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ナルトと愉快な仲間たち

「それじゃあ、今さっきの問題を解くに当たって必要とされる解読文の説明、いくぞー。」

今日も若くて美しい黒髪の上原マコ先生の声が教室中に響き渡る。

ただ今朝の十時半。忍術が教科に加わって以来二ヶ月がたった。それほど楽しい授業でもないが彼女の説明がとても上手く分かりやすいため居眠りしている奴なんて殆ど居ない。まぁ、担任が彼女だからという事もあるが…

居ないと言えば…あの濃い暑苦しい奴が居ない…ここ数日休んでいるようだ。おかしい。自分の命よりも大切だと思っている授業を休むなんて、彼らしくない。

ちらりとあいつの席を眺めてみると…悲惨な事になっていた。
色々な悪口が書かれた落書き。良く見ればあいつの座る椅子が若干ひび割れている。

なん何だ? 一体、奴の身に何が起こってる??

カカシはそう思うも何もせずに授業に専念していた。そんな時だ。教室のドアが荒々しく開かれたのは。

「すみません! マイト・ガイという子はこの教室に居ますか?!」

見れば息を切らした男と女が居た。女の方は色白で真っ直ぐ肩まで伸びた黒い髪で、男の方はガッツリとした体付きに少し大きめで眉毛が濃かった。凄く誰かさんに似ている。いや、絶対そうだろう。

「あれって、ガイの両親じゃね?」

ヒソヒソと皆が騒ぎ立てる中、カカシとカズキだけは大人達の会話に耳を傾けていた。

「もう、三日も姿を見てないんです!!」
「なんですって? 詳しくお話願いますか?」

カカシもカズキも心底驚いた。

休んでいたんじゃなかったのか? やはり、何かに巻き込まれたのか。おかしいとは思っていたんだ。あの授業馬鹿が学校を何日も休むなんて今までありえなかったから。一日も休んだことなどなかったから…

「姿を消す前、いつもいつもボーっとして…ここ二ヶ月で修行で大怪我するようにもなったし、骨折や体に痣が増えたりはもう、日常茶飯事でした…」

たしかにそうだ。修行をやるにしても限度を知らんのか? と思ったことがある。でも、それはいつもの事だと思って気にも留めなかったが。奴の身に何かが起こっていたことはもはや明確。

「一体どんな危険な修行をしているのだと聞いても、あいつは笑って“強くなるためにはコレくらいが普通だ”と言っていた。」

親に心配かけないようにしていたのか…自分で何とかしようという意思と決意があってのことだな…あいつ、体術だけはピカイチで俺も後れをとってたからな…

「おかしいと思ったんです。食事はあまり喉を通らなくなったし、アカデミーへ朝早く出かけるのに学校の方からは“お宅の子、また遅刻”と言う電話もここ最近で多くなりましたし…聞いても修行にめり込んでいて遅刻してしまうと言うばかりで…」

食事も喉を通らなくなった…? もしかして精神的にもダメージがあったという事か? という事は…

「…たしかに、ここ最近の彼は何かと怪我が凄くて体術の授業もロクに参加できない状態でした。授業中もボーとするようになって…分かりました。私を含めて数人の優秀な忍びに探させます。後々ご連絡しますので、貴方達は家にお戻りください。」

そう言うマコの表情は真剣だった。

なるほど…これはあくまで俺の推測だがガイは恐らく虐めにあっていた…それもかなりの重度の行き過ぎた…だとしたら…

「何々? 誘拐??」
「それとも家出か?」
「とうとう可笑しくなっちまったか?」

教室が騒ぐ中、二人の生徒は静かにマコ先生を見つめていた。そう。彼女ならもうすでに彼の身に何が起きているだろうことくらい安易に想像できる。カカシとカズキもそうだった。

彼らは人手不足のさいに、任務をこなすヘルプ役。優秀な二人だったため、もうすでに上忍となりうる資格はあった。ただ、マコの計らいで二人ともクラスで授業を受けさせ卒業させることになったのだった。

二人の実力を知るマコだから、そして自分のクラスの子達を自分の子のように大切に、時に厳しくする彼女だからこそ、カカシもカズキも浮いた存在にならず、また大いに二人の実力と才能をすくすく育て上げてくれるから…

この先生ならばきっと、さきほどからうずうずしてたまらないカカシとカズキの正義感にきっと気づいているだろうから…

「皆、静かに!」

そう言いながらマコが手をパン! と叩くとシュっと現れた一人の人間に皆言葉を失った。
そう、暗部だ。

「火影様に連絡してちょうだい。私の可愛い教え子、マイト・ガイが行方不明だから、私とカズキとカカシは今から彼を探しに行くって。授業は大体やったし、自習にして後は適当な時間帯で帰らせて。あと、ガイを見つけたら後にしばらく偵察用の暗部をつけてやって。頼んだわよ?」
「御意。」

