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ナルトと愉快な仲間たち

「それじゃあ、行って来るってばよ!!」

元気良く声高らかに嬉しそうに手を振り上げながら、黄色いお日様のような奴が見送りしてくれている他の子達に笑顔で言った。

「ねぇ、ナルト。こっち向いて。」
「ん?」

右のピンクの髪の少女が嬉しそうにナルトを振り向かせる。その手には既にカメラ。

パシャ!

「よしっ!『お出掛け笑顔ナルトその1』撮ったわ!」
「グッジョブ!サクラちゃん」

少女はやけに嬉しそうに鼻歌を歌う。

ナルトはと言うと苦笑いを浮かべていたが、ウキウキ気分がそれに勝ってすぐさま、はにかむ様に笑い出す。
良い歌が作れそうだってばよ。そんな事を考えながら空を見つめる蒼い瞳は一欠けらも不安など感じていない様子だ。

ナルトの左にいる気の強そうな黒い髪の女性が笑う。サクラちゃんは本当にナルトラブだねぇとか言っている。

そんな楽しそうな三人を見送った木の葉の下忍集、シカマル、チョウジ、いの、サスケ、そして上忍のまだ落ち込んでいるカカシ。皆は三人が見えなくなるまで門の前に立ち尽くした。

「ちっ。面倒くせー。」

ボリボリと頭をかきながらその場から去ろうとするメンドクサガリ屋のシカマルは、異様に殺気を放つ一人の少年に「まて」と呼び止められ、動かしていた足を止めた。

「何だよ。何か用か? サスケ。」
「ああ。ある。」

いつにも増してサスケの顔は眉間にしわを寄せ、不機嫌そうな顔は超を超えるほどになり、彼の周りからはドス黒い影が立ち込めていた。まるで今にもそのドス黒い感情が何か得体の知れない生物になって襲い掛かってきそうな勢いだった。

「…一つ聞くが。」

声さえも恐ろしく低く淀んでいた。

「お前…ナルトのなんなんだ?」

彼の目つきは射殺さんばかりにシカマルを見つめている。まるで正直に答えなければ許さんと言っているかのように。
しかし、そんな異様な殺気の中でもシカマルは平然とし、さも当たり前だと言わんばかりに、サスケへと振り返り答えた。

「幼馴染で親友で、木の葉の仲間だ。」

らしくもなく真剣に答えたシカマルの目をサスケが見つめる。
そんな異様な、らしくない真剣のシカマルと、変にシカマルを目の敵にしているサスケを交互に見つめた他の皆。

まさか、ここで言い争いを始める気ではないか。しかもそれがサスケのナルトへの意味が分からない嫉妬。別に付き合っているわけでもないし、双方ただの親友なだけである。

しかし、サスケには何か解せない事があるのだろう。
それに、シカマルのらしくない台詞や態度。一体、この場で何が起きているのか。何が起きろうとしているのか…皆目検討もつかない。

「…もっと他に何かあるだろ。」
「何かって何がだ?」
「…お前、ナルトの事そう言う目線で見てないだろ。友情を通り越してる気がする。」

この言葉を聞いたシカマルは目を丸くするほど驚き、そして観念したかのように両手を上げ肩をすくめた。

「やれやれだぜ…」

溜息混じりにサスケを見つめ返した。
てっきり、彼は否定すると誰もが思った。ナルトはああだし、いくら可愛くても、それなりに最強の忍びが彼をひっそりと護衛している。彼女相手にあの、三代目火影さえ、返り討ちにされるのだ。手出しするのなら、相当の力と覚悟と勇気が必要だろう。

ちなみに、三代目の行動は勇気うんぬんとはまったく関係ない。たんなる助平である。
それに、あの面倒くさがりが、そんな色恋沙汰に興味があるなど、とても想像できない。不可能の域だ。
しかし、続けられた言葉は以外にも皆の意表をつく事になった。

「いつ気づいた?」

その言葉に、サスケはやはりな。と呟く。そう。勘と洞察力のいいサスケは僅かな彼の行動を観察しただけで、真意にたどり着いてしまったのだ。

「今日だ。病室でのお前たちのやり取りの中、ナルトを見るお前の目を見て確信したんだ。」

サスケはなおも不機嫌そうだ。

「…んで?何でお前がそんなに気にスンだ?同じ班だからか?いや…きっと違うんだろうなぁ…お前、もしかしてナルトの事」

シカマルが言い終える前にサスケがストレートキックをシカマルの顔面に叩きつけてきた。

バシ!

