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ナルトと愉快な仲間たち

明るめの長い金髪をポニーテールに結び、撫子柄のパジャマから普段着に着替え、溜息混じりに階段を下りていく。その薄い青い瞳のくノ一は台所に建つ前にいつもの日課である花達の世話へ行く。

色とりどりの花達を世話し、売り物に出せるような花は店の中心部へ移動させる。次に水をかけ、肥料もあげるのも忘れない。薔薇はいくつか植木鉢のまま、殆どは植木鉢なしの水だけのバケツに種類別にする。

適度に店の花達の世話が終わると今度は台所へ。いのの母さんは朝早くに病院へ行ってるし父は仕事で居ない。つまりはいのだけで全てやり通さなければならない。

元々母の手伝いで花の面倒はお手の物だし、料理も程ほどに出来るため困らないのだが…やはり全てをやるのは中々難しいし…

「シカマルじゃないけど面倒臭いのよね~…」

ハァと溜息一つしながらまた包丁を動かし始める。トントンとリズム良く鳴る包丁。シュウシュウと煙が上がる鍋。

「これが終わって朝ご飯食べたら…店を開店にして…母さんが帰ってきたら交代してもらって…」

食卓に自分のお皿を出しながら今日の一日の計画を練る。

「修行でもしようかな…」

そう言いながらお皿に今日の朝食を盛り付ける。味噌汁、アジのかば焼き、卵焼きとゴボウとショウガの漬物。そしてカマボコ。綺麗に盛り付けて満足しながらいのは朝食をすませていった。

小さい頃から心優しくもちょっぴり怖い母親と厳しくも自分には少し甘く心配性な父親を持ついの。二人は一般人と忍びと言う事柄で結婚。母親は花屋を経営。父親は忍び。

だが時々良い花の種を買ったり貰ったりしてショッチュウ妻を喜ばせている山中いのいち。その父の努力?の結果、『やまなか花』は結構有名な花屋になった。

店はそんなに広くない癖してどんな種類の花でも置いている。赤い花だけでも数が凄い。そして、どんな花でも美しく、香りが良く、どれも嬉しそうに元気良く咲いているため殆どの里の者がこの花達の虜になってるのである。

「他の里の人もうちで買ってくくらいだからなー。」

そう言いながら店のエプロンを着る。そしてその際にいのは木の葉のバンダナを必ず外すようにしている。
母曰く、店の時くらいは一般人としていろと。

「さて! 『やまなか花』開店!!」

一気にシャッターを開き次々と外に出す花たちを置いていく。

「スイー達はそろそろ外に出してあげるわねー。やっと咲いてくれたからその良い香りで色んな人誘ってねー。」

笑顔でスイーと名ずけた花、スイートアリッサムと喋りながら店のちょっと前に出す。じつはコレが『やまなか花』の綺麗な花の育て方。
「花たちとお喋りしてやると、とっても良い花を咲かせ良い香りが漂う」。母の教えなのだ。

「パンジー達はー、その可愛さで来る人を出迎えて。きっとまた買ってくれるからねー。ダイアンサス達は今日も大胆にかつ、綺麗にねー。」

そしてまた水をかけてあげる。いのは面倒くさいと言いつつ実は花の面倒を見るのが好きだ。花に囲まれるこの生活が、とても充実している。

カウンターに頬杖しながら客が来ない間、いのは思考に溺れる。このまま忍びとして皆と一緒に各地を回りながら任務をこなすのも良いが、母が提案した忍びを止めて花屋として働くのも悪くない。

父からは修行をしてもらえるし、花屋としても忍びとしても危機を逃れるような強さはあると思う。

しかし、まだ忍びとしていたいのは…何故だろうか。
花屋として過ごすのも好きだが…忍びとして母のいる里を守りたいとも思う。

「ごめんください。」

男の声が聞こえ、お客さんだといのが顔を上げる。

「いらっしゃいませー。」

慌ててカウンターから離れ花を見ている男の近くへ。

「どんな花をご所望ですかー?」

ニッコリと笑いながらミドリのタイツにオカッパ頭の眉毛が濃い、忍びらしい額宛をしているそいつに不振を持ちながら問いかける。

「ふむ。いや、花を見に来ただけでな。前から気にはなってたんだ。」

男は店全体を見渡す。そして感心したように「ほう」と言いながら微笑んだ。

「ここの花たちは元気があるな!種類も凄いし…どっかからか、仕入れてくるのか? 珍しい花もあるようだが。」
「ええ。父が仕事柄、色んな所へ出かけるので。母も知人達から珍しい花たちを仕入れてきますし、種類にはどの店にも負けてないと思います。」

