このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

ナルトと愉快な仲間たち

「ふー…これで一通り終わったかなぁ。」

もはや誰もいなくなった教室で、イルカは一人残り、後片付けをしていた。

「さてと…後はこの書類を火影さまに提出して、それから職員室に戻って明日の授業の準備と…」

あ、そうだ。

「時間を作っておきたいから、一応明日の提出する書類を作って、三日後の下忍サバイバルの授業の作戦とルールも早めに製作しておくか。」

ゆっくり数楽さんとは話したいからなぁ。

「せっかくナルトが作ってくれた機会なんだ。無駄にはしたくないからな」

実を言うと、イルカがナルトにカズハを呼んでくれと頼んだわけではなかった。さらに言えばナルトが何かを言いたそうにしていたイルカを見て、問いただした。

「え? 何かいいたい事があるのかって?」
「うん。だって、イルカ先生ってばいっつも姉ちゃんの事見て、でもいいにくそうで…一体何を言いたいんだってばよ?」

ナルトがそう聞けば、イルカは顔の傷をポリポリとかいた。困ったような、嬉しいような、照れているような顔だ。

うわぁ…こんな可愛い仕草のイルカ先生みた事なかったってばよ…

「いやな? 昔…彼女にな…会った事があるんだ…本人は忘れているみたいで…まぁ、別に大した事じゃないからだと思うけど…なんだかなぁ。忘れられているのかぁ。と思ったら…何故だか無性に…」

急にショボンと落ち込む

「寂しくなっちゃってな…ああ、俺はやっぱり彼女にとってそれだけの人間なんだなぁって。」
「それだけって?」
「そこらへんにいる、通行人Aのような彼女にはなんの意味も成さない存在」

ええええ?! い、イルカ先生?! なにその…寂しそうな微笑??

ナルトは雷が落ちたかのように、驚いた後に胸に手を置き、ギュッと握り締め、うっと唸った。

「大丈夫かナルト? どこか痛むのか?」

本気で心配してくるその顔や仕草にさらにグランと眩暈がしたような感覚になったが、気を取り直した。さすがナルトである。

俺のハート射抜いてどうすんだってばよっ?! 俺のを射抜くくらいなら好きな奴のハートを射抜けよっ!

心の中で突っ込みをしながらナルトははっとした。そしておずおずとイルカへ手を上げながら質問する。

「…つかぬことをお聞きしますが」
「ナルト? なんで敬語??」
「イルカ先生は姉ちゃんの事、どう思っているんだってばよ」
「…どうって…」

そして今に当たる。ナルトが一生懸命もうけてくれたカズハとの話合いというか、デートというか…
それをオジャンにはしたくないと、一生懸命明日に支障がないように色々と仕事を片付けていた。

ちょうどイルカが火影に一通り書類を提出し、一度家へと戻り私服に着替えてカズハを迎えにいこうとしたときだった。

「うみのイルカだな?」
「え?」

後ろを振り向くまもなく、彼は首筋に微かな衝撃を感じて、そしてブラックアウト。そのまま地面に倒れた。

「…本当に彼でいいのか?」

倒れたイルカを抱えあげながら、マントを被った男が、もう片方に問うた。

「うん…イルカ先生がいいんだ。一番最初に知ってもらいたい。」
「なぜ、こんな平々凡々な彼なんだ?」
「…イルカ先生だけが、大人達の中で唯一俺を認めて、俺を俺として…人として扱ってくれたから」