そしてまたもシュッと消えていった。そして、彼女は無言でカカシとカズキのほうを見つめ、ニヤリと微笑む。そして、ついてこいと合図。

「反論は無いわよね? 二人とも。」
「ないです。」
「ないですね。」

命令されなくとも、勝手に行くつもりだったしね。とは言わないでおく。

「頼りにしてるわよ? 失望させないでね?」

そんなニヤリとまた笑うマコの黒い笑顔を合図に、三人はガイを探すために教室の窓から消えていった。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

「?」

暗い森の奥でガイは目を覚ました。

「ああ、そうか…俺まだここに…」

そう言いながら自分と木を縛り付けている鎖を睨む。

三日前だった。いつものようにアカデミーへ行く道のりの最中にあの集団が居た。タップリと痛めつけられて黙っているガイじゃない。

最近でそうとう力をつけ、返り討ちにしてからと言うもの、めっきり手出ししなくなったのだが、今回は一味違うらしい。ガイを囲む彼らの手には色んな武器があった。

しばらく体術で相手をし、頬に掠り傷を付けられただけで殆ど無傷。
そのままアカデミーへ行こうと足を動かした時だ。体が痺れ始めた。
そして地面へダウン。

「まさか…毒?!」

頬に傷を付けられた時だろう。あのクナイに仕込まれていたんだ。

「その通りだ。」

そう言いながら十人近くの奴等が立ち上がり、持っていた鎖でガイをグルグル巻きにした。その後は首に衝撃を感じて意識を手放したのだった。

目を覚ませばいつかの森の中の、一番デカイ木に鎖で巻かれ、手と足には手錠がはめられた状態だった。
そして、三日間そいつらのストレス解消にいぶられ、殴られ続けられていた。

何とか外そうとしても鎖は外れない上に傷ついた肌を擦ってしまい、さらに悪化させた。何日も飲まず食わずで体に力も入らないし、声も叫び続けて喉がカラカラになってしまった。

もう、自分一人じゃあどうすることも出来ない状態に居る事を思い知らされた。

ただ、それだけじゃ諦めないのがこのマイト・ガイな分けで。この三日間、彼はある特殊な修行を行なっていたのだった。
それはチャクラコントロール。手錠と鎖目掛けて自分のチャクラを流す修行だ。

始めはうまく行かないどころかあまりにも無理な課題でチャクラ系がジンジン痛み出したり、集中が途切れて木の横で小さな爆発がおこり、火傷してしまったりだったが、諦めずに今まで習った事、修行した事の経験からコツを掴み、チャクラをその鎖と手錠に流し込めるようになった。

次に彼がやるのはそのチャクラを細い糸状にして絡ませると言うもの。これにより、今度攻撃を仕掛けようとするものが来たならば…
そう思っていると現れた。昨日より二人増えてるがいじめっ子集団に間違いない。

「うわ。本当だ。珍獣が捕まってる。」
「おいおい、ボロボロだぜ? 死ぬんじゃねーの?」

そう言いつつも笑ってやがる。

「さ、始めようぜ?」

その一言で始まる悲劇。
だが、今回ばかりは…

「違う。ぜ?」

一通り攻撃を食らって口から血を吐き出すガイが…笑った。
この気配は…そうか、彼らが―――…

その瞬間、草むらから三人の影が現れた。

「…ほう。君らがいたぶりこねくり回したのね?」

黒いオーラを背負ったマコに。

「露骨だな。ガイより劣る下種だ。」

と睨むカズキ。

「おい、ガイ。大丈夫か?」

と振り向くカカシ。

続け様に二人も振り向いた。
そして…ガイのその哀れな姿に息を呑んだ。

無理も無い。彼は少し痩せ細くなって、顔色も悪く服もボロボロ。あちこちに痣や傷が何とも生々しく、顔は所々腫れ上がっていた。口からは血が出ていると言うのに、彼は笑っていたのだ。

「助けに来てくれたのか。」

ニッコリと笑うガイに先に反応したのはマコだった。

「あら、元気そうじゃない。これから何をおっぱじめる気だったの?」

すると今度はガイだけじゃなくカカシやカズキまでもが驚いた。

「先生、何を言ってるんですか?」

カカシが問えばニッコリと笑うマコ。

「いいわ。この戦い、あなたに譲る。ただしね、危ないと感じたときには手をだすからね?」

その言葉により、分かりましたと笑うガイ。
さすが、この先生はあなどれないな…

マコはガイが何かをやらかそうと企んでいた事を一瞬にして見抜いてしまったのだった。

「行くわよ。彼の戦いを見物しましょ?」

なぜか気持ち穏やかじゃなかったが、カカシとカズキはすごすごと横へずれる。とその瞬間いじめっ子集団をにらめつける。
終わったら覚悟しろと言わんばかりに。それを見て幾人かが震え上がった。

「おい、どうすんだよ?」
「ばれたぜ?」

ザワザワと焦ったようにしていた奴等だったが、その中のリーダーらしき者が声を張り上げた。

「うるせえよ。グダグダ言うな。もうバレちまったからには、隠さずあいつをミンチにするぞ。もしかしたらあいつより強いと認められるかもしれない。」

その一言で全員やる気を見せた。一声に駆けて行き武器を振り上げる。
見ている二人が前へ出ようと体をかがませた時だ。皆の武器が重なるような音がした。

そして次に皆の動きが止まり、武器だけが宙に浮いている。その武器が、驚いているいじめっ子集団全員に襲い掛かる。
その瞬間、全員が驚き逃げ惑う中、その中央に鎖が解けた状態のガイがペタンと地面に座った。

