ナルトと愉快な仲間たち
どうしてこうなった?!
今の状況は本当にそんな感じで。
私がナルトから離れた隙に付け込まれるとは…!不覚!!なんたる失態!!
…と、自分を責めてる場合じゃなかった!!
早くカズハさんを見つけ出して傷の手当を…!!
~時をさかのぼる事一時間前~
「やーっと着いたってばよ!!目的地!!」
パシャ!
「到着スマイルナルト写真もゲットだしゃーんなろー!!」
「サクラ、後でコピーお願いね」
火影の命により、カズハ、サクラは
ナルトと共に長期間任務へと旅立ったのであった。
さて、その目的地とは…
「だ、団子屋…」
「あら、どうしたのチビヒマ? お団子好きでしょ?」
「そうよ、ナルト。せっかく火影さまが気を使って…」
「いや、そうじゃなくって、目的地ってここなのか?!ヨレヨレの今にも潰れそうな
このオンボロ団子屋が俺達の目的地なのか?!」
「「そうだけど?」」
「見事にハモッたってばよ…」
ナルトは期待していたのだ。
外へ特別任務(本当はナルトを休ませるため)を火影から
直々に言い渡され、一体どんな任務なのだろうと期待を膨らませていた。
お姫様の護衛?
盗賊をこらしめる?
抜け忍の討伐??
しかし、着いたのは見るも可哀想なオンボロお団子屋…
「じいちゃんの友人の頼みって言うからしかたなく(大喜び)で来たのに…」
「なぁんだ。やっぱりナルトには何も言ってなかったのね。
火影さまったらシャイなんだからv」
「シャイじゃないと思うってばよサクラちゃん…」
「あのエロジジイのことだから、本当の事を言うワケ無いと思ってたけどね。「思ってたんだネェちゃん…何気に酷くね?」チビヒマ、今回の任務はあなたを休ませるためにワザワザ木の葉の里を思いっきり離れた
場所に位置する森の入り口に立ってるこのお店を選んだのよ?」
「ええぇ?! なにそれ、つまんねぇよ!! じいちゃんの気の使い方っておかしくねぇ?! 何だよこのボロボロ??!!
俺、すっげぇ期待してたのに!!!」
「まぁ、それは置いといて「置いとかねぇでくれよ姉ちゃん!!
俺にとっては一大事だってばよ?!」…う~ん…ちょっとボロボロになりすぎじゃないかなぁ? どう思うサクラ?」
「スルーされたってばよ…」
「そうですね…この前、偵察しに来た時は、ここまでボロボロじゃなかったと。それに、この柱の裏側、焦げ目からしても火遁だと思われます。」
「偵察にここまで来た事あんのか二人とも?! ワザワザこんな遠いとこまで?! なんで?!」
とナルトがビックリしていると二人は顔を見合わせてから意気揚々と答えた。
「「ナルトの安全のためよ」」
そう、忘れた方もいると思うが、二人はナルトLOVEなのだ。それもカナリ。
ナルトのためなら火の中、水の中。と言った所だろう。
二人してキッパリと言われたために、金髪の子は何かを諦め、ため息を吐いた。
二人にはかなわねぇってば。
さて、先ほどのサクラの発言から彼女カズハは状況を整理し始めた。
ふむ、と言いながらお団子屋を見る。
「招かれざる客がいるみたいね…」
そうポツンと呟いた後に彼女は凄まじい勢いで
クナイをある場所に向かって投げつけた。
カキーーーーン
なにか別の鉄のような物がカズハの投げたクナイを弾いた。
「出てきなさい! そこにいるのは分かってるのよ!!」
そう言った瞬間に聞こえてくるのは
“クククク…”という笑い声。そして途端に目の前が暗くなる。
「久しいなカズハ…あの時お前が与えた傷が疼くから
会いに来たぞ…」
現れたのは黒マントを羽織ったシルクハットの男。
モノクルをかけ、チョビッとしたひげをさすりながら
顔に大きな傷のあるその男はフフフと笑う。
「…ウザ」
対するカズハは文字通りウザそうな顔をした。一刀両断のごとく冷たい目で睨む。そんな彼女を見ても鼻で笑うだけの敵。
「相変わらず紳士(ジェントルマン)の事が分かってないようだな」
「じぇんとるまん?? アンタが?? 笑わせないでよ似非 紳士」
その言葉にピクッと彼の眉毛が動いた。
そんなことお構いなしにカズハは人差し指をビシッと自称ジェントルマンに向ける。
「私にはちっとも紳士な態度とってないじゃないの」
「それは愚問だ」
黒いシルクハットを頭からとり、もう片方の手で