しかし、シカマルは両腕でガードを成功させていたために、サスケは悔しそうに顔を歪ませた。

「…ちっ。」
「ちっ。じゃねぇだろ。いきなり何ケンカ吹っかけてきてるんだ?冗談通り越してるぜ。」

メンドクサそうにシカマルが溜息交じりに聞けば、ニヤリと黒い笑顔を見せたサスケ。目が笑ってない。

「…憂さ晴らしだ。気にすんな。」
「一応聞くが…何のだ」
「ナルトの事についてだ。」
「…思ってた通りか。お前もナルトの事が…」

またもシカマルが言い終える前にサスケはポジションをクルッと変え、もう一つの軸になってるはずの足を上げながらシカマルの頭にぶつけた。

ドカッ!

しかし、その場にシカマルは居なくて。サスケは地面を足で叩いただけに終わった。砂埃が舞う。

その時、カカシがおや? と呟いた。そして注意深く二人を観察し始めた。
今の蹴りは、下忍の中では褒めるに値する威力とスピードだった。鍛錬された体術、勘の鋭さ、洞察力が高くなければ、今のようなキレは出せなかったはず。

しかし…それを軽々避けるだと? とても下忍ができるレベルではないはず。それなのに、このシカマルはそれをいとも簡単にやってのけ、さらには殺気にも慣れていて…とてもじゃないが、シカマルのような面倒くさがりができるような荒業ではない。

たとえ、それが父親譲りの頭脳のおかげだとしても、それだけでは到底たどり着けないレベルまで、シカマルは行っているのだ。

これは見定めなければいけない。
カカシは上忍の顔をし始めた。

「だから、言い終える前に攻撃してくるなよ。メンドクセーやつだな。」

距離はあるものの、後ろから面倒臭そうに呟く言葉を聞いてサスケは驚き様に振り返る。
サスケは、結構気配や音に敏感だ。たとえ、それが下忍というレベルでも、たいしたレベルのものだ。だが、今さっきのシカマルは…
気配一つ感じなかった。
こいつ…できる。

そこから得られる確信は一つだけ。
こいつの強さは今に始まったものでもなく、自然と身に着けたものなんかではない。鍛錬し、経験し、鍛え上げた上での強さだ。
強い意志がなければ、きっとありえなかった…

「…てめぇ…アカデミーで実力隠してやがったな。」
「はぁ…そうだな。色々と面倒くさい事になるから適当に過ごしてた。」

呆れたように見つめてくるシカマルに腹が立ったサスケ。まるで『俺は上で、てめぇは下だ』と言われてるようで何だか悔しかった。そんな筈は盲等ないのだが。

甘く見ていた。

アカデミーの成績はドベのはずのナルトのちょい上だったから、あまり気にしていなかった。
そう言えば…こいつ…いつもやる気がなかったくせに…ナルトが苛められてると直ぐ助けに入ってたな…負けたところなんて見たことがなかった…

なるほど? そういう訳か…

「適当に皆の目を誤魔化す為、必要ないことや興味の無いことには首を突っ込まず、かつ、己の持つ力を隠してたって? まぁ、もともと面倒くさがり屋なのは本当らしいが…ナルトを助ける時だけ本気出してたって事か…」

その言葉に少しシカマルが反応した。眉毛がピクリと動いたのをサスケは見逃さなかった。

「『忍びは裏の裏を読め。』まさにその通りに活動してたわけだな? テストも授業も居眠りしてたくせにソコソコ合格点を貰い、下忍昇格試験でもまんまとクリア…つまり、てめぇは頭も切れる奴ってことだ。それもかなり。」

その推理が正しかったのか、シカマルのやる気ゼロで生気が感じられないような目が珍しく鋭く光っていたのを、その場の全員が見た。

なんて目をしてやがる…! あいつは紛れもなく…強い!