ここで自分の父親の素性を教えないいのはなかなかである。
おかっぱ頭のその忍びの男は花を見ていたが、今度はいのを見つめ「ほう。」と言う。

「君はご両親が大好きなんだね。良いことだ。」

そして薔薇の入ったバケツに移動した。いのは少し変わったこのお客をポケっと眺めていた。今までそんな風に言ってくれた人など居なかったから。

「えーと、薔薇ならこのM-トワイライトブルーなんてどうでしょう? 淡く綺麗な青い薔薇はとても上品な感じがして贈り物には最適です。植木鉢のこのJ-キオクノカケラは黄色く、元気を分けてくれるような明るい気分になれます。また、こっちの…「すまんな。薔薇は少し苦手なんだ。」…そ、そうですか…」

少しシュンとしたいのを見て、ここの薔薇は好きだがね。と男は苦笑しながら付け足した。

「しかし、君は本当に花が好きなんだな。色んな事を知っている。」
「ええ。花は好きです。」

そしてまた、うーん、どれにししょうか…と言いながら店をあっちこっち移動し始めた。

「燃えるような、青春パワーが感じられるようなモノは無いのか?」

と振り向き様に聞かれ少し考える。えーと…そんなんあったっけ?

それじゃあ、ここは花言葉に頼るしかない。いのは決心をして、自分の知りうる限りの知識を持って、このお客に接することにした。

「花言葉で示したらこのアイリスなんか良いと思いますよー。「良き便り」「うれしい便り」「吉報」「愛」「あなたを大切にします」「私は燃えている」などです。」

そう言いながら植木鉢の一つを取り出す。

「また、こちらの…花ではありませんが、アオキ。一種の木でして、花言葉は若く美しくです。そして…」

一通り説明し、花を見せたがその男は今一と言った感じで「違うんだー」と呻きながら花を見ていた。そして、いのの説明と努力の甲斐もあってやっと見つけたらしい。

「じゃあ、今日はコレにしよう。」
「はい。分かりましたー。誰かに送るモノでしたらお包みいたしますが。ラッピングはお客様の好みでもお包みしますが、お任せコースもあります。いかがいたしましょうか?」
「ああ。じゃあ、そちらにまかせよう。」

まったく変な客だ。そう思いながらいのは選ばれた花をラッピングし始める。女性用らしいのでそれらしく可愛く、しかしシンプルに。選ばれた花は大輪で花びらは整っており、かつピンクの色なのでホワイトで透けるシートを選んだ。その上から黄色いシマシマのシート。そして黄色と白の中位のリボンを結び完成。

「ほう。中々良いセンスを持ってるじゃねーか。うん。」

見ればもう一人男の客が居た。

「あ、すみません。いらっしゃいませー。」
「おう。いらっしゃったぜ。うん。」

金髪の少し長い髪をたらし、いののラッピングした小さな花束を食い入るように見つめているそいつは、額宛はしていなかったが、体付きから普通の人ではないと言う事は一目見て分かる。

「いや、本当に良い仕上がりだ。ありがとう。」

そう言いながら緑のタイツ男が幾らだ? と問う。

「300両です。あ、お客様! 当店ではポイントカードと言うモノがあって、買って頂く度にポイントが溜まり、特別賞がもらえる仕組みになってます。お一ついかがですか?」

「ほう。その商品とは?」
「忍びの方でしたらこちらの図鑑に載ってるこの植物の種になります。」

そう言いながら一種の図鑑を見せる。そこに載っていたのは『シメシ草』。撫子の花と良く似ており、可愛らしい。

「ここから、花が咲けば使い時です。この花は特殊でして、握った相手のチャクラを分析して…風なら風、土なら土で、チャクラの威力を増幅させたり、相手を麻痺させる事も可能です。また、チャクラを通わせる事で鋭い刃物にもなったり…とにかくお得です。」

