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ナルトと愉快な仲間たち

忍びの世界は、早寝早起きである。街の人たちでも大抵がそうだ。
カズハはいつものように早起きし、忍具を磨いていた。そこへナルトの元気な声が聞こえてくる。

どうやら自分を探しているらしい。

うししとカズハは薄ら笑った。そこらへんに隠れてナルトを驚かせる、または罠を仕掛けてびっくりさせるか、ニヤニヤしながら悩んでいたが、今回は様子が少し変わってたので止めにして、すぐさま返事をした。

どうせいつものように、お気楽に過ごす&任務をこなすだけだろうとカズハは思っていた。
だがしかし、今回はそう簡単なものでもなかった。
もっとも、それは彼女にとってだが。

「はい?」
「だからー、イルカ先生から話があるから授業が終わった後、職員室に来てくれって、伝言頼まれたんだってば!」
「誰が」
「イルカ先生が」
「誰に」
「カズハねぇちゃんに」
「何を?」
「お話!! だぁ!! もうさっきから何なんだってばよ?!」
「いや、だって…あまりのありえなさに」

イルカ先生が私に話しがある??

アリエナイ。
何故有り得ないかって? だって、真面目で温厚で絵に描いたような良い先生のイルカが、何をどうしたら、その真反対の私にお話があるって?

そんなこんなしているうちに、もうすでに20分は経過している。

「チビヒマ、あんたまさか、また秘術をイルカ先生にぶちまけたんじゃないでしょうね?」

それでイルカから教育指導のために呼び出されたとか。

「昔は三代目に呼び出されては長々聞かされる、うんちく話に眠くなりそうになりながら大目玉を食らわされそうになったところを手加減なしで逆に食らわせてたわぁ。」

ああ、なつかし。

と、そんな黒歴史を聞かされながらも、怖気づかず、ナルトは大きく息を吸った

「あのなぁ! 最近は任務で忙しくて、イルカ先生にはまったく構ってなかったんだってばよ!」
「じゃあ、なにもやっていないのに、私は何故か彼に呼び出されていると?」
「うん」
「なんで?」
「だーかーらー!」

ナルトはまたもや大きく息を吸い込んだ。

「本人に聞けばいいだろ?!」

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

「…チビヒマにあそこまで言われちゃぁなぁ…」

カズハは唸りながら私服で街並みの中を歩いていた。とりあえずは、授業の後に来てくれと頼まれたので、適当に時間をつぶすことにした。
そういえば…とカズハはハタと気づく。

「街並み…ずいぶんと変わったのねぇ。」

自分がナルトの年くらいにはなかったお店や、本屋ができていた。げいむせんたぁなんて、一体誰が思いついたのだろうか。野球やサッカーなんて、何時ごろ出来たんだろう。

「昔はそんな余裕なかったものね…」

そう。昔は皆生きることに、生き延びる事に精一杯で、こういった私福の時間など無いに等しかった。

あるにはあったが、どれもシンプルで生き延びることに事欠かないものばかりで…そこに、オリジナリティやアイデンディティなど殆ど無かった。
人の喜ぶ姿やにっこり笑う顔なんて、見慣れない、見慣れなどしないだろうと思っていたのに。

「今やそれが、当たり前なのよね」

思えば日常は味気の無い毎日で、危険な日々だったにもかかわらずカズハはよく愚痴をこぼしていた。忍びの才能や運動神経に恵まれた彼女にとっては、すべてがつまらなかった。色が無かった。

彼女ほどの人材が在る時、子供であるにもかかわらず危険な任務につくことはよくある事だった。彼女もまた、それを当たり前だと、拒否することもなく淡々と任務をこなす毎日。

人手不足で戦争中はこんな事が当たり前。授業中でも彼女はよく火影みずからの命で指令を受け取り、クラスをでていき、任務の後はまだ一日が終わらずとも、そのまま帰宅していた。

どんなことにも無関心で、自由心や自己中心的な彼女は友もロクにつくれず、なんでも出来る、達成する力があるカズハは、クラスの中でも浮いた存在だった。

しかし、そんな代わり映えの無い味気ない彼女の世界が一変する。

「なにしてるってばね?」
「…え?」

静かに木漏れ日の下、青い空を眺めているときだった。自分の顔目いっぱいに、別の女子の顔が映った。

「近いんですケド」
「あ、ごめん。聞いてないのかと思って」

ゆっくりと離れていくその人物を見上げたままでは話しにくいと、人一番頭の回転が速いカズハは悟った。よいしょと上半身を起き上がらせ、木の幹に背をあずけた。

よく見れば、話しかけてきた女子は同じクラスのくの一で、真紅の髪を持つ『あの』うずまき一族だと分かった。
カズハも何度か影から刺客に狙われたこの子を助けたのだし、記憶力のいいカズハは忘れるわけがない。とくにあの紅い髪。

「うずまきさんが私に何か用でも?」

そう彼女が尋ねると目の前の真紅の髪の女子は目を見開きながら驚き固まった。

「な、なんで私がうずまき一族だってわかったってばね?!」

あ、まずい。まだ極秘だったっけ。

だがしかし。

「…刺客に狙われるくらいなんだし、公にしたほうがよくね?」
「へ?」

あ、まずい。

カズハは思考の中の言葉を思わず口に出していた。
口下手ではないカズハは、喋る能力は普通だったが、クラスでも浮かれている存在の彼女はまったくといっていいほど、お年頃の女子達と話をしたことがない。

話の趣旨がいまいち一致しなかったりする時がある。
話し相手はいつも双子の弟としかしないし…それに。

「あんたってさ、火影様に見張られてるんだよ」
「はいぃぃいいい?!」

彼女は説明もなしに爆発てきな台詞をぶちかましてしまったのである。
という事は何か? プライベートも覗かれてるのか??