何やら手をマジシャンのように動かす。
「君は忍者で敵で、俺の顔に躊躇なく傷をつけたから君に対してレディのように扱う分けがない。ていうかこの傷のおかげで高感度だだ下がりじゃボケどうしてくれんだこの天邪鬼」
「え? しらなーい。あんたは元からモテなかったじゃないの。他人のせいにしないでいただきたいわー迷惑だから。」
彼はシルクハットからマジシャンの杖をブチマークを頭に出しながら出現させた。
「悪いけど、あんたのトリックは見抜いてるの。今更効きはしないわよそんなエセマジック」
呆れた風味であざ笑うカズハに相手はさらに笑った。
「俺がこの十年間、何もしていなかったとでも思ってるのか」
「何をしても無駄だからそういってるのよ」
「クククク…ご心配無用。さて、ここで質問だ」
帽子をかぶりながら杖を振る。
「木の葉の中で奪われた超極秘一族の超極秘暗号ファイル…誰の仕業だと思う??」
途端にカズハの余裕の笑みが崩れ、顔色が悪くなり、顔をしかめた。
「まさか…」
「そう、そのまさかだ」
そう相手が話し終わった途端にカズハは血を噴き出して倒れた。
彼女の体には無数のクナイや千本、刀が刺さっていた。
「カズハさん!」
「カズハ姉ちゃん!!」
「ククク…お前ら数楽一族の弱点見切ったり。次は…誰かな??」
先ほどまで紳士だった顔は今は醜くゆがんで笑っている。
「さく…ら」
「カズハさん! 「くるな!」で、でも…」
カズハはゆっくりと立ち上がった。そしてスマイル。
「痛くもかゆくもねーよ」
「ほうぅ。まだそんな余力がねぇ。」
口の端が切れ、血が流れながらもナルト達へと振り向いた
「こいつの相手は俺がするから、お前たちは任務続行のため、火影さまのご友人が非難されたところへ行け。Aの65番地のGだ。暗号は得意だったよなサクラ。今のわかるよな。」
何故か勇ましく恰好よく、男前で口調も男口調。
「え…カズハさん?」
「いいから、いけ」
指図されるまま彼女はナルトを引っ張る
「いくわよ。」
「で、でも!」
「大丈夫。少し行ったら私が引き返すから。ナルトは任務続行して。お願いよ」
そして、ポケットからお守りを取り出した。
「それを肌身離さず持ってて。必ず役に立つから。いい?絶対に失くさないでね」
コクリと頷くナルトを合図に作戦を開始した。
木から木へと飛び移り、しばらくたってからサクラとナルトは離れた。
のが、いけなかった。
先ほどの黒マントの仲間なのだろう。黒いスーツを着こなし、ボルサリーノを頭にかぶった青年が難しそうな顔をして現れ…あっという間にナルトを掻っ攫ってしまったのだった。
ナルトも抵抗しようとしたがいきなり文字が浮かび体の自由を奪ってしまったのだった。先ほどの似非紳士も現れ不気味に笑いながらマントを勢いよく振り上げ、姿を消してしまったのだった。
そして今に当たる。
「あいつら最初からナルト君が狙いだったのか」
傷だらけのカズハがそこに現れた。しかし、いつもと様子が違う。その違いに、結構敏感なサクラが怪しがった。
「貴方…誰」
サクラは後ろに現れたカズハから少し距離を置きながらクナイを構える。防御体制に移っていた。
「まいったな…姉さんのこと分かる人がナルト君の他にも居たなんてね」
そのカズハは疲れたような、しかしまったりとした雰囲気に優しそうなほんわかとした笑いを見せた。
カズハだったら、到底見せないような表情。ますます怪しい。
「今の俺はカズハであって、カズハじゃない。でも、片割れみたいなもの」
「どういうことよ」
「姉さん…つまり、カズハには双子の弟が居るんだ。それが今の俺っていう分け。いきなり交換したからさっき反動でダメージ受けちゃって、口調が乱暴になっちゃったけど今はちゃんと安定しているから。」
「え? じゃあ、もしかして貴方があの噂に聞くカズキさん?」
「よくわかったね。そうだよ。数楽一族の双子しか使えない『精神交換』を行った数楽カズキです。」
「『精神交換??』それって、中身が入れ替わるって意味ですか?」
「うん。そうそう。賢いねぇ。」
「でも、どうしてそんなことする必要が…」
そこでサクラはハッと何かに気が付いた。
もしかしたら、意図的にそうしたのではなく、《そうするしか》できなかった…?
