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ナルトと愉快な仲間たち

ここはAの65番地のG。カズキが指定した火影様の友人が避難したといわれる場所。

「やれやれ…困ったものだ。」

そう呟くのは火影の友人、ミト。見た目年齢は50をちょい超えたくらい。

「あなた、どうかしたの?」

妻のシナ。年齢は同じ。

「もうすぐで着くころだろうな…会うのは嬉しいが…内容がなぁ…どうしてこう、あの人は自分の里も満足に管理できないかね」

と、友人の失敗を本人の管理ミスだとかブツブツ文句を言いながら苦い顔をする。まぁ、実際にそうなのだからしかたがない。

「なんのために団子屋まで開いて里をあの人の手に委ねたか、分からなくなってしまうよ…」
「ふふふ。まぁまぁ。あの人ももう、歳でしょう。」
「さっさと五代目を任命すればいいものを。人材はもうあるだろうに。」

そう言いながら彼は立ち上がった。杖を手に持ちながら、そろそろだと呟き、玄関から外へと歩き、少ししたところの道のど真ん中ですっと、立ち止まった。

みるみるうちにニヤニヤ笑顔になる。

「…愚痴を言うのも自由ですがね。」

妻はため息がてら夫の様子を呆れながら見つめる。

「まずは、その嬉しさで緩みきった顔を何とかしてほしいわ。」

あの子に会える。赤ん坊以来、見ていなかったあの子。どんな風に成長したのだろうか。そんな事を考えていた彼は、到着した際に驚く破目になる。

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ナルト班Side

「お、あれじゃねぇか? カズハ姉ちゃん、サクラちゃん?」
「おおー。ついたねー」
「道の真ん中におじさんが立ってる…あ、あの人がミトさんよ。団子屋の主人の。」
「…無駄に、にっこにこしてないか?」
「…してるわ…」

そう言いながら怪しむ二人をよそに、カズハは少しため息を零しながら懐かしむように、そして呆れたようにミトを見つめた。

「…久々に会えるからって緩み過ぎよ」
「「…え? 誰が誰に??」」

ナルトとサクラが質問をしてみるが、カズハは苦笑いながら前を歩くだけ。

「お久しぶり。調子はどう?」

かなり年上の年輩の方に対して、まるで対等な会話をしてくるカズハにミトは嫌がる素振りもなく、にっこにこしながら答えた。

「ああ。無駄に元気だよ。」

ふと彼がナルトのほうへと顔を向けて驚いた顔をした。当の本人ナルトは首を傾げる。ミトはそのままの顔でカズハを見やり、どういう事だと問うような眼差しを返した。

カズハは面倒くさそうに溜息をし、やれやれと言いながら本当に何も知らなかったのかと呟いた。

「そうだよ。片方の奴しか今は里にはいない」

そこでミトは少し苦そうに顔をしかめた。悔しそうともとれた。

「それも、コッチの方か…あっちの方は見つかったのか?」

カズハは溜息をもう一度して、明後日のほうを向き、頭をポリポリかいてからミトをチラリとみた。

「…シナにも話したいんだ。ここじゃなんだし、避難場の旧団子屋の中で…」
「あ、ああ。そうだね…分かった。」

そして思い出したようにカズハがああ、そうだった。と言いながらナルトたちを紹介していった。

「この子らが一応ここで寝泊まりする下忍の二人。春野サクラと「よろしくお願いします」同じく下忍のうずまきナルト「ウィッス」とくにナルトに関しては、もうすでに色々聞いてると思うからその時になったら宜しくね。皆、こちらは三代目のお友達、団子屋のミト。奥さんはシナっていうんだ。」
「カズハさん、お知合いだったんですね…この前来た時に言っておいてくれたらよかったのに」
「面倒くさかったから。それに聞かれもしなかったしね。」

サクラは少しため息を零した。たしかに聞いてない。聞いてないけど、察して説明ぐらい欲しかった。しかし、そういうのが出来ないのがカズハだと旅先で分かったことだから、今更気にする必要もない。

大雑把な自己紹介と説明に、変わってないなぁと苦笑うミト。そして店へ案内する際ナルトの頭を手でポンと乗せ、フワッと一撫でし、驚いたナルトが振り向いた瞬間に優しく微笑んだ。

何だ…? 今の凄く懐かしい感触は…? まるでずっと前から知っているような…

ナルトは撫でられた頭に手を置いて、団子屋の主人が去って行く後姿を眺めていた。

団子屋の主人が部屋や仕掛けてあるトラップうんぬんを説明している間中、ナルトは心ココに有らずな状態で、ちょくちょく撫でられた頭を手でさすっては何とも言い難い短めなため息をしていた。

