1月30日
夢小説設定
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キャスターのマスターからの手紙には、キャスターを捨てて新しいサーヴァントを召喚するとの旨が書かれていた。
無事新しいサーヴァントを召喚できた折には是非とも協力してほしいとも。
聖杯を手に入れた暁には相応の金を払う、そう書かれていたが、生憎おなまーえは金には困っていない。
彼女が望むのは金で解決できることではない。
「着いたぜ、マスター。だがこりゃオレが手を加えるまでもなく壊滅状態だぞ。」
「待って、今見る」
小さな野球ボールほどの水晶に手をかざす。
浮かび上がった風景は青白い炎に包まれたマンションの一室。
豪華絢爛な装飾は見る影もない。
「キャスターの仕業?」
「ああ。魔術の匂いがプンプンするぜ。地 下からサーヴァントの気配がするな。」
「じゃあそのまま下の階に」
エレベーターに乗り込んだランサーはじっと瞑想した。
「…………」
『…………』
チンッという軽い音とともにドアが開く。
「ん?」
そこはおそらく魔術工房だったのだろう。
だが工房は焼け落ち、魔法陣はめちゃくちゃにされている。
その中央で辛そうに手すりに寄りかかっている女性がいた。
フードを目深に被り、現代の服装とはかけ離れた衣装を纏っている。
言われるまでもなく彼女がキャスターだとすぐにわかった。
「あなたのマスターはどこ?キャスター」
おなまーえはランサーの魔法陣を介してキャスターに問いかける。
「……遠見の魔術ね。また随分とマニアックな魔術師だこと。」
「質問に答えて、キャスター」
一発でおなまーえの魔術が見抜かれてしまった。
もしや彼女は魔法使いに近い地位にいた魔術師なのかもしれない。
焦りを表に出さないようにおなまーえは低い声で再度問いかける。
「あなたのマスターはどこ?」
「私を召喚した男ならたった今殺したわ」
「…マスターを裏切ったの?」
「いいえ、もうマスターですらないわ。私から契約を破棄したから。」
「契約破棄…?そんなことサーヴァントにできるはずない!」
「あなたレベルの魔術師にはできないでしょうけどね、私にはできるのよ!」
キャスターがマントを広げた。
「ランサー迎撃!」
「おう!」
光弾が撃ち込まれるも、ランサーは俊敏な動きでそれをかわしていく。
あっという間に距離を詰めて、彼は強烈な一撃を食らわした。
「ぐっ…あぁ…!」
キャスターは遠距離攻撃が得意だ。
だがここは地下の狭い密室。
当然接近戦に特化したランサーが有利である。
加えて彼女は魔力供給源であるマスターを失っている。
『殺すのか?』
思念でランサーに話しかけられた。
「……いいえ。その必要もないでしょう。ランサーには二つ目の令呪が効いてるはず。あなたの判断で切り上げて。」
『りょーかい』
サーヴァントがマスターを殺すのは見過ごせない。
だがこの女性、どこか根は良さそうな人に感じた。
まるで純真無垢に育って、それを心無い人に悪用されたような、そんな感じがする。
キャスターは狭い地下が不利だと悟って地上に飛び出した。
ランサーもそれを追う。
あの傷なら、放っておいてもキャスターは自然に退去するだろう。
初めてのサーヴァント戦を見届けて、おなまーえはどっと疲れがでた。
「――っ!ゴホッ…ゴホッ…!」
慌てておなまーえは口元を抑える。
不定期に起きる発作だ。
「……っ…ランサーがいなくてよかった」
手のひらにべったりとついた血。
こんなところを彼に見られたら心配をかけさせてしまう。
(でもいつまでも隠してはいられない)
おなまーえはまだ自分の望みを彼に打ち明けてすらいない。
今後の課題は、どうやってこの体の話を切り出そうか。
「なんとしてでも、生き残ってやるんだから…」
水晶を見ると、ボロボロになったキャスターを放置して、ランサーは立ち去ろうとしていた。
《1月30日 終》