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ナルトと愉快な仲間たち

ここは何処だ…?

感覚がフワフワする。なにも考えられないってば…

まるで、何もない空間の中を漂っているような…

『よう。また会ったな』

前方に誰かいる気配がする。誰だ…?

『どうだ? もう思い出したか?』

 どこかへ足が着く感覚がして、そっと眼を開けた。
 その場所は真っ暗でも、所々ランプみたいなものが浮かんでいて、ぼうっと辺りを照らしている。
 だからか周りを問題なく見渡せる。一度、こういう所に来たような…

『おーい。こっちこっち。』

数メートル先に、誰かがいる。さっきの声の主だ。
俺は誘われるように手招きしている奴へと歩を進めた。

『ひっさしっぶり♪』

手を上げてニッカと太陽のように、にししと笑うその人物に、俺は目を奪われ、硬直した。だってさだってさ、姿かたちがさ…

「お、お前は何者だってばよ?!」

 突発的に警戒しながら威嚇するように鋭く聞けば、笑っていた顔はどんどん口を尖らせて眉間に皺をつくった。
 怒るというよりは、それはまるでふてくされてるような…ホッペぷ~って膨らませて…え、なにこれちょっと可愛い。

『なんだよー。まだ忘れたまんまかよー』

 とブツブツ言いながら何か納得いかないでいる。ポカンと呆けた顔をしていると、どこからともなく高笑いが聞こえてきた。本当に面白そうに、愉快に笑っている。ヒーヒー言っているし。
 しかも、その空間全体に広がる低い声。あれ、どっかで聞いたことあるような…
 そんなことを思っていたら地団駄を踏みながら目の前の奴が我慢ならねぇ! と叫ぶ。そしてどこかをキッと見つめながら大声で続けた。

『うっせーよ九喇嘛!! そんなに笑うこたぁねーだろが!! 今すぐ笑うのを止めろ!!』
『無理だ無理だ! こんな面白いことを笑わないというほうがオカシイだろう!』
『痙攣するほど可笑しいかっ?! コノヤロー!!』

頬が赤い…え、もしかして恥ずかしいのか…? え? 一体何がどーなって?? というより、九喇嘛って誰? 痙攣って…姿見えないのに…え? あいつには見えるってことなのか?

『それよりも…』

低い声が響く。まだ笑いの余波が残ってはいるが。

…そんなに笑う場面かこれ?

『とっとと説明してやらなきゃならねぇんじゃねぇか?』
『あ、そーだった。』

俺のほうを振り向いて、またニッカと笑ってくる。

『説明する前に、術が解ければ記憶が戻るから、そん時に説明するってことでいいか?』
「術? いや、そんなの待ってられねーよ!! いいから説明しろってばよ! こちとらなんかこう、頭の中がゴチャってなってるって言うか、ムズムズするっていうか!」

さっきから何か思い出せそうな、でもまだ頭にモヤがかかってて…

「とにかく! 俺ってば今すぐ知りたいことがいっぱいある。今までずっと溜め込んでた疑問だってばよ。お前が答えを知ってるっていうんだったら、今すぐ聴きてぇ。」

そう言えば、目の前の奴は頬をポリポリかきながら、やっぱそうくるかーなどと言っている。

そう。俺はずっと引っかかってた。それも何個も、何回も感じてきた違和感。
その違和感は目の前の奴が現れた瞬間に増した。
胸の奥が…疼く。その疼きは心臓の音にあわせてだんだん強くなってくる。呼吸さえするのが辛い。

耐えられねぇ。だから聴きてぇ。

『わかった。でもどっから話そうか…』
「まずはここはどこだってばよ?」
『ああ、そこからか。ここはな』

奴が両手を広げた直後、周りが照らされた。先ほどの淡い光ではなく、もっと別の、そう、例えるのなら部屋の中にいるくらいの光。

そして、俺らの横に現れるのは馬鹿でかい檻と、封という小さい札…そして、その檻の中に二度とない威圧感を感じた。

それはとても荒々しく、尖っているような、近づく者たちみな食らわんとするような…圧迫感。
何かを…警戒している感じがした。

『…小僧。何故お前がここにいる…』

九尾の妖狐がそこにいた。

「あれ…あの時の」
『よっす! こっちの九喇嘛とは初めましてか?』
『…なぜ、俺の名を知っている』
『そう怖い顔すんなって! これから順を追って説明すっからさ!』