「それはまた凄い花だ。グットアイテムじゃないか! でも、商品はこれだけ?」
「いえ、それは三番目のポイントの位置にあります。他のもありまして…」

結局ポイントカード登録することとなった。店に居た二人の男が。

「えーと…木の葉の上忍マイト・ガイさん…コレが忍び特殊カードです。チャクラを流し込んで溜まったポイント数が見れますので。」

そしてハイ。と花束を渡した。それを受け取り、すぐさまガイはいのにその花束を渡す。

「あの…お客様?」
「コレは始めから君にあげようと思ってたのだ。素直に受け取りたまえ。」
「ええ? で、でも…」
「実は君に聞きたいことがあってな。」

人差し指を真っ直ぐいのへ向けるガイ。

「いのは誰か気になる人、ついつい思ってしまう人がいないかな?」
「い、いますが…」
「その人を思うと無性に会いたくなったり、切なくなったりしないか?」

するけど…でも…。そう言いながらうつ伏せてしまうポニーテールの子。
浮かぶは面倒臭がりやの無愛想な顔の同じ班の男の子。面倒臭い、やりたくねぇ。などと言っても最終的には必ず手を貸してくれる優しい男の子。

「恋だな。うん。」
「そう思いますか貴方も! 俺もそう思う。それでだな。良ければ俺が後押ししてあげようと思うんだが…どうだ? 俺と一緒に熱く木霊するそのスピリットでその子にアタックしてみないか?!」

「余計なお世話じゃないか? うん。」
「青春とは後押しされて突っ走るものだとおもうんですが!」
「いや、おいらに言われてもな…うん。」

黄色と黒色の二人が話している間、いのは少し困惑しながら言われた事、感じていることを整理していた。

恋…私が…シカマルを?
あの無愛想で、ナルトだけしか見えてない
バカで…アホな奴のことが…好き?

思い出すは同じ班になってばかりの頃。男の子達に弱いと見られたくなくて見栄を張りながらお姉さん面していたが、ある日の子犬探しの任務で崖から落ちそうになった時があった。途中の岩の出っ張りに片手で掴んで何とか持ちこたえたが直ぐに力尽きて落ちてしまった。

気がつけば辺りは暗くなっており、崖を上ろうと立てば、痛さで座り込んだ。足は捻挫したらしく青赤く腫れ上がっており、体もだるい事から熱も出ているだろうと推測できた。体が上手く動かないのなら、動かさない方が良い。助けを待つことにした。

暗い森の中。

夜に徘徊する獣の呻き声。フクロウの鳴き声…虫達が騒がしく声を張り上げてるその音を聞いて不安な気持ちを打ち消すように膝を抱えながらいのは歌を歌った。歌詞も無いただのリズムを口ずさむだけ。
だが、何もないよりは幾らかマシ。音を出していれば大概の動物達はそこを避けて通ると、授業で習ったからだった。

それでも、焦りや不安は消えてくれなかった。体は段々重たくなり、息も上がる。意識が朦朧としてきた。

大丈夫、大丈夫…シカマルたちが異変に気づいて探しに来てくれるはず…だから、大丈夫よいの…

いのは、気休め程度だったが、それでも自分自身に根拠のない可能性があると、だから大丈夫だといってきかせた。そうでもしないと、意識が跳んでしまいそうで…不安に押しつぶされそうで…

そんな時だ。その森に潜んでいた巨体の熊のような猫のようなパンダのような生き物がいのの目の前に現れたのだ。

そいつは好戦的でいのを見つけるとスグサマ重いパンチを仕掛けてきた。何とかクナイを取り出し、地面に突き刺して体の軸を横にズラし、その攻撃をかろうじてモロに食らわないようにした。

こんな状態でも避けた私グッジョブぅうう!!

足が痛く、体も重く意識も定まっていなかったが何とか避ける事には成功。しかし、また次の攻撃が彼女を襲う。

「しつこいな…」
「グワァァアアア!!」
「そっちがその気ならこっちだって…!」

今度はクナイを突き出しそいつの力を利用。思った通りにクナイはそのままそいつの掌に突き刺さり、痛さで呻きだした。その隙を突いて逃げ出すために腫れ上がった足に鞭を打ち無理やりその場から走り出した。

しかし、遠くへ逃げる事はできず…仕方がなく近くの岩の裏へ。

「タオルで冷やしてるけど…ヤバイじゃないのよ…」

一人ポツンと言いながら痛さとダルサといつ襲われるか分からない不安とも戦ういの。しかし意識は霞む。

そして、腹に衝撃が入った。

「う…」

さっきの獣がいのに攻撃したのだ。何時の間に…そう思うも、声も出なければ体はもはや動かない。地面に倒れ咳き込む。

やばい。殺される。そう思いながら迫る獣の足を見ていた。まるでスローモーション。ゆっくり、ゆっくりといのの目の前に毛むくじゃらな足が来る―――…

そして、スンでの所で体が浮いたかのような感覚に陥った。

スト…と獣の後ろで着地した音が聞こえた。

「シカ…マル…?」
「よう。遅くなった。」

心臓の鼓動が耳もとまで聞こえる。苦しかった息がもっと苦しくなり、熱のせいで赤くなっていた顔にもっと熱が送られる。

ボフッ!

