2月10日
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「大変ランサー!」
「どうした?」
水晶から街を観察していたおなまーえが大声を上げる。
普段落ち着いた雰囲気の彼女がこうも取り乱すのは珍しい。
「これ…」
彼女が指差した水晶をランサーも覗きこむ。
歩いているのは橙色の髪の少年と、黒髪ツインテールの少女。
衛宮士郎と遠坂凛だ。
その一歩後ろをセイバーが付いている。
この聖杯戦争が始まってから、そうそう珍しくないコンビだ。
「こいつらがどうしたって?」
「あの、声少しだけ拾っちゃったんだけど…」
「おう」
「この2人ね――今日デートなんだって。私も一緒に行きたい!」
「あ?」
2月10日
「嬢ちゃん、それを世間様でなんて言うか知ってっか?」
「知らない」
「ストーカーっつうんだよ。一緒に回りたきゃ素直に奴らに声かけてくればいいだろ。」
「それじゃあ警戒されちゃうじゃない」
ニット帽とマスク。
わざわざ新しいコートにまで着替えて、彼女は2人(セイバー含めると3人)のデートについてきた。
コソコソと後ろから様子を見る彼女は、どこからどう見ても不審者だ。
(このストーカー行為がバレた時の方が警戒されるって気づいてないんかねぇ)
とはいえ、彼女は嬉々として2人を追いかけている。
それを邪魔できるほど、ランサーも無粋ではなかった。
「美味しい。ここのケーキ。」
「おー、そうかいそうかい」
衛宮士郎と遠坂凛を追って入ったのは小さな喫茶店。
おなまーえたちは外のテラス席に座り、看板メニューのケーキを頂いている。
「ランサーもタバコばっかり吸ってないで。はい、あーん。」
生クリームとスポンジと、気持ちばかりのいちごの切れ端をフォークに乗せておなまーえは差し出す。
ランサーはまだ半分ほど残っていたタバコをぐしゃりと潰して、素直に口を開ける。
「ん……あぁ、こりゃ見た目以上に甘ったるいな」
「ランサーあまりスイーツとか興味なさそうだよね」
「甘味なんてのは女の特権だろ」
「最近だとスイーツ男子ってのも評価されてるらしいよ」
「おいおい、男ならそんななよなよしいもんじゃなくて肉を食えよ、肉を」
「ガツガツした人はむさ苦しいからモテないんだって」
「まじかよ。ケルトじゃありえねぇ。」
ランサーは新しいタバコに火をつける。
ライターの小さな炎が彼の顔を照らす。
「ランサーは時代を問わずにモテるでしょ」
「どうだかなー。俺は良い女ってのにとことん縁がねぇからな。」
「…私は?」
フォークを持つ手が止まった。
「ん?良い女かって?」
「うん」
「さぁて。ま、俺が出会った中で1.2を争うほどのマスターだってのは言っておこう。」
なにか誤魔化された気がする。
ランサーにとって、私はマスターでしかなくて、そうでなくてもただの小娘でしかないのか。
(………)
おなまーえは耳元のイヤリングに触れた。
「私は…良い女じゃないかもしれないけど、ランサーのこと好きだよ」
「知ってるって」
「……恋愛的な意味で、だよ?」
「は?」
ポロリと灰になった部分が落ちる。
この英霊が、表情が豊かな方とはいえ、ここまで間抜けな顔をしたのは初めてだ。
おなまーえが迫った時でさえ神妙な顔つきをしていたと言うのに。
「いやいやいやいや、冗談だろ?」
「ランサーは、私が冗談で迫るような人だと思ってたの」
「…あー」
ランサーは手のひらを額に当てた。
それが面白くて、おなまーえはケラケラ笑う。
「恋愛経験ゼロの年端もいかない女の子が、あなたに恋しないわけないんだよ」
ズズッとセットのアイスコーヒーを飲み干す。
キンっと冷えたそれが熱っぽい体に心地よい。
「女の子の恋心に気がつかないなんて、ランサーもまだまだだね」
「ああ、全くだ」
この愛に、これ以上応えてもらおうとは思っていない。
好きだと言う気持ち、それが伝えられただけで満足だ。
カランカランと喫茶店のドアが開く。
衛宮ご一行が出てきた。
「あ、急がなきゃ」
残っていたケーキをパクパクと口に放り込み、それを押し流すようにアイスコーヒーを飲み込んだ。
「楽しいね、デート。次はどこに行くんだろうね、ランサー。」
****
「クレープ!初めて食べた。美味しいね、これも。」
「んめぇな。おっ、嬢ちゃんクリームついてんぞ」
「あ、ちょっ!」
「――ごちそーさん」
「な、舐めることないでしょ!」
****
「ここはー…レディースか。隣でランサーの服でも買おうかな。」
「嬢ちゃんはなにかと俺に服を買いたがるが、楽しいのか?それ」
「うん。ランサーってばスタイル良いんだもん。何着せてもカッコいい。」
「ふーん……お!このワンピース、嬢ちゃんに合いそうじゃねぇか?」
「どれどれ?って、真っ白じゃない。似合うってオバケ的な意味でしょ。却下!」
****
「メガネ…?」
「そ。これかけると視力ぐーんとあがるんだよ。」
「どれどれ……あん?なんか世界がぐにゃぐにゃしてっぞ。」
「元の視力が良いんだろうね。ランサー視力いくつ?」
「数値はわからんが…そうさな、あの木の葉脈くらいなら見える」
「え?嘘でしょ?葉脈って、え?」
「ケルトの戦士は狩りもやるんだ。これくらいでないと生き残れねぇんだよ。」
****
「もうだめー。うまく打てない。」
「あの赤い嬢ちゃんのフォームをよく見ろって」
「投影魔術はできませーん」
「んじゃほら、貸してみろ」
「え、ちょ…」
「まず握り方はこう。腰はもう少し落とせ。球から目を離すなよ。」
「ひゃ…っ…!む、むりむりむり!」
「ったく、あんなことやこんなことしといて、フォーム指導はだめなのか。変わってんな、嬢ちゃん。」
「ここ外だし!ランサーが変なところ触るからでしょ!」
****