カズキの方を見れば、少し困ったような顔で微笑んでいた。
「姉さんは精神攻撃を受けたんだ。俺たち数楽一族が特殊な技の一族でもあるけど、限られた攻撃にめっぽう弱いんだ」
それが今さっき彼が使った『ピクトグラム』という技
「でも、おかしいな…この技は俺らと敵対する文字一族 の奴らしか使えないんだけど…」
「え? 奴らはその文字一族じゃないってことですか?」
「あいつらは違うよ。紳士を気取ってるけど本性はどす黒いし、魔法使い(ウィザード)だっていうけど、どうだかね。昔はトリックありありの強敵だったけど姉さんに敗れて落ちぶれてたはずだったんだ」
「もう一人のボルサリーノを被った人は仲間でしょうか?」
「もう一人?」
そこでカズキは顔色を変えた
「ボルサリーノを被ってたって?!」
「は、はい…」
大きく溜息をし、長い髪が風で揺れる。今のカズハの顔でカズキは眉間にしわを寄せていた。
「なるほどね…あいつが動き出したってこと…こりゃやっかいな出来事が起きるぞ…」
何か、とてつもないことが始まろうとしている…
「カズキさん、とりあえず傷の手当てしますから。身体はカズハさんのだし。」
「ああ、うん。宜しく。」
しかし、改めて思うと究極の一族を一瞬でここまで傷つけてしまう文字一族もそうだが、数楽一族とはいったい何なのだろうか?
「あの、カズキさん、聞いてもいいですか?」
「うん。いいよ。俺たちのことについてだろ?」
「え…どうして分かって…」
すると、優しくホンワカとクスリとしかし、困ったように笑うカズハの顔のカズキ。
「サクラは顔に出し過ぎだよ。」
そういうとこ、嫌いじゃないし可愛いけど
「こういう戦闘や敵がいつ襲ってくるか分からない所ではもう少しそこらへんに気を配った方がいいよ」
「…」
「サクラ? どうしたの? いきなり固まっちゃって」
咄嗟にサクラは顔をうつ伏せた。
「…っな、何でもないです。」
「そう? ならいいけど。」
「アドバイスありがとうございました。」
カズキはあまり答えられないけれど、と言いながら、数楽一族のことをサクラに話し始めた。
「単刀直入にいうと俺たちは計算や数字を楽に使える一族なんだ」
「数字…ですか?」
「そ。」
昔は一族なんてそれほどでもなかった。ただ、計算が得意なくらいで忍者でも何でもなかったんだ。
それがある日、ある出来事がきっかけで能力に目覚めてしまった。それこそ、多くの忍びから恐れられるくらいに。
でも、反対にその恐れは一部で興味を持たれ、多くの仲間たちが浚われ実験として使われ殺されていった。
それでも秘密を知ることは出来なくて…そこで、ある一族に任務として協力してもらうことにした。
それが文字一族。彼らもある出来事がきっかけで一種の進化を遂げたらしくて、こちらはすでに公にしていたから、追われることもなくなったんだと聞いた。
しかも、奴らは文字を巧みに使って俺たちを追い詰める。
意を決して、数楽一族は木の葉に助けを求めた。
秘密を公にしないこと、火影だけが知ることを許すこと。そして木の葉を絶対に守ることと、その代わりに、こちらの身や身内には絶対自由を与える事を課程に木の葉と契約をした。
それが木の葉とのなれ合いの始まり。
初代からずっと木の葉とともにここに俺たちはいるってわけだ。
「残念ながら、これから先は言えないんだ。ごめんねサクラ」
「いいですよ。ただの下忍にここまで話してくれたんですし」
「…ただの下忍ねぇ…」
そうだとは、とても思えないんだけどなぁ…
カズキは思った。彼女はきっと、並大抵の努力をしてココに居るわけではないと。さらにそれを超えて彼女はやっと、ここまでこれたのだと。
彼女の戦闘力と機転を利かす速さと、頭の回転が恐ろしく速いという事は、火影様からいただいた資料に載っていたので知ってはいたが…目の前でそれを見るのとでは違った。
彼女は確実にとびっきりの才能を持っている。しかもそれは幾つも折り重なっていて…一つや二つではないのだ。計りえない潜在能力を持っている。まぁ、それは他の下忍たちにも言えることだ。
もし…誰かが何かの拍子で彼らのその隠れている能力や力や才能を発掘し、育てたなら…
「木の葉は最強な里になるんじゃないかな」
「はい?」
「あ、いや。こっちの話。」
残念なのは、今の大人たちにはその適応力を持つものがいないという事。それらを育て上げる者達がいないのだ。
だから、彼らは独自で動かなければいけない。
(マコ姉さんだったらそれができるんだろうけど…)
彼は大きくため息をこぼす。
(今は木の葉にいないしなぁ)
そう。才能を伸ばし、発掘し、育て上げることが出来ていた上原マコ(数楽マコ)は、不幸なことに木の葉を長期間休業を火影に押し付け、ただ今10年間行方が知れていなかった。
火影は嘆いたが、残された一族のものは誰一人心配していなかった。何故なら…それこそがマコが木の葉に、火影に強いた試練的な何かであるからだ。
なにより、木の葉の忍びたちもそうだが、火影も暗部もなにもかも、数楽一族達に頼りすぎなのだ。それがもっとも危険で、木の葉の弱点にもなりうると悟ったマコ、そして一族全員がそれに納得。