サスケが緊張したのをカカシは黙って見つめていた。

今まで己の力を隠していたシカマルも凄いが、それを見抜いてしまったサスケも中々にキレる。
ただ、サスケはきっとカカシや火影、カズハなどが知る、木の葉の里の危険な影の存在は知らないのだろう。だから、シカマルに『適当に皆の目を誤魔化す為』などと言っていた。

だが、コレは確信ではないが…恐らく、この下忍を名乗る晴香に実力が高いシカマルは…それを知っている…そして、来るべき戦いを、最悪な未来(ビジョン)を予想し、それを打ち砕くために動いていると、そう思わせられる。

もし、そうだとしたら…この子は…恐ろしい忍びになるだろう。
もちろん、良い意味で。

これも、愛が成せる技か…?

と、カカシは苦笑した。

「…驚いたな。」

両手をポッケに突っ込みながら口元を少し吊り上げる様は、普段のシカマルから見当もつかない仕草だった。
そう、まるで隠していた内面の一部を披露するかのように。

「…一族が死にさらしてから周りを見なくなったと思ったから、戦力外と判断してほっといたのによぅ。なぁ、サスケ。俺も一つ聞くんだけどよ。」

ふぅ。と一息吐いてからシカマルはサスケを見つめ返した。
途端に全身に衝撃が入る。足がガタガタ震える。背筋に悪寒が走る。

知ってる。この感覚を。一度味わった事がある。これは…

「殺気…」

しかも、密度が濃い…!

そのあまりの気迫さと、彼らの間の言い知らぬ只ならぬ空気に、そこにいた皆は、ただただ唖然と見守るしか無かった。カカシも例外ではなかった。
だが、カカシはまた別の部分でも唖然としていたのだった。
その理由は、今さっきのシカマルの台詞の中にある。

サスケの一族が滅んでから、サスケは腑抜けになった。そして、冷静に判断しなければならない真剣勝負の戦闘の場において、もっとも邪魔で危ない感情が『復讐』。
サスケは、復讐心を宿らせてしまったがゆえ、シカマルは戦力外とみなした…

その言葉が導くのは、先ほどのカカシの思考の、まさかの展開。
そう…今ので完全にカカシは気づいた。
シカマルは、ナルトを守るために、木の葉に巣くう、影を打破するための戦力になるもの達をアカデミーの頃から見定めていたのだ。

くっ! なんというナルト愛…! 勝てる気がしない!!

カカシは涙を滝のように流しながら、しかし、グッと拳を己へと寄せた。

でも、まだまだ負ける気もしないからね!!

そんなカカシを見て、皆は引いた。何この人、いきなり号泣してるんだけど。と。

「お前がナルトをどう思うかは、もう解った。だからあえて聞く。サスケ、お前は…」

その黒いようなシカマルの目が一瞬、茶色に輝いて見えたような気がした。

「…なにがあっても、ナルトを信じ、守り、側にいて助けられるか?」

一瞬、何を言っているのかも解らなかった。

風が吹く。木の葉が踊るように舞う。それはまるでステージに立ってワルツを踊るがごとく優雅に自由に。しかし、どこか寂しげに。

「…どう言う事だ?」
「…俺が心配なのは、お前がナルトの隣に居る事だ。サクラやカカシ先生を見てても大丈夫だって解る。だけどな、サスケ。」

何なのだろうか。このシカマルから自分へ放出される威圧感は。
まるで何か重大な事を知っているかのように…

「お前だけは…信用できねぇんだよ。」
「…俺が信用ならない?」
「ああ。お前の目を見てたら解る。復讐を諦めきれなくて、このままでいいのか解らずに途方にくれてる。そんな感じだ。」

だから、回りくどい言い方するなよ。と思うものの、何も言えなかったサスケは、下唇を噛んだ。

そう。シカマルの言ってる事は本当だ。復讐を諦めてナルト達の側にいたいと思う気持ちと、一人生き残った事に罪悪感があり、やはり復讐のために強くなろうとする気持ちとがぶつかり合って、とても不安定だった。

それを、コイツは俺の目を見ただけで…

「もしもの話だけどな…」

静かに語り始める相方に目だけを向けたサスケ。何だか複雑な顔をしている。

「もし、いつかお前がナルトより弱いと感じたら…お前は力を求めるだろ?そして誰かに勧誘されたとする。それが、三代目でも殺しきれないような敵からだとしたら…お前は、このまま里に残れる自信があるか?」

気まずそうにサスケは目を逸らした。そして俯く。

「里に残って木の葉の皆と共に、その影なる敵からナルトを守って、そして一緒に歩める覚悟はできてるのか?」

サスケは今、思考に溺れていた。

そうだ、もしこのままナルトや木の葉の里の皆と過ごしていって、自分が誰よりも弱いと感じたら?