もちろん、サクラは嫉妬でどす黒いオーラを出していたが、カズハは何故だかサクラとつるむ事もなく、静かに微笑しながら見守るだけだった。

サクラはおかしいと思った。ナルトらぶなカズハだったら、一緒になって怒ってたはずだ。

そんなこんなで幾日か過ぎてナルトの体調が急に悪くなったある日の夜。

サクラが気休め程度にしかならないが、一応治療し終え、寝ようと立ち上がった時のことだ。
カズハとシナとミトの声が聞こえた。だんだんとナルトの寝ているこの場所へと近づいている。

サクラはなんとなく身を隠してしまった。もちろん、気配も。直感的なものだったため、何故そうしたのかサクラ自身も分からなかった。

「ん?サクラがいたと思ったんだけど…いないや。治療し終えて帰ったのかな。」

ひょっこりと顔を出したのはカズハ。その次にシナとミトが入る。

「で、これ。ナルトのこの体に浮かぶこの文字。文字一族のものでしょう?」

カズハが問うと、難しい顔をしたシナとミト。やがて、ため息をこぼしながらミトが言う。

「そうだね…『言霊縛り』だなこれは。発動すると、敵に居場所が分かる上に、動けないし、術も発動しにくくなる。つまり、《縛られる》んだ。」

カズハは真剣に問う。

「解く方法はあるの?」
「あるにはあるわ」

今まで黙っていたシナが言った。

「でも…時間がかかる上に、成功率は低い…」
「おまけに、敵さんがこっちに向かっていると計算したら、圧倒的に不利じゃない?」

ミトがそう言えば、不機嫌になるカズハ。

「…どうして不利よ?」
「え、だって、君とサクラって子が戦うんだろう?大人数で押しかけたら、いくら君達が強いからってやられるよ」

その不安そうに呟くミトとは裏腹に、カズハはにこやかに言った。なぁんだ、そんなことか。と言いながら。

「二人じゃないもの。《皆》よ。」
「?」

私が何も手を打ってないとでも? と言いつつカズハは続けた。

「さっき、カズキと交代するときに精神世界で話したの。一応、そこで私達の力の一つ、アルゴリズムをやったのね。」
「えっと、あるご…?」

シナが言い難そうに眉をしかめた。そこで、カズハはいーい?よーく聴いて。と言いながら人差し指を上げた。

「アルゴリズム(algorithm)。つまり、算法よ。「問題」はその「解」を持っているけど、アルゴリズムは正しくその解を得るための具体的手順および根拠を与えるの。作戦の設計図と答え…とでも言えば分かりやすいかしら? さらに多くの場合において効率性が重要となる場合にのみ、使うのよ。多大な精神力とチャクラを消耗する代わりにどの人間より速く大量に正しい結果を導くの」
「そうそう。そんなんだった。」

ミトは潔く理解したようだったが、シナは話しについていけないのか、困った顔で苦笑している。
そんなことはお構いなしでカズハは続けた。

「そこで、今までの情報を組み合わせて、これから先の、起こる、起こりうる出来事を計算した所…やばい出来事が幾つも起こるとでた。そのうちの一つが、私達がここにいることで起こってしまう最悪の事態。それを回避するために、カズキに伝言を頼んで、元の私の体に精神を戻したのよ。」

なるほどねー。とミトは苦笑い。

「例によって、詳しくは言えないんだね?」
「ええ。そうね。」

にこりと黒く笑いながら続けるカズハの顔には影が落ちていて、直視が難しい。

「だから、《皆》なのよ。」

ミトとカズハは分かり合えたのか、うんうん。と頷いているが、やっぱり話についていけずに、一人ぽっち感を味わっていた苦笑のシナさん。

しかし、しばし考えた後、あちゃーと手で目を覆ったカズハ。ため息混じりにすっかり頭から抜けてた…という。

「シカマルって子のことを、計算に入れるの忘れてた…ヤバイわ…血の雨が降るかも…」

彼女は、カカシの報告と、火影のこれまでの秘密資料を漁り、シカマルが木の葉のことについて重大な何かを知ってしまっている事を、すっかり忘れていたのだった。

しかも、奴もかなりのナルトLOVEで。アカデミーの頃からナルトを守るために役に立てそうな優秀な人材を見極め、そして何気なく修行という名の『レベルアップ』を図っていたIQがかなりの数値をたたき出している子。