その、感謝深い眼差しに、相方は一つため息をこぼしたが、その顔は微笑していた。

「…まぁ、カズハ姉ちゃんにはワリィけど」

そういいながらマントを深く被りなおす

「一時期、借りていくってばよ?」

すべてを静かに見つめているカラスに微笑を返しながら呟いた。
その瞬間、カラスが飛び立つ

「…火影か…いいのか?」
「うん。一応報告しなくちゃいけないと思ってたから、丁度いいってば」

そして、名残惜しそうに木の葉の街並みを見つめる

「…守るために…俺は絶対ここに戻ってくるから…そう、約束したよな?あと…少しだから、もう少し、頑張ってほしいってばよ」

いいつつ、二つの影はもう一人を抱えたまま、そこから消えた。
一方、火影亭では…

「…予想外のことが起きおった…」

一人、ヒルゼンが頭を抱えながらどうやってカズハに説明しようか悩み始めていた。丁度その時、荒々しく火影室のドアが開かれる。

そこに立つのは先ほどまでヒルゼンの悩みの種だったカズハで、彼女の放つ空気が異様に荒くドス黒い事に、多分気配で殆ど把握して悟ったヒルゼン。

「三代目火影、猿飛ヒルゼンさま」

ご丁寧にフルネームで呼ぶ時、それほどまでに怒りを抑えながら必死に落ち着こうとしている状況下なのだと、火影は知っていた。
ゆえに怖い。今まで刻み付けられた恐怖という名の正義の鉄槌が体の奥深く刻み込まれている。

三代目火影、今まで一体なにしでかしてきた?

「な、なんじゃ?」
「お聞きしたいことが…あるのですが…」

ゴクリと生唾を飲むヒルゼン。
嵐の前の静けさとはこういうことなんじゃろな。

そう考えながら、チャクラを練って一応、体中を強化した。
何が起きても良いように。

「一体、全体、どういうことですか?!」

机を叩く音が室内に響き渡った。

「“あの子”がここにきた気配がしたと思ったらそのすぐ横に“あいつ”の気配がしたと思ったらうみのイルカ先生の気配があっというまに消えたんですけど、どういうことですかこれは?!」

いっきに捲くし立てたカズハを、やれやれといいながらため息をしたヒルゼン。

「まぁ、カズハ。落ち着くんじゃ」
「これが落ち着いていられますかっ?!」

もう一度カズハの容赦ない“叩き”が炸裂。火影の机はその攻撃に耐えた。が、ミシリと悲痛な音がした。

三代目がヤバイと感じた。

「気持ちは分かる。だが落ち着け。ワシもあまり状況は分かってはおらんが…あの子のことじゃ。なにか考えがあってのことじゃろう。」
「それにしてもどうしてあの子がイルカ先生を…?」
「…さぁな。ただ、分かることは…あの子はなにか大きな事を成し遂げようと頑張っている。という事くらいじゃ。」

はたと、静けさを取り戻したカズハを見ると、脱力しながら、ため息を吐いている所だった。

チャクラ練りぞんだったかの。

ヒルゼンは苦笑した。
いつもの事の様に繰り広げられるカズハの恐怖振り撒き事件。いつも周りを巻き込んで酷い目に合わせるので、状況反射で防御をとる形になってしまった己に苦笑した。

火影の名が聞いて呆れる。

「失礼します…」

入れ替えに、カカシが入っていくのをカズハはぼんやりと眺めていた。
“あの子”はいつだってそうだった。いつも一人で抱え込んでは苦しんで、そして

「どっかへ行ってしまう。まったく、そんな所なんて両親に似なくてよかったのに」

カツカツとその場を離れていこうとしたカズハは、足を返した。
そしてまたもや乱暴に火影のドアを開け放ち、今度はにっこりと不気味に微笑む

「あ…か、カズハさん。どうも」
「どうも」

何を思ったかいきなり何も言わずグイっとカカシの首根っこを掴んでズルズル引きずっていく。

「え、ちょちょちょ…! なにすんですかあんた!!」

カカシが抵抗という名の暴れをするも、ギロリと睨んだ彼女の凄みに大人しくなった。
逆らうと痛い目を見るだけではすまなさそうだと、長年の感がいっていた。

「カカシ上忍を借りていきますんで。いいでしょ火影さま?」
「好きにせい」

あ、俺…いま火影様に、安全確保のために売られた。

と、カカシは直感した。なぜならその瞬間に張り詰めていた火影の顔が安堵で崩壊したからだった。

あ~よかった。これで一応暴れられずにすむ…という心の声が聞こえたような気もした。

彼女がこんな風に突飛に行動に移すときはかならず彼女にとって護りたいものがある時だ。彼女が護るものは少ないようで多いが、冷静さを失わず行動するのが毎回のパターンだが…今回は焦っているようにも見える。
と、いうことは…