きっと自分は焦ってしまう。
そして、取り返しの効かない事をしでかすかもしれない。
それで、もの凄く強い敵から勧誘されたら?
きっとその誘いに乗ってしまうのだろう。

己は精神的にもろい部分がある。きっと何もかも背負って生きるのが嫌になって、大切なモノを投げ出して強さを手に入れて全てを破壊しようとするかもしれない。

そうしたら、こいつらは―――ナルトはどうなるのだろう?
もしかしたらあいつ等は自分を殴ってでも、骨を折ってでも連れ戻そうとするかもしれない。

「俺が言いたいことはだな、もし復讐に生きる破目になったお前が居たとする、そしたら死んでも取り戻そうとする奴が現れるかもしれねぇ。一番辛い思いをすることになるのは復讐者じゃなく、お前を大切に想い、連れ戻そうとする奴等なんだよって話だ。」

実際にはそうなる可能性が高い。

「それがあいつだったら、どうするつもりだよ?」

シカマルの声は既に低く、重かった。

「ナルトだったら…泣き叫んで、血みどろになりながらお前を止めようとするぜ。あいつはそう言う奴だ。一度造った友情の輪は何が何でも掴み続ける。たとえ死ぬ事になろうとも。」

ふと、サスケは顔を上げた。彼は酷く驚いたような泣きそうな顔をしていた。

そうだ。あいつはそう言う奴だ…

そして思い出す。ナルトがさらわれた日。やっとの事で追いつき小屋を吹き飛ばしてみたのは…ナルトの血みどろ姿。とめどなく流れる涙。そして…

何かを諦め、絶望したような死んだような虚ろな瞳…
ギクリとした。正直言って、寿命が何年か縮まった。あいつのあんな顔を見るのは初めてで…いままでも、こうなったことがあったんだろうか。などと考えてしまうほどだった。

思えばアイツには何もなかった。誰も側に居なかった。
いつも誰かに睨まれ、暴行され…意味もなく嫌われ…

そんな中、やっと少しずつ仲間と呼べる奴等が出来て―――…

俺がアイツの元から放れて行ったら…
アイツは…どうなる。
もしかしたら…またあの時のような顔になるんじゃ?

「冗談じゃねぇ!」

頭を抱えていたサスケは、自分の手を下にブン! と振った。そして拳を作る。酷く汗を掻いていた。
今さっきの自分の思考の中、辿り着いた結末に、しかめっ面をした。そんなのは嫌だと単純に思った。理屈などではなく、たんに心が嫌だと、そんなのはあんまりだと。悲しいと叫んだのだ。

「てめぇの言いたいことは大体分かった。俺が精神的に不安定なのも認めてやるよ。いつ里を抜け出すかもわかんねぇよ。だから、『心配すんな。』なんて俺には言えねぇ。だけどな!」

震える体に活を入れる。真っ直ぐ顔を上げながらシカマルを直視するその黒い瞳は、いつかの自己紹介のときと同じく、揺るがない決心が灯っていた。
知られざる敵がなんだ。自分の不安定さがなんだ。

それがどーした。

全部ひっくるめて、一つの願いが俺にはある。

「ナルトだけには、ぜってぇにあんな顔、二度とさせねぇし、させる気もねぇよ!」

ナルトを守りたいという気持ちは、てめぇにだって負けやしねぇ!!

それに、あいつのあんな顔なんか、二度とさせてやるモンか。あいつはずっとヘラヘラ笑ってりゃあいいんだ。何者にも捕らえられず、自由に歌でも歌ってれば良い。それで世界をチャッチャと救っちまえば良いんだ。