いのの顔から煙が上がったのには理由があった。ただ今シカマルにお姫様抱っこされているのである。そしていつも無愛想な顔は月夜に照らされてるためか、はたまた意識が定まってないからかは分からないが、彼は今もの凄く凛々しかった。

彼の横顔は月夜の光と影具合に妙な男の色香を漂わせ、見惚れるほどの威力だ。これが、あのシカマルなの…? といのが熱に浮かされた頭で必死になって回答を探しているほどだ。

「足が腫れ上がってるな。体も熱い。息も上がってる。目が潤んでることから意識もギリギリだな。」

そう言いながら獣から離れた木にいのを移動させ、薬草で出来た薬を塗り、そして印を組み結界をいのの周りに出現させた。

「待ってろ。直ぐ終わらせてやっから。」

そう言いながら少し心配しながら笑いかける様はあの父のよう。ニヒルにそしてどことなく強気に。何かを護ると決心したその背中は力強くそして何よりも格好良かった。

ヤバイ。格好いい…多分、サスケ君よりも…
おかしいよ。なんでそんなに格好いいのよ…
私、もうワケわかんないよ…熱のせいかなぁ…

それから先はシカマルが獣を見つけ出し、そいつ目掛けて横へその巨体を蹴り飛ばした。

ズシぃぃぃぃイン…

地鳴りみたいな音が聞こえた。勿論、あの獣が倒れた音だ。

「俺のチームメイトに手ぇ出しやがったこと、後悔させてやるよ…」

彼がそう静かに語ると同時にジャンプし、月明かりに照らされながら、怪物へと渾身の一撃をぶちかましたのだった。

意識はギリギリまでつなげていたいのだったが、限界が近かった。そこへ、シカマルが手を伸ばしおでこに触れてきた。もちろん、怪物はKOである。

「熱、あがっちまったな…でも、もう大丈夫だぞ」

その彼の声が柔らかくて
表情が優しげに微笑んで…

その後私は気絶し、目が覚めた頃はもう病院に居た。

そうか…あの日から私はシカマルの事…

「おや? 顔が赤くなったぞ? うん。」
「さては自覚したな?」

二人の男のお陰で胸のモヤモヤが分かったまでは良いが、何故か納得がいかない。悔しい。どうしてこんな奴等なんかに見破られなければならないんだ。

「余計なお世話よ!!」

その言葉に二人はポカンとしてしまう。

「では、俺の手伝いはイラナイ…と?」
「そうは言ってないわ。勿論、勝手に何かされるのは嫌よ。出来るだけ一人でやってみたいの。でも…」
「分かった。君が俺を必要としたなら、いつでも力を貸そう!!」
「はい…」

最後は小さくありがとうございましたと言い、ガイを見送った。

「えーと、随分話し込んですみません。御用は何でしょうか?」

と今更だがもう一人の若い男性に聞く。黄色い髪をなびかせながらそいつは花を見つめる。

「じゃあ、アスパラガスに、赤と紫のアネモネ、アマリリスを花束にしてくれ。送るものだからラッピングも宜しく。芸術的に飾ってくれ! うん。」

芸術的にねぇ…と変に思いながらもラッピングを始める。まず先にチェック柄の水色のシートでオブラートに包んだ後、赤いハートが散りまみれた白いペーパーシートをその上から包む。
その際に少しずらして可愛らしく二重に重ならず、またリボンもピンクで大き目のを使った。