「ナルトになにかあったんですか?」

そのカカシの質問に悔しそうに笑うカズハ。

「うーん。半分当たってるかなぁ。」

半分?? どういう事だろうか

「あと、俺は一体どこにつれていかれるんでしょうか…」

その質問にカズハはフフフと笑った。

「憂さ晴らしに、私の修行手伝ってもらおうと思ってね…」

その笑顔は黒く淀んだオーラを放ち、顔に影を落としとても迫力ある顔だったという。

「大丈夫よ。イルカ先生が帰ってくるまでの暇つぶしという名の修行だから」

貴方の言う修行はハンパないのですが

その言葉をカカシは一生懸命飲み込んだ。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*


「ん…」

ふっと、意識が浮上したイルカ。背伸びをした後、久しぶりによく寝たなぁとボーっとしていたが…自分の寝ていた場所が見知らぬ和室だったことにより、ガバリと起き上がりながら辺りを見回した。

たしか…自分はカズハを迎えに行こうとして…私服に着替えてアパートを降りた途端に…誰かに気絶させられたんだった。

どうして、誰が、なんのために。イルカは疑問に満ちた頭を、焦りだした自分を制御しながら、周りに誰かいないか気配を探ってみる。
人は殆どいないらしかった。というより、まったく感じられない。拘束されてはいないことから、人攫いではないし、敵の襲撃ではないことも伺えた。

恐る恐る立ち上がり、和室を出る。鍵はかかっていない。となると、他里の襲撃でもないことが理解できた。
気配を消しながら長い廊下を歩いていく。すると、話し声が聞こえてきた。気配を探ってみる。すると、イルカは目を見開いた。

この気配は…!

イルカは思わず駆け出して、庭へと繋がるだろうドアを開いた。

「あ! イルカ先生!! おはよう!!」
「お目覚めですね。気分はどうですか?」

え、ひょっとして一日すっかりきっかり寝てしまったのか俺は? て、そうじゃなくって!!
イルカはどこかへ行きそうだった思考を元に戻し、そこにいる二人に目線を送った。

そこには、にっこり満面の笑顔のよく知る金髪でブルーの瞳の少年と、一族を皆殺しにし、里から抜けた抜け忍がそこにいた。

「な、ナルト…に、うちはイタチ…?! え? ど、どういうことだ?!」

うろたえながらも、警戒しながら情報を聞きだそうとしながら、しかし、教え子を怯えさせないように殺気を抑えるイルカを見て、イタチもナルトも感心した。

「さすが、俺が認めた先生だってばよ!」
「たしかに、只者ではない先生だ。ナルト君の言った通りだ。頼りになりそうだな」

なぜ、木の葉がもっとも警戒すべき危ない人物が、木の葉がもっとも忌み嫌う子供と一緒に楽しそうに会話に花を咲かせながら茶を啜っているのかが分からない。わからない。

しかも、ただの中忍の、平々凡々などこにでもいるアカデミーの先生をここまで連れてきたことも分からない。ワカラナイ。

一体何が起こっているんだ?! と、混乱しそうになる頭を必死に落ち着かせながら、イルカはナルトを見た。

どこかが、違う…

イルカは先ほどから、そう感じてしかたがない。
それを感じ取ったのか、ナルトが困ったように微笑した。

「ハハ…ごめんなイルカ先生。いきなりでびっくりしたんだよな。でもさでもさ、俺は正真正銘、うずまきナルトだってばよ? で、こっちは正真正銘サスケの兄貴のイタチ。実を言うとさぁ」

イタチが新しく淹れてきた茶をイルカに勧めながらナルトははにかむような笑顔で二人を見つめた

「俺ってば、今まで各地を旅していたんだってばよ。」
「…え?」
12/22ページ
スキ