だから、ちょくちょくSSS級任務やSS級任務を「嫌だ」と断っている。
そうして、木の葉も徐々に進化し、力と知恵をつけてきたが…まだたりないのだ。
そのためには、どうしても《あれ》が必要なのだ。
人は、失敗や傷から学び、進化する生き物だから…
それから間もなくして、サクラが顔を上げる
「傷はこれで全部塞がりましたよ。」
「ありがとう。それはそうと、サクラ落ち着いてるね。ナルト君が浚われたのに」
「ああ、大丈夫じゃないですけど、大丈夫です」
おもに、私の怒りが大丈夫じゃない。けどナルトの方は大丈夫
そう言う彼女を見つめるカズキ。彼女の怒りに揺れている瞳ではあるが、真剣な眼差しに、ハッタリではない事に気づく。
サクラは懐からナルトに渡したお守りと瓜二つなお守りを出し、解! といい、封印を解いた。解かれた封印のお守りが形を変えた。そして、一枚の紙が出てきた。
「なっ! こ、この紙に書いてある術式は…!」
そこには、複雑に書かれたある一種の術式。じつは、数楽一族もよく知る術式で、一般人は才能か、それこそ血筋でなければ操れないような特別な術式だった。だからこそ、サクラがその術式を知っていることに、違和感を覚えていられなかった。
「ナルトが浚われる前に渡しておいたんです。」
フフフと言いながらサクラはカズキに言う。一方、カズキはまだ驚きの余波が残っており、固まっていた。
君は一体何者なんだと聞きたいのを我慢していると、サクラは紙を地面に置いた。
「準備はいいですかカズキさん?」
そこでやっとのことで、カズキの硬直が解けた。
「あ、ああ。いつでも」
それを聞きながら、サクラは印を組む。そして地面に置いたその紙の上にバン! と手を付け、声高らかに言った。
「口寄せの術・改!」
瞬間、煙が上がる。この時、カズキはこう思ったという
この子、将来良い意味で恐ろしい子になるかも…。いや、すでに恐ろしいけど。
しかし、その顔は恐れているものの顔でも無く、心配するものでもなく、ましてや悲しい顔でもない。とても楽しそうだった。そうこうしている内に煙が晴れてくる。
「ゴホゴホ! なんなんだぁ?」
そこにいたのは
「ナルトぉ!」
登場したナルトにバッと両手を広げダイブ。後ろに転げたナルトはキョロキョロと辺りを見回した。
「おわ! さ、サクラちゃん?! 俺ってば浚われたんじゃ?」
間違いなく、うずまきナルト本人が口寄せされていた。
「なるほど、契約しなくちゃいけない術式を改良して
こんなことに使えるようにしちゃうなんて…凄いねサクラ」
するとその言葉に当り前よ。と言いながら振り向くサクラ。彼女の機嫌が良くなっていた。怒りは消えたらしい。
「私はね、二度も失敗する女じゃないの。あの時のナルト浚われ事件で、身を削るようにして開発したのよ。ナルトにも私も他の皆にももう、あんな目には合ってほしくなかったから…」
カズハ、もとい、カズキの目は、その瞬間優しく細められ、静かに微笑した。
こうして、任務は続行することとなった。
一方その頃、敵アジトでは――…
「なぁにぃ?! 逃がしただと??!?」
「…申し訳ございません。『言霊縛り』を発動させていたため、人柱力の仕業ではない模様です。推測するに、木の葉の保険か、または、あの女、カズハが何かやらかしたかと…」
薄暗いその場所は息苦しいまでの殺気を放つ男によって支配されていた。そこにポツンと跪 いているもう一人の男。しかし、その殺気に男は慣れているのか微動だにしない。うっすらと笑みさえ浮かべている。
「ご心配はありません…そう易々と言霊縛りは解けません。この術がある限り、どこにいても追跡できます。」
その男の言葉に、その場の支配者はニヤリとうす笑った。
「チャンスはまだあると…なるほどな。さすがは只では倒れない男よ。いいだろう。あの人柱力の事はお前に任せよう。ククク。さてはて、一体どこまで守れるかな? 木の葉の愚か者たちよ」
そして、手を掲げながら自信たっぷりと、嫌な目つきをしながら支配者は己の欲望にしたる。
「もうすぐで…手に入る。クックック…」
跪いていた男は優雅に立ち上がり、手を胸元までよせ、お辞儀をした。
「わが主、夜見 様に栄光あれ」
夜見が二人の家来を下がらせ、そこにあった黄金の立派な椅子に座って高笑いを始めた頃に、下がった家来、先ほどの跪いていたボルサリーノを被った優雅な男は顔に影を落とし笑った。
「愚かな肥え太った豚め…そろそろ狩り時は近い…」
そこに、黒マントを羽織ったシルクハットの男、カズハをボロボロにした奴が横に並ぶ。
「奴は我々の裏切りに感づき始めている。事がでかくなる前に片づけなくてはならないのではないか?言文 」
「ああ…準備は怠ってない…心配せずともいつものように俺について来れば何も問題はない…なぁ、そうだろう? エニシ」
「ああ…そうだったな。いつもアンタのおかげで生き延びてこれた。これからも、俺の主はお前だ言文。」
そうして、二つの影も闇の中へと消えていった。
今の状況は本当にそんな感じで。
私がナルトから離れた隙に付け込まれるとは…!不覚!!なんたる失態!!