拳を前に真っ直ぐに突き出して見せるサスケを見て、シカマルは少しづつ彼との距離を縮めていく。
その口元はフッと緩められ、弧を描いていて。

「その思いに嘘、偽りは無いんだな?」

改めて問われたその言葉に、力強くハキハキとサスケは答える。

「当たり前だ!!」

サスケの出した拳に自分の拳をコツンと当てながら、呆れたような安心したような顔を見せるシカマル。

サスケの目は揺るがない決心が宿り、その表情は先ほどの禍々しさはなく、真の戦い、守る物のものだとシカマルは感じた。それゆえの微笑だった。

戦力外とみなすにはまだ、早かったか…

「じゃあ、ナルトの側にいても大丈夫だと言う事を俺に見せて納得させてみろ。そうしたらお前の事、信用してやるよ。」

出した拳同士が離れる。

「ああ。必ず信用させてやる。」

今に見ていやがれ。

そう言わんばかりにサスケからは強い意志が感じられる。

これなら、もしかしたら大丈夫かもしれねーな。

そして、カカシのほうに目線を送る。すると、カカシはニコリと微笑んだ。

『後で話があるから、時間作ってね?』

そう、電波のようなものが送られ、苦笑しながらシカマルは次のようなことを考えた

(選択肢はないんだろ? カカシ先生。もう、俺が気づいてるって確信したんだろ)

『まぁね♪ あんな戦い見せられて隠し通せるだなんて、思ってなかったでしょ』

(…さすがは腐っても上忍っすね)

「ちょっと待て! 腐ってないから!! 俺は常識人でまだまだ現役だから!」

あまりにもなシカマルの発言(?)に、思わず声に発して叫んでしまったカカシを面白がって横目で見ながら軽くスルーしシカマルはその場を去っていく。それを追いかけるようにチョウジといのも小走りでシカマルの右と左にやってきた。

「シカマルってさ、時々あんな事言うよね。」
「あんな事って何だ? チョウジ。」
「まるで未来に何が起こるか解ってて何とかしようとする。みたいな。」

そこへ、いのが少し笑いながら言う。

「違うわよチョウジ。シカマルって、頭良すぎるから些細な事でそう言う事まで解っちゃうのよ。洞察力とか、瞬発力とか色々凄いし…あの時も助けてくれたとき、凄く…」

いのが褒めるが、シカマルは何も言わず、不機嫌なままソッポを向く。その彼の行動で少し落ち込んだいのは、話題を切り上げ、シュンとした。

「まぁ、ナルトをサスケに盗られるか心配で、それでもナルトに仲間が出来るのは嬉しいから見張ってることしかできなくて、そしたらサスケの異変に気づいてますます心配になっちゃって、それでサスケにあんな事言われたりしたものだからつい、怒っちゃってらしくも無くベラベラ喋らなくていい事まで喋っちゃったのは、解らなくもないけどね? 次は気をつけないとダメだよ? カカシ先生に気づかれちゃったのはしょうがないし、信頼におけるから別にいいけどさ。」

そのチョウジの発言に「うっ!」と呻き声を上げたシカマル。以後、気をつけます…と手を上げながら謝罪した。

「…なーんだ。結局ナルト絡みだったからか。」

そう、いのが寂しそうに呟いたのだが余りにも小さな声だったために二人の耳に届く事は無かった。

「…悔しいじゃないのよ…」

少女は一人残ってポツリと空に愚痴を零した。

あたしって、この班の中で浮いてない?

そう不安に感じながら溜息を一つついた。
この二人は、何かと秘密を共有しているのに対して、いのには一切明かさず、巻き込まないようにしている。

しかし、彼女も役に立ちたかった。秘密を、背負っている重荷を分けてほしい。そして、一緒に戦いたい。なのに、この二人は頑なにいのを入れてはくれないのだ。
ナルト絡みなのは分かったし、何か大きな力と戦うためにシカマルは強くなっているということまでは、今日の今しがたの出来事で分かった。
だが…それ以上は付け込む隙をあたえてはくれない。

これではまるで、仲間はずれではないのか。
何のために自分はこの班にいるのか分からなくなってしまうではないか。
少女は一人、家への道すがら、深く考えていた。そして帰路に着いた。

「うーん。青春しとるなぁ。」

その言葉は誰の耳に届いたのだろうか。

「手伝ってやりたいのは山々なんだが…余計なお世話かな? しかも我が永遠のライバル、カカシの班の奴等と絡んでいるようだし?」

いつの間にそこに居たのか、緑のタイツを身に纏ったオカッパ頭の眉毛が非常に濃い男がそこに居た。
よし決めた! と言いながら彼はニッカと笑った。

「ふふふ。青春をこよなく愛するこのマイト・ガイが、青春キューピットになってやろうじゃあないか!!」

そして、不吉なポーズをした。

ジャキーン!!

「木の葉の青き野獣…参る!!」

そう言い放ち、その場から姿をいち早く消した。
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