2月10日
夢小説設定
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「はぁ…疲れた…」
「だから早く出とけっつったのに」
「セイバーがあそこまで意地になるなんて思わないじゃん。あーもう、肩筋肉痛。」
先ほどのバッティングセンターでおなまーえはヘトヘトになってしまった。
というのもセイバーが遠坂凛と衛宮士郎に対抗して、初心者なのに負けず嫌いを発揮したからである。
「そろそろ昼時だな」
「お昼はどこに行くのかなー」
完全に人の作ったデートプランに乗っかっておなまーえは動いていた。
なのでこれは完全に想定外だったと言っていいだろう。
「お弁当持ってきてるなんて聞いてない!」
バッティングに一息ついた彼らは芝生の広場でピクニックを始めたのだ。
どこかのお店に入るとばかり思っていたため、おなまーえは食べるものは何も持っていない。
「あぁ…お腹すいたけど買いに行く気力もないや…」
普段なら一食くらい抜いてもさして問題ないのだが、バッティングでエネルギーを使い果たしたおなまーえは動く気力すらない。
「ランサーなんか買ってきてー」
「英霊をパシリにするとは、怠惰なマスターだな」
「なによ、タバコのついでにパンと飲み物買ってくるだけじゃない」
「ちょっとそこのあなた」
「っ!!」
おなまーえはバッと後ろを向いた。
赤いコートにツインテール。
遠坂凛だ。
彼女とおなまーえは面識がない。
にも関わらず話しかけられたということは、どこかでボロを出したか、ランサーの姿を見られたか。
『ランサー、ルーン魔術かけてくれてたんじゃないの?』
『効果切れてたみたいだな。いやー、すまんすまん。気がつかなかった。』
『絶対気づいてたでしょ!?』
『まぁまぁ。そら、この嬢ちゃん、お前さんに話しがあるみたいだぞ。』
『……あとで覚えてなさい』
遠坂凛との接触には細心の注意を払っていた。
彼女は衛宮士郎と違って生粋の魔術師だ。
おなまーえがマスターだとバレたら、戦いが起きないとは限らない。
「…………」
彼女の二言目を、おなまーえは待った。
「――あなた、お昼まだでしょ?よかったら一緒にどう?」
「………」
おなまーえは警戒の色を露わにする。
魔術師なんてロクでもない人格筆頭の集合体だ。遠坂家は名家。もちろんその一人娘も魔術師のロクデナシ感を色濃く受け継いでいるだろう。
罠だろうか。
おなまーえの警戒と緊張がピリピリと伝わったのだろう。
遠坂凛は綺麗に笑った。
「そんな怖い顔しないでよ。アーチャーはいないし、衛宮くんがあなたのことは襲うなって言ってるし、私もこんな人前で襲いかかる趣味はないわ。」
「連れてきたわよ」
「おなまーえ。どうぞこちらに。」
「え、何この受け入れ体制。衛宮くんなにか話したの?」
「まぁまぁ。ほら、これとかすげぇ美味いぞ。」
「うふふ、ちょっと多めに作ってきてよかったわ」
完全にアウェイな空間だ。
衛宮士郎とセイバーは予想以上に暖かく迎えてくれた。
それ自体は感謝するが、私たちは聖杯戦争において敵同士。
なぜ青空の下、優雅に同じ釜の飯を食らっているのだろう。
予想外の展開にランサーに助けを求めたが、彼は「頑張れよ」とか言ってついてきてくれなかった。
万が一襲われたらどうしてくれる。
「……お邪魔します」
レジャーシートの上には、色とりどりのサンドイッチとフルーツが並べられている。
手前のチーズとトマトのサンドイッチを拝借する。
遠坂凛が早起きして一生懸命作ったというそれは絶品だった。
彼女の真心というものが感じられる。
「美味しいです、遠坂さん」
「お口にあったみたいで何よりだわ…えっと…」
「おなまーえ、です」
「おなまーえさんね。よろしく。」
衛宮士郎に接するときとは違って優雅に彼女は微笑む。
いわゆる外向けの顔というやつなのだろう。
「……そうだよな。遠坂ってこういう上品なキャラだったはずなんだよな。」
「衛宮くぅーん?」
「あ、いや、ナンデモナイデス」
「うふふふ。おなまーえさん、よければこれもどうぞ。」
「いただきます」
「リン!私もそちらを頂きたいです!」
「セイバーはちょっと自重しろ」
2人はおなまーえについて深く聞いてこなかった。
ランサーのマスターなのかとか、どうして聖杯戦争に参加しているのかとか、聞きたいことは山ほどあるだろうに、彼らは何一つ聞くことはしなかった。
「ご馳走さま」
「お粗末様でした」
4人で(と言ってもほとんどセイバーが)お弁当を平らげた。