。
「ランサーいる?」
「ん?もう着替えは終わったか」
どうやら着替えるのを察して霊体化していてくれたようだ。
さすがケルト神話の主人公と言われるだけはある、気の遣いようだ。
「今日は実際に街を見てもらおうと思って」
「あー…」
ランサーは目をそらす。
実のところ、彼は昨夜のうちに街中をある程度見て回っていたのだが、おなまーえの心遣いを無下にするわけにもいかない。
「いいぜ。行こうか。」
昼間は昼間でまた違った視点で街を見れるだろう。
ランサーは快く了承した。
おなまーえは満足そうに笑う。
「じゃあまずは服買いに行こっか」
「……は?」
1月31日
「やっぱスタイルいいから何着てもカッコいいね」
「おい、こりゃどういうことだ、嬢ちゃん…」
彼女が服屋で購入したのは男物の服。
人気のない路地裏に連れていかれ、実体化までして着替えさせられたのはランサーの方だった。
てっきりどこかの女王と同じで、ファッションだとか美容だとかそういう買い物を想像していたため、予想外の出来事にランサーはついつい素直に従ってしまった。
「あ、フードは被ってね。青くて長い髪なんて珍しいから」
おなまーえが買い与えたのは黒のパーカー、グレーのズボン、黒のスニーカーの三点セット。
青い装束に比べると身軽さはだいぶ落ちるが、それでも動けなくはなさそうだ。
「んで?オレを実体化させてどうすんだ?まさか一緒に回ろうとか言い出すんじゃあるめぇな。」
「一緒に回るよ?」
「おめぇさんな、戦ってのは――」
「マスターの言うことには従うんでしょ」
聖杯戦争とは文字通り戦だ。
己が正義のために闘い、その結果血が流れ、そして死者が出る。
これまでの召喚で一度だってこんな無駄な行為はしたことがない。
合理性を追求するというより、それが当たり前だった。
このマスターは(戦い慣れをしていないというのも一つあるとは思うが)サーヴァントを実体化させて連れて歩くなんて、とても変わり者なマスターである。
ランサーは観念してやれやれと首を振った。
「……はぁ、違いねぇ」
「どうしても嫌なら霊体化してもいいけど」
「いや、肌で感じることもあるだろう。このままいく。」
「そ。じゃあまずはこの辺りから散策するよ。」
「はいよ。どこまででもついていくぜ、嬢ちゃん。」
「おなまーえって言ってってば」
彼女はランサーの手を取り歩き出す。
(……嬢ちゃん、あんたやっぱ魔術師には向いてねぇわ)
合理性より楽を先にとる時点で彼女は魔術師にはなれない。
魔術師とは時に冷酷にならなければならないもの。
この少女にはそれはできないだろう。
口ではああ行っていても、根っこの部分は心優しいマスター。
(――オレにはちと手に余るな)
良いマスターに恵まれるのはサーヴァントにとって幸運だ。
だが慣れない『良いマスター』にランサーは一人むず痒い気持ちを抱いていた。
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「ここはー…商店街か」
「こういうところ好きそうな気がしたから」
「おーおー、賑わってるところは嫌いじゃないぜ」
ランサーは興味深げに店を見物していく。
ここでおなまーえはランサーの人の良さを実感した。
八百屋に入れば店主がおまけをくれるし、肉屋に行けば奥様方がメロメロになる。
その辺を歩いていた野良猫も、ランサーに気づくと進んで近づいてきた。
英雄には英雄たるオーラというものがあるのだろうか。
おなまーえは素直に感心していた。
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