SS 141~160

この世界に神様は居ますか?居たら返事をしてください。
そんな馬鹿なことを思って、考えて。僕は彼女を見る。
仕えるべき主人たるお嬢様のその麗しいまでの長い髪に隠れた『あるもの』を考えて、ギュッと目を瞑る。
僕は一体なんてことをしてしまったんだ……。
そう考えては、止まない。

「なぁに。まぁた変なこと考えてんの?」

「……違います」

変なことなのだろうか。僕のこの思考は。
僕はやはり目を瞑って、そうして嫌な考えを振り払うかのように首をゆるく振った。
お嬢様は何かを考えるかのような素振りを見せたが、結局何かを言うことはなかった。
そんな日々が続いたある日のこと。

「お嬢様……?」

「あ、ようやく来たね。どうかな?」

「どうかな、と、言われましても……」

あの麗しいまでの黒髪は切られ、代わりとばかりに晒されたのは真白い首……ではなく、喉を潰そうとばかりに絞められたのではないかというほどの手形だった。

「なんで……」

「なんで?そうだなぁ……」

うーん、とお嬢様は少しばかり考えられて。そうしてふわりと花が咲くかのように蠱惑的に笑われた。

「この『アクセサリー』は、お前に一番に見て欲しいからね」

その顔は本当に愉快そうで。僕は一瞬言葉を失った。
僕が苦しめたその『痕』を『アクセサリー』だなんて称してくれるのは、きっと。
生涯で唯一。このお嬢様くらいだろう。

「いやぁ、歪んだ性癖を持つ恋人を持つのは大変だな」

「……思ってもいないくせに」

「ああ、まったくな」
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