それを見てそいつは大いに喜んでいた。

「これだ! コレこそが芸術!! 世の中の美を現すもの!! うん!! 大満足した! うん!」

満面の笑顔のそいつはお金を渡すと花束をいのに渡した。さっきのガイと全く同じ行動だ。

「え? お客様、これはどういう…」

ウインクしながら「少し考えればわかるぜ。うん。」と言いながら店の外へと去っていく。

残されたのは二つの花束と、ボーっとするいの。

「ただいまー! いの、帰ったわよ! 遅くなっちゃって御免ねー。」

そう言いながら帰ってきたのは母親だった。

「ん? いの?? どうしたの。顔赤いわよ? あら? その二つの花束…」

顔を覗き込む母親にハッとし、二つの花束を掲げながら駆け出したいの。

「お礼に花束もらったのー。部屋に生けて来るからお店頼んだよー。」

そして、付け足しで「朝ご飯は冷蔵庫の中」と言い、自分の部屋へと向かった。
その娘の挙動不審に目を細くし静かに笑った母。

「あらあら。もしかして告白されたのかしら? それとも好きな人が出来た??」

フフフ。さすが私の子。と言いながら何故か嬉しそうに鼻歌交じりに台所へと向かう。
さすがは母。先ほどの娘のほんのり染まった頬と二つの花束の花たちを見て瞬時に予想がついたと見える。その判断力と頭の回転の速さには目を見張るものがあった。

母、恐るべしである。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*

いのは、自分のベットに顔を埋めながら花瓶に生けた二つの花束を見ていた。

一つはあの金髪のやつ。アスパラガスに、赤と紫のアネモネ、アマリリス。花言葉は「私が勝つ」「敵を除く」「耐える恋」、「君を愛す」「アナタを信じて待つ」、そして最後が「素晴らしく美しい」。

ガイからはアザレアと言う花の束。花言葉は「愛される事を知った喜び。」

ガイのはきっと「恋が実ると良いね」と言う願いからだ。しかし、もう一人の金髪はどれもこれも告白としか思い用が無いものばかり。

つまりは彼はこう言いたかったのだろう「全ての敵を除き、私は必ず君のために勝つ。どんなに辛くても。誰かに恋をしていたとしても、君のために耐える。アナタを信じて待っている。君を愛している。僕は素晴らしく美しい君を愛する。」だ。

なん何だコレは。一体全体どうなってるのだ。
シカマルが好きだと自覚したその日の内に一人の男性から告白された。

「名前…たしか…」

デイダラって言ったっけ…必要も無いのにおいらは十六歳だ! うん! って言ってたっけ。

思いっきり顔を上げ、両腕を天井に突き出しながら大声で彼女は叫んだ

「どうしろって言うのよー!!」

顔が熱い。シカマルとデイダラの顔が交互に出てくる。
思わず枕を抱き、ベットに座り込んだいの。やっぱりまださっきのが信じられない。

「だ、大丈夫よ! 告白って言っても、直接言われた訳じゃないし…! だ、第一、私はシカマルが、す――…」
「? 俺がどうした?」

目の前にシカマルが居た…

「きゃああああああ!!!」

と叫びながら枕を思いっきりシカマルの顔にぶつけてしまったのだった。

「いきなり何すんだよいの!」

そう言いながら怒鳴ったシカマルは後ろを向いている彼女の肩を思いっきり掴んで振り向かせた。

「…い、いの? 何で泣いてんだ?」

顔を真っ赤にしながらポロポロと泣いてしまっているいのがいた。

「…私っ! …好きな人がいるの…! ヒック…」

突然のいのの告白に戸惑いながらもああ、と聞き返す。

「そいつにフラれたのか?」
「ううん。その人には…別の好きな人がいて…ヒック! 色々考えてたら…違う人から告白っぽいものを貰って…頭の中がグチャグチャで…」

「あ~…それで俺が急に現れてビックリして…」

シカマルは頭をかいた。そして困った顔をしていた。

しまった。なんて間の悪い時に現れちまったんだ俺は…

マダマダ泣き止みそうに無い金髪の少女の頭に手を乗せ撫でる。

「すまねぇな。いの。俺にはどうしようもねーけど…応援してるし、何かあったらおごってやったり話くらいは聞くぜ?」

「うん。」
「叶うといいな。」

その言葉を聞いて黙り込んでしまった。

私の好きな奴はあんたなのよ?!

と大声で言いそうだが思いとどまる。
そして大きな溜息一つして、この無愛想で優しい男の子にありがとと言い、また枕で殴った。

「なにすんだよ?!」
「レディーの部屋に勝手に上がりこんだ罰よ。」

そう言いながら先ほどよりは元気ないのの後姿を見て内心ホッとするシカマル。

ー俺には何もできないけど。愚痴や文句くらいは聞いてやるから。
そう思いながらいのと一緒に階段を下りていく。

だから、お前なんだよシカマル。いのの思い人は。
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