「ああ、でも安心しなよ。プライベートで覗けないように工夫してるし。あの助平がどんな手段使おうが、無駄に大爆発起きるようにしてあるし。」

何気に怖いこと言ったよこの人。
 
「ほかげさまー。見てるんだったらもういいっしょ? 私めんどくせーから、全部はなしますわー」

と、一匹のカラス相手にカズハは喋った。
その場面を見て…真紅の彼女は…

あ、危ない人に話しかけちゃったってばね!!

と、己の行動の重さに今更気がついてしまった。ここはもう、理由をつけて逃げるしかない。そう結論した彼女は、あの…と言いそうになった。その瞬間だ。もっと驚きの瞬間が彼女を襲った。
火影様のヒルゼンが、そこにいたのである。

「…カズハ…なにをやってくれちゃったんだ」
「この先のことを計算したらこれがベストだと出たんです」

そのカズハの言葉に火影が驚き、そして何かを考え出した。

現在の状況に追いつけないでいたのは真紅の彼女一人だけで、火影とカズハというくの一は話を進めているようだった。
唯一分かったのは、カズハが只者じゃないということと、己のことをよく知るものだということだ。

だがしかし、気に入らない。

「そんなこと、あんたに言われなくても私が火影様に話そうとしていたことだってばね!」

かん高く声を張り上げて、怒りがこみ上げてくるままに黒髪の目の前の彼女を睨みつけた。

そもそも、彼女は天才だ。ゆえに、他の人を小ばかにしているような仕草がある。まるで、どうでも良いけど一応念のために。くらいしか思っていない。

だから彼女の周りに集まるものもいないし、必要としないから良いとまで考えているため、彼女はいつも独りなのだ。
彼女はそれでいいかもしれないが、クシナは良しとは思わなかった。だって、それはとても寂しい人の特徴だと分かっているから。

そのままにしておいたら、その人はフラリと態度を風のように変えて、敵か味方かも分からず、また何者にも執着しなければ、そのうち闇に染まることを、クシナは痛いほど知っていた。

だから、誰もやらないのならば、自分が第一歩を踏み出そう。そう決心して勇気を振り絞って近寄ったというのに。
気に入らない!

「火影様とどれだけ親身にしていようが、あんたがどれだけ強くて特別なのかもしったこっちゃないってばね!!」

今まで散々目にしてきた。彼女が授業中でも火影様直々にお呼び出しがかかり、そく任務へと直行することを。
知っているのだ。彼女が疲れきった表情で帰還し、そのまま寂しそうに家へ帰っていくのを。

だが、気に入らないものは気に入らないのだ。
そして、びっしぃ! と人差し指を彼女に向ける

「私のことは私がなんとかする。できなければ、その時誰かにお願いするってば。だから、あんたのその、『私が一応守らなければいけない』という私への認識を今すぐ改めなさい!!」

あまりの彼女の気迫にあっけにとられて火影とカズハは固まり、驚きすぎて目は見開かれたまま硬直。

「私が、あんたにいくらか劣ってても、見下されるなんて冗談じゃないっ! すぐに追い越してやるってばね!」

一通り叫んだ真紅の髪の子は、息をぜぇぜぇ言わせながらも、二人の反応を待っていた。そのうちの一人、カズハがおもむろに口を開く。

「あんた…名前は」
「え? う、うずまきクシナ」
「そう…私は数楽カズハ」

へ? 自己紹介?? 今更??

そう思いながらあっけにとられ、今度はクシナが動きを止めた。そして、カズハはというと、おもむろに立ち上がり、クシナへと歩み寄り…
満面の眩しい笑顔を見せた。

「気に入った。」
「へ?」
「ただ、守られるだけじゃない意気の良い女子。筋も通ってるし、なにより強い意志がある。気に入った。」

そして、懐から紅いブレスレットを出した

「これ、使うかどうかはクシナしだいよ。一応、素敵なプレゼント。貴女の素敵な髪とおそろい。」

そして、鼻歌を歌いながら森の中へと歩いていく。

「プレゼントって、なんで?!」

疑問に思ったクシナが問うと、返ってきた返事は

「今日、クシナ誕生日でしょ?」

森の中に消えていった漆黒の長髪のカズハを見てクシナは一言ポツリと零した。

「なんで知ってるの…」

クシナとの出会いは、こんな感じで始まったのだった。

「思えば、随分と生意気なガキだったわねぇ。私も。」

クシナがあの時啖呵を切って声を張り上げ、その真っ直ぐさを披露してくれたおかげで、楽しい時間も増え、色々学ぶこともあった。ゆえに言う親友となった。

「大切な…二人の内の一人だったのよ」

それなのに。

「あ、もうこんな時間ね。イルカ先生まだいるかな」

彼女の足取りは先ほどまでとは打って変わって軽かった。
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