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ナルトと愉快な仲間たち

「実を言うとナルト君には、予知夢という、不思議な能力が備わっているらしくて、生まれたときからすでに幾つか、見ていたらしいんです。」
「予知夢って…まさか、あの?」
「うん。未来のことを、先に夢に見ることだってば」

イルカは、頭を抱えたくなった。

「俺と彼が出会ったのは、彼が変化をして旅をしている途中でした。不治の病に侵されていて、倒れてしまっていた俺を運んで看病してくれたのも、彼でした。」

イルカは待ったをかけた。頭の中を整理するのに少し時間がかかるからだ。それを承知の二人は大人しく待ってくれている。
しばらくしてから、イルカが問うた。

「色々聞きたいことは山ほどあるが…まず、一番わからないのはナルト、お前だ。」

その目は冷たいものでも、怯えている目でもない、純粋に真実を追い求める目。その力強い目はナルトが好きな目でもある。

「いくらでも質問してくれってばよ」
「じゃあ、遠慮なく聞くけど」
「うん」
「里にいたお前と、今のお前の気配が、なんて言うか…少し違うものに感じ取れるんだが…これは「気のせいじゃないってばよ?」そ、そうなのか」

ナルトは、紙と筆ペンを持ちながら、スラスラ何かを書いていく。

「分かりやすく説明するとな…俺が生まれたときまで遡らなきゃいけないんだけど…火影も知らない事実も混ざっているし、カズハ姉ちゃんの一族がおもに色々知ってるなぁ。この後出会うだろうから、その時に説明するけどさ。」

スラスラと、紙に色々書いていく。イルカはジッと待っていた。

「…今言えることは、俺らが生まれたとき、超ピンチになったんだけどサ、母ちゃんの紅いブレスレットが輝いてさ、カズハ姉ちゃんが現れたんだ。数楽一族のみんなは知っててワザとそうなるように計算してたみたいだなぁ。で、助けてくれたみたいで」

何を言っているのかサッパリだ。
だが、そんなことはお構いなしにナルトは、書いた紙をイルカに見せた。

「まぁ、大体はこんな感じ。もちろん、“あっちの俺”も事情は知ってっし、なにより姉ちゃんもいるし、ああ、シカマルもいるから絶対大丈夫」

何がシカマルもいるから大丈夫なのだろうか…というより、あっちの俺とは、どういうことなのだろうか。駄目だ。どう考えても混乱するばかりだ。

イルカは一旦深呼吸をして気持ちを落ち着かせ、頭を冷やす。

そして、紙に書かれていることを読み始めた。途中、ええ?! やウソだろ…などの呟きが聞こえてきた。百面相をしでかすイルカの顔が可笑しくてナルトもだがあのイタチまでもが肩を震わせるほどだった。

そして、しばらくして、ため息がイルカから零れ、真剣な眼差しのままポツリと呟く

「…驚く事ばかりだけど…」

イルカは紙に目を通しながら続けた。

「すべては、第四次忍界大戦を阻止するためなんだな」

目線を紙から二人に戻したイルカはため息をまたする。

「まったく…とんだ未来だな…でも、それを阻止するためにお前は動いているんだな?」
「うん。だから、まずは世界を周らなきゃいけなかったんだ。旅の途中でイタチと出会うこともわかってたし、多少ズレはあったけどなんとかなった。」

ズズ―…とお茶を飲んでから、ナルトは茶菓子であるカステラをほうばる。

「それに、すべて先のことを夢で見るわけじゃないし、本当に阻止できるかわからなくて、途方にくれたときもあった。少し先の出来事が分かったところで、阻止する方法まで誰かが教えてくれるわけじゃないしさ。」

ナルトはイルカに渡した紙を受け取りながらため息をこぼす。紙は彼の手元で勝手に灰になった。

「最初は本当に大変だったってばよ。里を出るか出ないか決めるのも大変だったけど、一人で世界を周るのはやっぱし、きつくってさ。どうしたもんかなーって考えながら寝たら、精神世界に入っちゃってさ。」

そこで、九尾と初めて対面して…まぁ、最初は色々聞いちまって煩いって追い出されたけど、日を追うごとに諦めずに会話していたら、いつのまにか仲良くなっててな。力を貸してくれるって言ってくれたんだってばよ。