カカシはいち早くガイの下へ駆けつけた。

「おい、ガイ。大丈夫か?」
「ああ、断然平気だ!」

そう言うも力なく地面へなだれ込むガイをスンでの所で受け止めたマコ先生はおまけに彼の頭へ拳をお見舞いした。

「コレは無茶を通り越した貴方への罰。」

そして、そこらへんにはガタガタと震えるいじめっ子集団。
ニコリと、マコとカカシとカズキが笑った。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

早速ガイは木の葉病院へ入院、両親にも連絡を取り、いじめっ子達をかわいーく、指導教室へ案内して(一週間も姿を現せなくなったらしい。)から、幾日が過ぎ、三人はガイの病室へと行く。

その病室で安らかに眠っているガイ。
カズキがマコへ疑問を持ちかけた。

「ね、どうしてあんな芸当、ガイ君は出来たの?」
「お! ガイ君に興味を持ったか!」
「俺も不思議に思います。あれは一体どういう仕組みだったんですか?」

そう言いながら今はスヤスヤと寝ているガイを見る。思い出すのは、いじめっ子達の武器が、鎖やガイの体に触れた瞬間、武器が主の手元を離れ、宙に浮き、さらにあいつらを攻撃したときのこと。

一瞬の出来事で、流石の二人も見極めなかった。

フフフと笑いながらマコはそーかそーかぁ。二人ともガイ君が出来て、意味不でちょっぴり悔しいかぁ。といいつつ、コレも授業の一旦ね♪ と続け、ガイの手を指差す。

「ガイ君の手元を見ると、幾つもの小さい火傷と赤い点々がみえるでしょう?」
「見える。」
「これは?」
「チャクラを恐ろしくコントロールして合わない道具にチャクラを通した結果よ。」

カカシは考え込んだ。

なるほど。授業でそんなのを習ったな。あれはたしか、傀儡人形の授業で…尚且つあの時つかえそうなのは…チャクラの糸か…? ということは、ガイのやつ、それを応用して…?

おいおい、どんな奇想天外な発想だよ。

もともと、傀儡人形を操るための重要なチャクラの糸は術者の集中と繊細なチャクラコントロールが必勝で、それらが欠けると術者に多大なダメージを及ぼすものだろう?

それを、このガイが? あ、できそう。けっこう真面目に授業聞いてて、修行も欠かさないような奴だったし。

へぇ~。チャクラの糸をねぇ。

「それじゃあ、チャクラの糸を使ってあの鎖と手錠に絡ませたの?」

どうやら、カズキも同じことを考えていたらしい。

「その通りよカズキ! 彼はね、捕まってる間、道具無しの状態であいつらをやっつけるために努力をしたのよ。」

そのため経絡系、チャクラ系が酷く傷ついてるためしばらくの間は授業に出られないだろうし、箸一つも持てないような痺れが発生するとの事だ。

「普通ならさ、諦めてたよね…」
「ああ。こいつは最後まで諦めずに、次に何をすべきか考えて行動してたんだ。」
「そうね。並大抵の痛みじゃなかったと思うわよ?」

そして教え子達の頭をポンポンと叩き一言。

「それに比べるとカカシ君は直ぐ諦めちゃう所があるからね。」

その言葉に苦笑うカカシ。

「ガイくんを高く評価してるんだね。姉さん。」
「そうねー。頑張る子は私大好きよ。もちろんカズキもよ?」

そうかぁ、俺にはその諦めない覚悟がないんだなぁ
そうカカシは思いながら先ほどのカズキとマコの会話にん? と疑問を持った。

「姉ちゃん??」

そう聞き返すカカシに二人とも首を傾げる。

「カズキ、お前っ…もしかして…マコ先生って…」
「あれ? 言ってなかったっけ?? この人、俺の姉ちゃん。」

そう言ってニコリと笑う。

「え? だって苗字違う…」
「ああ、元々の苗字が数楽なのよ。私結婚したから夫の苗字貰ったってわけ。」

そうウインクして二人してニコヤカに笑うのを見てカカシは少し震えていた。

すうらく…だと?! あの一族の出だったのかマコ先生って?!

そして、安堵のような、そうでないようなため息。

全ての謎が解けたような気がする。火影でも黙認するしかできない一族で、暗部にも命令でき、出たくない任務はことごとく断り、しかし木の葉の危機に何度も救世主となって救ってきた一族。

たしかにこの人の弟であれば何でもアリそうで怖い。
そしてガイの方を見た。

とんでもない奴が側にいたもんだ。
なぁ? ガイ。お前がよくなったら…

そう、きっと…

きっともう大丈夫。君は強い。夢へ向かって行けるだろう。

空が夕日色に染まるのを清々しく眺める。
次に目を覚ましたのなら…

きっとその日は気分が晴れやかで素敵な眩しい晴天だろう。
闇はもうどこにも…無い。
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