そして、そいつは俺と向き合った。

『簡単に言えばお前の中にいる奴と話したかったから、寝ているお前の精神と俺の精神をつないで話しているってことだ。つまりここは…』

お前の精神世界。

「そ、そんなことができんのか?! お前すっげーな!」
『なはは…照れるって。で? 次の質問は?』
「あ、うん。えっと、さっきこいつのこと九喇嘛って言ってたけど、それはこいつの名前で合ってるんだよな」
『ああ。それで間違いねぇ。』
「じゃあさじゃあさ、さっきの台詞『こっちの九喇嘛とは』って、どうゆう事だってばよ? まるで…」

俺の中の違和感と疑問は、次の奴の言葉で確信へと一歩近づく事となった。

『まるで、九尾の妖狐がもう一匹いるような言い方?』
「うんうん! そう。」

そいつは、なんだか分からないけど優しい顔つきで、暖かい微笑をしながら俺に答えた。その眼差しは俺と九尾…九喇嘛を捉えていて…
でも、嫌な眼差しなんかじゃなくて、もっとこう、何かを見守るような…気分がフワフワするような嬉しい眼差し。そして、なぜか懐かしさを感じさせる。

『その通り“だってばよ”?』
「…え?」


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-


「…カズハ」
「分かってる。サクラ、チビヒマとシナをよろしく」
「…了解しました。」
「じゃあ、その間、この術を解くために結界をこの部屋にかけるわよ」

ミトとカズハが部屋から出たのを確認してから、シナは部屋に結界をはった。その結界が見事なまでに強力かつ、頑丈なものでサクラは目をみはった。

「この結界ってまさか…」
「そのまさかよ。じゃあ、今度は特殊な結界をナルトくんの周りに貼るから。その後はもう、文字一族の術を解くまで身動き一つもできないから、護衛よろしくね?」

「はい!」

一時間前、彼らは真実をサクラに解き明かした。サクラは最初、驚き固まり、数十秒後、復活したと思いきや、いきなり暴れだした。彼女曰く「何故、もっと早く言ってくれなかったのか。何故ナルトを一人にしなければならなかったのか」

サクラもこの三人の事情と、『あの時こうするしかなかった』感には、しぶしぶ納得はしている。しかし、彼女はどうしても言葉にせずにはいられなかった。
どうして…なぜ…

その言葉とサクラの涙と嗚咽が部屋に響く。

いたたまれない。

サクラは改めてナルトの強さを知り、自分の弱さを思い知った。
悔しい。その思いだけが身体を支配し、震えさせる。

しかし、時は待ってはくれない。敵が襲ってくるのは時間の問題。
ならばここが力の見せ所だとサクラはなんとか持ち直し、涙を拭き、一層ナルトを護ろうと決意したのがつい先ほどである。

そして、ミトとカズハが敵の薄れた気配に気づき、外で待ち伏せているそいつらを適当に相手しに行ったのが今の流れ。

「カズハさんたち大丈夫でしょうか」
「心配? ふふふ。大丈夫。木の葉の忍びはヤワじゃないって知っているでしょ?」

結構な集中力とチャクラコントロールを行いながらニコリと笑うシナにつられて、サクラも笑った。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-