九尾は俺のことを警戒してて、人間を憎んで恨んでもいたのに、俺のためだったら、惜しまなく手伝うって言ってくれたんだ。俺、もう嬉しくって。

で、色々巻物とか資料とか調べて、術を色々開発してさ。その一つがコレ

そういいながら素早く印を結んだナルトの肩に。
煙とともに現れたのは、ぬいぐるみの中くらいサイズの赤い身体で九本の尾を持つ

「きゅ、きゅうび?!」
「うん。あ、名前は九喇嘛くらまっていうから、先生もそう呼んでくれな。こいつは俺の親友で相棒だからさ。」

無邪気に笑うナルトと、照れくさそうにそっぽを向く九喇嘛。
それを見て、イルカは安堵しながら優しいまなざしでそこにいる皆を見つめた。

そうか…お前はもうこんなに立派な忍びになってたのか。

「でも、ナルト。お前はいつ里を出たんだ?」
「ああ、7歳の時だってばよ。」

それを聞いてイルカは一人納得した。

「そうか…そういえばその頃からだったな。妙な違和感を感じたのは」

でも、と続けるイルカ

「火影様は知っているんだな?」
「うん、大体は」
「大体は?」
「だって知ったらさ、色々ややこしくなるから、一部分偽ってるってば」
「じゃあ、なおさら何故俺にすべてを話したんだ? 少ししか力を貸せないような俺なのに」

その、少し謙遜気味の、イルカをみてイタチは微笑した

「それほどに、貴方はナルト君に気に入られて、大切にされているんですよ」

大切な人には話しずらいけれど、話すことを決意したナルトくんは並半端な覚悟ではなかったんですよ。
そう話すイタチを見て、ナルトが照れくさそうに頬をかく。

「イタチ…」

キミも、ナルトの影響で変わったんだな。
そう思いながらイルカは微笑した。

「そろそろ時間ですね。」

いいながらイタチは立ち上がる。素早いスピードで印を組んだ。

「マーキングしたところまで俺が送ります。その後は貴方も今後の準備をしつつ、そ知らぬ顔で過ごしてくだされば、こちらで事が捗ります。」

だが、一向に難しい顔をし続けるイルカを見ながらイタチはどうしたんですか? と聞くと、イルカはそのままの顔で聞いてきた

「イタチは…不治の病を患っていたと聞いたけど、それは」
「…」

イタチは目を伏せた。

「こればっかりは…誰もどうすることも出来ないでしょう。ナルト君の旅の途中出会った仲間に治療をほどこしてもらっていますので、前よりは、ずいぶんと身体が軽く、発作もあまり起こらなくなりました。それだけでも俺は感謝しているんです。それに…」

イタチはナルトと九喇嘛を見つめた

「里を抜けたときに、もう出来ないであろうと覚悟した親友とも言えるべき恩人が出来たのですから、これ以上は贅沢は言いません」

たとえ、他の者達より死期が早くても…

「より多くの命を救えることができるのなら、それで満足です」
「そうか」

彼の覚悟は並半かなものではない。そう感じたイルカはもう何も言わず、頑張れという代わりに肩に手を置いた。そして、にっこりと笑った。
その彼の清々しい笑顔に釣られて、イタチも僅かながらに微笑した。

そして、間も無くしてイルカとイタチが煙を立てて消えていた。

『おい、ナルト』
「なんだよ九喇嘛?」
『予知夢なんてウソよく思いついたな。というより、よくあの善の塊の恩師といえる存在にウソつけたな』
「…しかたねーじゃん。他に言い訳見つけられなかったし。胸が痛んだけどさぁ。今のイルカ先生にも頑張ってもらわなくちゃ作戦がオジャンになるかもしれねぇんだ」
『それより、あんなチグハグな説明で納得したあいつもあいつだと思うぞ』
「無理やり納得した感があったけど…」
『あれがカカシとか言う奴だったら何かに気づいていたな』
「だから、カカシ先生じゃなくってイルカ先生にしたんだってばよ。イルカ先生優しいもん。空気読めるし…」

そして、背伸びをするナルト

「さてと。これからが忙しくなるってば!!」

朝日を浴びる金髪はキラキラ光っていて眩しくて、九喇嘛は目を細めた

『世界をひっくり返してでも皆をできるだけ救う。さてはて。どこまでできるか見物だな』

九喇嘛はニヤニヤと笑った。
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