長編「今度はあなたを」
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
心は波に漂う舟のようだった。
あの日の鵺野先生との事を思い出しては心が騒ぎ、波で夕陽が弾けたような切ない甘さが胸の中に広がっていく。
彼と過ごした二日間は私にとって特別だった。
アルバムの中の数ある写真の中でそれだけが特別なページに飾られているような特別感。
一緒に見た映画。
足が痺れて雪崩れ込んできたときに感じた温もり。
二人分のソファの沈み。
笑い合いながら作った料理。
思い返しては鼓動が走り出す。
でも…。
そこで舟を揺らす波は止まる。
鵺野先生の鬼の手に触れた時。
私の頭の中に流れたかつての記憶。
その後の鵺野先生の態度にまさかと思った。
過去を知られてしまったのだろうか。
そう思うと怖かった。
だから咄嗟に作り上げた平然を振りかざし、微笑むことにしたのだ。
何も無かった。
だから、このままでいましょう。
鵺野先生にも、私自身にも、そう言い聞かせたのだ。