「どう思う?」
「なにが?」
「敵だよ。君から見てどう思う?」
「誘われているとしか言いようがないわね」

薄れているとはいえ、カズハくらいの忍びが察知できるレベルの気配。つまり、敵はワザと気配を薄めて彼女らにしゃくしているとしか考えられない。

「でも、べつにいいけど」

そして、構えるのは一つの真っ黒な巻物。真っ赤なインクで“1”と書かれていた。

「あれ。もうそれ出しちゃうのかい?」
「ええ。この前みたく瞬殺なんて…私のプライドが許さないし…それに」

彼女は巻物を上に投げ、印を組む。

「相手は文字一族。本気を出して丁度いいくらいの相手だと思っているから」

瞬時に巻物を手に取り広げ、親指を噛み切りその血を巻物に押し付ける。

「解!」

そう叫べばボンという音と煙が立ち上がった。

「久しぶりに見るなぁ」

清々しくミトは呟いた。目が細められ、“それ”を構えるカズハを捉えてニッコリ笑う。その笑顔を見て、苦々しく顔をしかめたカズハ。

「私だってこれを使うのは久しぶりよ」

そう言う彼女の手に握られていたのは、刀身が鋭く銀色に光る刀。

「あまりに凄いからめったな戦闘には出さないようにしてたんだけど、今回はマジでいかせてもらうから」

その目はギラリと光っている。

ありゃ~。めったに見れない本気の眼だなこりゃ。

そう思ったミトは苦笑した。この彼女達の力と技術で何度命拾いしたことか。

「…さすがは元侍の一族だけある。凄い威圧感。それに…ちゃんと子から子へ受け継がれていたんだね」
「元々、侍の家系だったのが、突然変異しちゃったから、やむなく忍びとして活動してただけで、休みはちゃんと故郷へ里帰りしてたわよ? 暇なときも遊びに行ったりしてたしね。あっちの家族とも仲良しなのよ」
「…そう。あくまで忍び家業やってるってだけで、侍だってことは捨てなかったんだね」
「当たり前でしょ。私達一族は皆負けず嫌いなんだから。複雑な事情だろーがなんだろーが、関係ない。突然変異? 異常な敵??」

そう。彼女らにはまったくもって問題ない。

「それがどーした!! そんなもん、壁だろーが山だろーが知ったこっちゃない! ぶっ飛ばずまでよ!」

左手のクナイを近くの草むらに投げつける。その途端に敵が飛び出てきた。

「出たわね似非紳士」
「とその相棒くん!!」

 二人が言い終わる前に敵方がクナイを数本投げつけてきた。ミトは跳ね除けカズハは刀を使い敵へ跳んできたクナイを跳ね飛ばす。

 その瞬間的な行動と器用なことをするカズハに目が張ったが、持つクナイで敵がしぶしぶ飛んでくるクナイをはじく。
 その隙にカズハは敵の懐に飛び込み刀を上げて思い切り振りかざした。

「ちっ。掠っただけか!」

 少し悔しそうにするも態勢を整え再び振り下ろしたままの刀の刃を敵に向きなおし、そのまま円形に切り倒そうと振りかざした。
 と、とっさに敵の相棒がクナイを使いその刀を受け止める。そのごく僅かな瞬間に態勢を整え後ろにいた似非紳士はこれぞ好機だと含み笑いをしながら杖を金棒に変え、カズハへと攻撃する。
 それを避けようとすると、ボルサリーノを被った黒マントの男はブツブツと何かを唱え始めた。

文字が地面に浮き上がり、そしてカズハの足を縛りつける。

くっ…コイツが…文字一族だったかっ!

刀を自分へ引き寄せ防御しようとするが、金棒は攻撃力が高い。

ヤバイ

汗が出てくる。

そして、敵方は勝利を確信しているのか、まだ不適に含み笑いをしながら金棒を振りかざしてきた―――…

その瞬間

「勝利を確信するのはまだ早いんじゃないかな」

いつのまにかミトがカズハの前に立ちふさがり、そこらへんのクナイを手に持って金棒を弾いた。

「油断大敵だよ? あとクナイの無駄使いはいただけないなぁ」

そう言いながら良い笑顔で微笑む。はぁ?! もともとクナイは消耗品だろがとか敵も味方も思うが、その笑顔が決して突っ込ませない。笑顔で殺すタイプだ…妙に遇い方になるのは敵も見方もそう感じてしまうからだ。