…と、自分を責めてる場合じゃなかった!!
早くカズハさんを見つけ出して傷の手当を…!!
~時をさかのぼる事一時間前~
「やーっと着いたってばよ!!目的地!!」
パシャ!
「到着スマイルナルト写真もゲットだしゃーんなろー!!」
「サクラ、後でコピーお願いね」
火影の命により、カズハ、サクラは
ナルトと共に長期間任務へと旅立ったのであった。
さて、その目的地とは…
「だ、団子屋…」
「あら、どうしたのチビヒマ? お団子好きでしょ?」
「そうよ、ナルト。せっかく火影さまが気を使って…」
「いや、そうじゃなくって、目的地ってここなのか?!ヨレヨレの今にも潰れそうな
このオンボロ団子屋が俺達の目的地なのか?!」
「「そうだけど?」」
「見事にハモッたってばよ…」
ナルトは期待していたのだ。
外へ特別任務(本当はナルトを休ませるため)を火影から
直々に言い渡され、一体どんな任務なのだろうと期待を膨らませていた。
お姫様の護衛?
盗賊をこらしめる?
抜け忍の討伐??
しかし、着いたのは見るも可哀想なオンボロお団子屋…
「じいちゃんの友人の頼みって言うからしかたなく(大喜び)で来たのに…」
「なぁんだ。やっぱりナルトには何も言ってなかったのね。
火影さまったらシャイなんだからv」
「シャイじゃないと思うってばよサクラちゃん…」
「あのエロジジイのことだから、本当の事を言うワケ無いと思ってたけどね。「思ってたんだネェちゃん…何気に酷くね?」チビヒマ、今回の任務はあなたを休ませるためにワザワザ木の葉の里を思いっきり離れた
場所に位置する森の入り口に立ってるこのお店を選んだのよ?」
「ええぇ?! なにそれ、つまんねぇよ!! じいちゃんの気の使い方っておかしくねぇ?! 何だよこのボロボロ??!!
俺、すっげぇ期待してたのに!!!」
「まぁ、それは置いといて「置いとかねぇでくれよ姉ちゃん!!
俺にとっては一大事だってばよ?!」…う~ん…ちょっとボロボロになりすぎじゃないかなぁ? どう思うサクラ?」
「スルーされたってばよ…」
「そうですね…この前、偵察しに来た時は、ここまでボロボロじゃなかったと。それに、この柱の裏側、焦げ目からしても火遁だと思われます。」
「偵察にここまで来た事あんのか二人とも?! ワザワザこんな遠いとこまで?! なんで?!」
とナルトがビックリしていると二人は顔を見合わせてから意気揚々と答えた。
「「ナルトの安全のためよ」」
そう、忘れた方もいると思うが、二人はナルトLOVEなのだ。それもカナリ。
ナルトのためなら火の中、水の中。と言った所だろう。
二人してキッパリと言われたために、金髪の子は何かを諦め、ため息を吐いた。
二人にはかなわねぇってば。
さて、先ほどのサクラの発言から彼女カズハは状況を整理し始めた。
ふむ、と言いながらお団子屋を見る。
「招かれざる客がいるみたいね…」
そうポツンと呟いた後に彼女は凄まじい勢いで
クナイをある場所に向かって投げつけた。
カキーーーーン
なにか別の鉄のような物がカズハの投げたクナイを弾いた。
「出てきなさい! そこにいるのは分かってるのよ!!」
そう言った瞬間に聞こえてくるのは
“クククク…”という笑い声。そして途端に目の前が暗くなる。
「久しいなカズハ…あの時お前が与えた傷が疼くから
会いに来たぞ…」
現れたのは黒マントを羽織ったシルクハットの男。
モノクルをかけ、チョビッとしたひげをさすりながら
顔に大きな傷のあるその男はフフフと笑う。
「…ウザ」
対するカズハは文字通りウザそうな顔をした。一刀両断のごとく冷たい目で睨む。そんな彼女を見ても鼻で笑うだけの敵。
「相変わらず紳士(ジェントルマン)の事が分かってないようだな」
「じぇんとるまん?? アンタが?? 笑わせないでよ
その言葉にピクッと彼の眉毛が動いた。
そんなことお構いなしにカズハは人差し指をビシッと自称ジェントルマンに向ける。
「私にはちっとも紳士な態度とってないじゃないの」
「それは愚問だ」
黒いシルクハットを頭からとり、もう片方の手で
何やら手をマジシャンのように動かす。