すでに上忍レベルのあの子を思い出すことに、なぜ、手間取ったのか。これでは、計算に狂いが生じる。

カズハの行動で何かを察したのか、ミトはニコヤカに言った。

「木の葉の《若葉たち》の成長のためなら、足止めくらい、なんてこと無いけど?」

その言葉にくるりと振り返ったカズハ。

「え、いいの? あの子、結構やるのよ? 多分軽く暗部や火影くらい倒せちゃうくらいに。」

苦笑しながらミトは続けた。

「大丈夫。だてに木の葉で火影やってなかったし…それに修行だって疎かにしてなかった。他の火影よりは強いよ」

ガタン

「「「…」」」

物音がした。

会話をしていた三人は顔を見合わせる。そして、プッと笑った。あの子かぁ。と静かに言いながら。

「まぁ、もしもの場合だけだよ。こんな老人が何を言っても、体力も劣ろいているし、今の若い者に比べてたかが知れてるね。それに…もういいだろう? 彼女に話してあげても。口は堅いんだろ?」

その彼の言葉に、カズハは口をへの字にした。

「あのね。だから貴方は甘いのよ。それで、もし彼女がうっかり喋ったら、こっちの計算がますます狂うじゃないのよ。後々修正するのが大変だってわかってる?」
「それをなんとかするのが数楽一族だろう? 頼りにしているよ」

綺麗ににこやかに笑うミトとは裏腹にカズハはため息をしながらこめかみを手で押さえていた。

「…姉さんが、長期休暇届け出したもう一つの理由が分かってきた」
「ん?」
「…なんで火影って数楽一族にだけ甘えてくるの?」
「さぁ? なんでだろうね?」
「…はぁ。わかったわよ。こんなの今に始まった事じゃないし…サクラ!」

ビクリ! と影が揺らいだ

「出ておいで。話してあげるから…」

一方そのころ木の葉では

「と、言うわけなので、皆そろったし、火影様にも許可をもらったし、出発しますかぁ! 名づけて『ナルト救出し隊』出陣!!」

声高らかに言うカズキ。その目前には、当然のごとく同期の下忍たちが勢ぞろいしていた。

「「「おー…」」」

彼らはあまり乗り気ではない上に、かなり疲れた顔をしていた。

それもそのはず、彼らは無理やり参加させられ、しかも帰ってきたばかりのカカシとサスケ、そしてシカマルまでもがウザイほどに怒りをドス黒く周りに立ち込めていたからだった。

負のエネルギーが充満している…!
そのエネルギーが彼らの活力をすべて奪っていた。

「これから我らはナルト君とおもにそのほか付き人たちと火影様のご友人達の助太刀に行く!! なので時間も惜しいしとりあえずババって行ってちゃっちゃと倒しに行こうね!!」

うわぁ。無駄にイケメンな素敵笑顔…
そこで、負のオーラを纏ったサスケが手を上げた。

「ん? どうしたのかなサスケくん?」
「そいつらをぶっ殺す許可は」
「今は無し」

ガクっ…

何気に物騒なことを聞いたサスケを瞬く間に撃沈させた。
そしてまたもや上がる手。今度はカカシ

「いたぶったり、拷問は」
「却下」

ズーン…

「カカシまでなにを言っているのさ? 駄目に決まってるでしょ。他に仲間がいないかとか、色々聞かなきゃいけないのはもち、相手を把握するために捕まえるのがもっとも効率的にいいって分かっているはずなのに…仮にも上忍でしょ君? 一時の感情で全てをなくすかもしれないから、忍びは任務を全うするためには…」
「あー、分かってる。わかっているさ」

しかし、納得いかずに頭をかきながら睨むカカシ。

「でも、ちょっと考えても見てよ? 我らのアイドル歌手ナルトが、敵の術で苦しんでるだけでも万死に値するのに、一度ならず二度までも浚おうとするし、挙句の果てにはナルトをまた狙ってるって…それなんて死亡フラグ? 殺してくださいって願望もってるんじゃないのそいつら??」

「…まず、色々つっこみたいけど、とりあえず時間の無駄だからスルーしておくよ」

ガクリ…

今度こそカカシは撃沈した。

「今度こそ、出発するよー」

そういうが早いか、もう一人手を上げるものがいた

「…一応礼儀として聞いておくよ。なに?シカマルくん」
「…そんなに怒るこたぁねぇと思いますよ。そこの馬鹿二人と違って、俺のは有意義に使える作戦っすから」

不適に微笑むシカマル。ああ、そうだった。この子は…IQが実力ともども計りしえない、成長が楽しみな下忍の一人だった。
一人内側でウキウキし始めたカズキ。たしかに、ナルトバカのあの二人よりはマシかもしれないし、まぁ同じナルト馬鹿だけれども。

「うん、じゃあ聞くだけ聞いてみる。言ってごらんよ?その作戦とやらを…」

なに、たいした事じゃなイッスヨ。そう言いながら彼はカズキにそっと耳打ちした。
数分の後、にっこりとカズキが、それはもう満面の笑顔で周りに花でも咲くように、笑った。

「却下」
「…」

過ぎ去る風が、どことなく寒く感じられた。
カズキは笑ったままため息をした

「所詮君達はナルト三馬鹿だね。」
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