そして彼は何かをブツブツ言いながら印を組み、クナイをチャクラで被い、そのクナイを使ってカズハを縛っている足元の文字をぶっち切った。

「ちっ。あいつ、戦えたのか」

似非紳士はおっかなびっくりしながら呟いた。あの年数50を超えた老人が、まさかここまで戦えるとは思っても見なかった。

「動きが精練されていて、無駄がない。しかも瞬時に対策を練るスピードも半端ないな。あいつは…只者じゃない…気をつけろ」
「分かった」

距離をとった敵を静かに睨みながら見守るカズハとミト。
と、唐突に嫌な顔でミトを睨むカズハ。

「お礼は言わないわよ」
「あはは。別にいいけど、今のは油断していた君も悪い。」
「うるさいな。久々に刀を使ってるから思い通りに身体が動かないだけで…」
「はい、それ言い訳ー。」
「ホントだってば!」

ムキになっていたカズハは、一旦自分を静めるため息を大きく吸い込み、そしてはいた。
自身が持つ刀を撫でる。

「本当に、久々にこの子を出したから…少し扱いにくいし言う事をちょっと聞いてくれない。」
「あれ。刀もスネるの?」
「まぁね。私が持つ刀は全部妖刀だから」

そしてその眼光は鋭くギラギラと光りはじめ、敵を見据える。

「今やっと落ち着いてくれたみたい。」

ニヤリと、不適に笑った。

ゾク!

「くっ…」
「どうした言文?」
「エニシ…気をつけろ。あの女、先ほどまでとは何かが違う…」
「…お前が言うんだから間違いはなさそうだな…よし、おいお前ら! 出番だ!」

言いながら巻物を取り出し地面へと投げつける。すると大きな破裂音とともに現れたのは数百人はいるであろう抜け忍たち。見たところ中忍や上忍レベル。

「ちっ! やっぱしそう来たか。」

ニヤリと笑うカズハ

「君の言う通りだったね」

ふふ。と軽く笑ったミト。

その二人の態度を見て、十数人の抜け忍が神経を逆なでされたらしく、いきなりクナイや手裏剣を数百こ投げつけてきた。
そして、その場は雨よろしくクナイや手裏剣が豪雨のごとく降り注ぐ事となった。

しばらく投げつけ砂埃が上がったため、攻撃を止めさせ様子を見る。
埃が消えるとそこには一面隙間なく地面に無残に突き刺さったクナイと手裏剣と。

二人の忍びが無傷で立っているという光景が広がっていた。それよりもなによりも、その場にいた敵すべてが驚愕したのは別の理由もあった。

その二人の前に、立ちはだかる数人の人物たち…

「あら。遅かったじゃないの」
「丁度なんじゃないの姉さん? 少しは鈍った体、動かせたじゃない」

ニッコリ笑うカズキに

「いやー、まさかカズハさんが刀を構えるなんてね。久々の本気ってやつですか」
「なんで忍びが刀を持っているんだ? そういう忍びもいるとは聞いたが、あんな侍のような刀身ではなかったと思うが」

苦笑いをしているカカシに疑問のサスケ。

「そう言えばそうですね! 僕も気になります」
「ふん。変わった奴だとは思ってたが…これは異質だな。そもそも元から数楽一族はふに落ちない事柄や奴らばかりだ。」
「たしかにねー。武器には結構詳しい私から見ても異例だわ。忍びなのに、まるで忍びじゃないような…」

リーにネジ、そしてテンテン

「めんどくせーけど、たしか数楽一族って元は侍の家系だったってアスマから聞いたことがあるぜ。」
「ああ、それなら今までの違和感に納得できるね」
「へぇー。そうなの? 変わった一族なのねー。」

シカマル、チョウジにいの。

「ならばその能力はそこらの忍びより数段上だということになる。何故なら侍の集中力とキレと忍びの身体能力と混ざれば、確実に強いからだ」
「ほ、本当に凄い忍び…だったんですね…」
「あえて言うなら敵に廻したくねぇー相手ってわけだな。」

シノにヒナタにキバ。

「やっと来たって感じね。下忍勢ぞろいで今の攻撃を防いだのには、まぁ、一応褒めておくわ」

刀を鞘に納めたカズハが嫌味のようにニヤニヤ笑いながらシカマルのほうを見つめた。
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