「君は忍者で敵で、俺の顔に躊躇なく傷をつけたから君に対してレディのように扱う分けがない。ていうかこの傷のおかげで高感度だだ下がりじゃボケどうしてくれんだこの天邪鬼」
「え? しらなーい。あんたは元からモテなかったじゃないの。他人のせいにしないでいただきたいわー迷惑だから。」
彼はシルクハットからマジシャンの杖をブチマークを頭に出しながら出現させた。
「悪いけど、あんたのトリックは見抜いてるの。今更効きはしないわよそんなエセマジック」
呆れた風味であざ笑うカズハに相手はさらに笑った。
「俺がこの十年間、何もしていなかったとでも思ってるのか」
「何をしても無駄だからそういってるのよ」
「クククク…ご心配無用。さて、ここで質問だ」
帽子をかぶりながら杖を振る。
「木の葉の中で奪われた超極秘一族の超極秘暗号ファイル…誰の仕業だと思う??」
途端にカズハの余裕の笑みが崩れ、顔色が悪くなり、顔をしかめた。
「まさか…」
「そう、そのまさかだ」
そう相手が話し終わった途端にカズハは血を噴き出して倒れた。
彼女の体には無数のクナイや千本、刀が刺さっていた。
「カズハさん!」
「カズハ姉ちゃん!!」
「ククク…お前ら数楽一族の弱点見切ったり。次は…誰かな??」
先ほどまで紳士だった顔は今は醜くゆがんで笑っている。
「さく…ら」
「カズハさん! 「くるな!」で、でも…」
カズハはゆっくりと立ち上がった。そしてスマイル。
「痛くもかゆくもねーよ」
「ほうぅ。まだそんな余力がねぇ。」
口の端が切れ、血が流れながらもナルト達へと振り向いた
「こいつの相手は俺がするから、お前たちは任務続行のため、火影さまのご友人が非難されたところへ行け。Aの65番地のGだ。暗号は得意だったよなサクラ。今のわかるよな。」
何故か勇ましく恰好よく、男前で口調も男口調。
「え…カズハさん?」
「いいから、いけ」
指図されるまま彼女はナルトを引っ張る
「いくわよ。」
「で、でも!」
「大丈夫。少し行ったら私が引き返すから。ナルトは任務続行して。お願いよ」
そして、ポケットからお守りを取り出した。
「それを肌身離さず持ってて。必ず役に立つから。いい?絶対に失くさないでね」
コクリと頷くナルトを合図に作戦を開始した。
木から木へと飛び移り、しばらくたってからサクラとナルトは離れた。
のが、いけなかった。
先ほどの黒マントの仲間なのだろう。黒いスーツを着こなし、ボルサリーノを頭にかぶった青年が難しそうな顔をして現れ…あっという間にナルトを掻っ攫ってしまったのだった。
ナルトも抵抗しようとしたがいきなり文字が浮かび体の自由を奪ってしまったのだった。先ほどの似非紳士も現れ不気味に笑いながらマントを勢いよく振り上げ、姿を消してしまったのだった。
そして今に当たる。
「あいつら最初からナルト君が狙いだったのか」
傷だらけのカズハがそこに現れた。しかし、いつもと様子が違う。その違いに、結構敏感なサクラが怪しがった。
「貴方…誰」
サクラは後ろに現れたカズハから少し距離を置きながらクナイを構える。防御体制に移っていた。
「まいったな…姉さんのこと分かる人がナルト君の他にも居たなんてね」
そのカズハは疲れたような、しかしまったりとした雰囲気に優しそうなほんわかとした笑いを見せた。
カズハだったら、到底見せないような表情。ますます怪しい。
「今の俺はカズハであって、カズハじゃない。でも、片割れみたいなもの」
「どういうことよ」
「姉さん…つまり、カズハには双子の弟が居るんだ。それが今の俺っていう分け。いきなり交換したからさっき反動でダメージ受けちゃって、口調が乱暴になっちゃったけど今はちゃんと安定しているから。」
「え? じゃあ、もしかして貴方があの噂に聞くカズキさん?」
「よくわかったね。そうだよ。数楽一族の双子しか使えない『精神交換』を行った数楽カズキです。」
「『精神交換??』それって、中身が入れ替わるって意味ですか?」
「うん。そうそう。賢いねぇ。」
「でも、どうしてそんなことする必要が…」
そこでサクラはハッと何かに気が付いた。
もしかしたら、意図的にそうしたのではなく、《そうするしか》できなかった…?
カズキの方を見れば、少し困ったような顔で微笑んでいた。
「姉さんは精神攻撃を受けたんだ。俺たち数楽一族が特殊な技の一族でもあるけど、限られた攻撃にめっぽう弱いんだ」
それが今さっき彼が使った『ピクトグラム』という技
「でも、おかしいな…この技は俺らと敵対する
「え? 奴らはその文字一族じゃないってことですか?」
「あいつらは違うよ。紳士を気取ってるけど本性はどす黒いし、魔法使い(ウィザード)だっていうけど、どうだかね。昔はトリックありありの強敵だったけど姉さんに敗れて落ちぶれてたはずだったんだ」
「もう一人のボルサリーノを被った人は仲間でしょうか?」
「もう一人?」
そこでカズキは顔色を変えた
「ボルサリーノを被ってたって?!」
「は、はい…」
大きく溜息をし、長い髪が風で揺れる。今のカズハの顔でカズキは眉間にしわを寄せていた。
「なるほどね…あいつが動き出したってこと…こりゃやっかいな出来事が起きるぞ…」
何か、とてつもないことが始まろうとしている…
「カズキさん、とりあえず傷の手当てしますから。身体はカズハさんのだし。」
「ああ、うん。宜しく。」
しかし、改めて思うと究極の一族を一瞬でここまで傷つけてしまう文字一族もそうだが、数楽一族とはいったい何なのだろうか?
「あの、カズキさん、聞いてもいいですか?」
「うん。いいよ。俺たちのことについてだろ?」
「え…どうして分かって…」
すると、優しくホンワカとクスリとしかし、困ったように笑うカズハの顔のカズキ。
「サクラは顔に出し過ぎだよ。」
そういうとこ、嫌いじゃないし可愛いけど
「こういう戦闘や敵がいつ襲ってくるか分からない所ではもう少しそこらへんに気を配った方がいいよ」
「…」
「サクラ? どうしたの? いきなり固まっちゃって」
咄嗟にサクラは顔をうつ伏せた。
「…っな、何でもないです。」
「そう? ならいいけど。」
「アドバイスありがとうございました。」
カズキはあまり答えられないけれど、と言いながら、数楽一族のことをサクラに話し始めた。
「単刀直入にいうと俺たちは計算や数字を楽に使える一族なんだ」
「数字…ですか?」
「そ。」
昔は一族なんてそれほどでもなかった。ただ、計算が得意なくらいで忍者でも何でもなかったんだ。
それがある日、ある出来事がきっかけで能力に目覚めてしまった。それこそ、多くの忍びから恐れられるくらいに。
でも、反対にその恐れは一部で興味を持たれ、多くの仲間たちが浚われ実験として使われ殺されていった。
それでも秘密を知ることは出来なくて…そこで、ある一族に任務として協力してもらうことにした。
それが文字一族。彼らもある出来事がきっかけで一種の進化を遂げたらしくて、こちらはすでに公にしていたから、追われることもなくなったんだと聞いた。
しかも、奴らは文字を巧みに使って俺たちを追い詰める。
意を決して、数楽一族は木の葉に助けを求めた。
秘密を公にしないこと、火影だけが知ることを許すこと。そして木の葉を絶対に守ることと、その代わりに、こちらの身や身内には絶対自由を与える事を課程に木の葉と契約をした。
それが木の葉とのなれ合いの始まり。
初代からずっと木の葉とともにここに俺たちはいるってわけだ。
「残念ながら、これから先は言えないんだ。ごめんねサクラ」
「いいですよ。ただの下忍にここまで話してくれたんですし」
「…ただの下忍ねぇ…」
そうだとは、とても思えないんだけどなぁ…
カズキは思った。彼女はきっと、並大抵の努力をしてココに居るわけではないと。さらにそれを超えて彼女はやっと、ここまでこれたのだと。
彼女の戦闘力と機転を利かす速さと、頭の回転が恐ろしく速いという事は、火影様からいただいた資料に載っていたので知ってはいたが…目の前でそれを見るのとでは違った。
彼女は確実にとびっきりの才能を持っている。しかもそれは幾つも折り重なっていて…一つや二つではないのだ。計りえない潜在能力を持っている。まぁ、それは他の下忍たちにも言えることだ。
もし…誰かが何かの拍子で彼らのその隠れている能力や力や才能を発掘し、育てたなら…
「木の葉は最強な里になるんじゃないかな」
「はい?」
「あ、いや。こっちの話。」
残念なのは、今の大人たちにはその適応力を持つものがいないという事。それらを育て上げる者達がいないのだ。
だから、彼らは独自で動かなければいけない。
(マコ姉さんだったらそれができるんだろうけど…)
彼は大きくため息をこぼす。
(今は木の葉にいないしなぁ)
そう。才能を伸ばし、発掘し、育て上げることが出来ていた上原マコ(数楽マコ)は、不幸なことに木の葉を長期間休業を火影に押し付け、ただ今10年間行方が知れていなかった。
火影は嘆いたが、残された一族のものは誰一人心配していなかった。何故なら…それこそがマコが木の葉に、火影に強いた試練的な何かであるからだ。
なにより、木の葉の忍びたちもそうだが、火影も暗部もなにもかも、数楽一族達に頼りすぎなのだ。それがもっとも危険で、木の葉の弱点にもなりうると悟ったマコ、そして一族全員がそれに納得。
だから、ちょくちょくSSS級任務やSS級任務を「嫌だ」と断っている。
そうして、木の葉も徐々に進化し、力と知恵をつけてきたが…まだたりないのだ。
そのためには、どうしても《あれ》が必要なのだ。
人は、失敗や傷から学び、進化する生き物だから…
それから間もなくして、サクラが顔を上げる
「傷はこれで全部塞がりましたよ。」
「ありがとう。それはそうと、サクラ落ち着いてるね。ナルト君が浚われたのに」
「ああ、大丈夫じゃないですけど、大丈夫です」
おもに、私の怒りが大丈夫じゃない。けどナルトの方は大丈夫
そう言う彼女を見つめるカズキ。彼女の怒りに揺れている瞳ではあるが、真剣な眼差しに、ハッタリではない事に気づく。
サクラは懐からナルトに渡したお守りと瓜二つなお守りを出し、解! といい、封印を解いた。解かれた封印のお守りが形を変えた。そして、一枚の紙が出てきた。
「なっ! こ、この紙に書いてある術式は…!」
そこには、複雑に書かれたある一種の術式。じつは、数楽一族もよく知る術式で、一般人は才能か、それこそ血筋でなければ操れないような特別な術式だった。だからこそ、サクラがその術式を知っていることに、違和感を覚えていられなかった。
「ナルトが浚われる前に渡しておいたんです。」
フフフと言いながらサクラはカズキに言う。一方、カズキはまだ驚きの余波が残っており、固まっていた。
君は一体何者なんだと聞きたいのを我慢していると、サクラは紙を地面に置いた。
「準備はいいですかカズキさん?」
そこでやっとのことで、カズキの硬直が解けた。
「あ、ああ。いつでも」
それを聞きながら、サクラは印を組む。そして地面に置いたその紙の上にバン! と手を付け、声高らかに言った。
「口寄せの術・改!」
瞬間、煙が上がる。この時、カズキはこう思ったという
この子、将来良い意味で恐ろしい子になるかも…。いや、すでに恐ろしいけど。
しかし、その顔は恐れているものの顔でも無く、心配するものでもなく、ましてや悲しい顔でもない。とても楽しそうだった。そうこうしている内に煙が晴れてくる。
「ゴホゴホ! なんなんだぁ?」
そこにいたのは
「ナルトぉ!」
登場したナルトにバッと両手を広げダイブ。後ろに転げたナルトはキョロキョロと辺りを見回した。
「おわ! さ、サクラちゃん?! 俺ってば浚われたんじゃ?」
間違いなく、うずまきナルト本人が口寄せされていた。
「なるほど、契約しなくちゃいけない術式を改良して
こんなことに使えるようにしちゃうなんて…凄いねサクラ」
するとその言葉に当り前よ。と言いながら振り向くサクラ。彼女の機嫌が良くなっていた。怒りは消えたらしい。
「私はね、二度も失敗する女じゃないの。あの時のナルト浚われ事件で、身を削るようにして開発したのよ。ナルトにも私も他の皆にももう、あんな目には合ってほしくなかったから…」
カズハ、もとい、カズキの目は、その瞬間優しく細められ、静かに微笑した。
こうして、任務は続行することとなった。
一方その頃、敵アジトでは――…
「なぁにぃ?! 逃がしただと??!?」
「…申し訳ございません。『言霊縛り』を発動させていたため、人柱力の仕業ではない模様です。推測するに、木の葉の保険か、または、あの女、カズハが何かやらかしたかと…」
薄暗いその場所は息苦しいまでの殺気を放つ男によって支配されていた。そこにポツンと
「ご心配はありません…そう易々と言霊縛りは解けません。この術がある限り、どこにいても追跡できます。」
その男の言葉に、その場の支配者はニヤリとうす笑った。
「チャンスはまだあると…なるほどな。さすがは只では倒れない男よ。いいだろう。あの人柱力の事はお前に任せよう。ククク。さてはて、一体どこまで守れるかな? 木の葉の愚か者たちよ」
そして、手を掲げながら自信たっぷりと、嫌な目つきをしながら支配者は己の欲望にしたる。
「もうすぐで…手に入る。クックック…」
跪いていた男は優雅に立ち上がり、手を胸元までよせ、お辞儀をした。
「わが主、
夜見が二人の家来を下がらせ、そこにあった黄金の立派な椅子に座って高笑いを始めた頃に、下がった家来、先ほどの跪いていたボルサリーノを被った優雅な男は顔に影を落とし笑った。
「愚かな肥え太った豚め…そろそろ狩り時は近い…」
そこに、黒マントを羽織ったシルクハットの男、カズハをボロボロにした奴が横に並ぶ。
「奴は我々の裏切りに感づき始めている。事がでかくなる前に片づけなくてはならないのではないか?
「ああ…準備は怠ってない…心配せずともいつものように俺について来れば何も問題はない…なぁ、そうだろう? エニシ」
「ああ…そうだったな。いつもアンタのおかげで生き延びてこれた。これからも、俺の主はお前だ言文。」
そうして、二つの影も闇の中へと消えていった。