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ナルトと愉快な仲間たち

風が吹いている。

肌に染みるような、引き裂くような冷たい風。周りは闇に侵食されて視界が悪い。
今宵は新月。月なんて出ていない。そんな闇の中に数人が姿を現す。
一方は木の葉の額宛をしていた。向こうは雲隠れの忍び達。合わせて三人いる。

もちろん、他にも護衛として結構な頭数がいたのだが、そいつらはことごとく、漆黒の影さんが‘お手柔らか’に数秒で倒してしまったために結構時間がはぶかれた。
周りに倒れている同胞を見て雲隠れのリーダーらしき人物はチッと舌打ちをした。

「使えない奴らめ」とか言っている。

その言葉を聴いたカカシの眉毛がピクリと動いた。そして不機嫌そうに言葉を発した

「サスケ、お前は左のチビッコイ奴を、サクラは中央のデブ。俺はあいつ等のリーダーをやる。何か不満は?」
「ありません。」
「…ねぇよ。」
「…それじゃあ、俺はミズキの方を。」
「宜しく頼みます。イルカ先生。」

そのカカシの言葉で少し困ったように笑うイルカ。

「同胞でしたしね。」

その言葉を聴いて、ナルトがこの先生の下で過ごすことが出来たことを感謝した。
あの下衆なリーダーと真反対で良かったと思った。
まっすぐなあの子は、まっすぐな心優しいイルカの元で、さらに生き生きとした、暖かい子供になった。

前の、陰気が含まれた嘘笑いや、涙を我慢しているような苦しい顔も

何かを諦めかけているような寂しい目も、誰かを憎むような目も

極限に減ったのだ。それはとても喜ばしいことであって。

あの二人の忘れ形見だから、遠くからではあったが、カカシもひっそりと見守り
そして、ちゃんと影からの刺客にナルトを守りもしてきた。
来るべき時まで直接な接近はしないように気を使ってきた。あの二人を死なせてしまったことに後ろ髪を引かれて。

何故、自分は何も出来なかったのかと、一日だって悔やむことを忘れたことは無かった。
あの二人をしっかりと守って、死なせていなければ…
今頃はナルトも普通に幸せに過ごしていただろうに。
だがカカシが守っていても、色々と問題はあったのだ。殆どが里の皆のナルトに対する態度や暴言。

しまいには彼に暴力まで働いていたのだから。

何度、無力で無知な里の者を殺しかけたか。理性が勝って自分は結局、やられているナルトが気づかない程度に攻撃を少し抹消したり、彼を逃がす手伝いをしたり。
カズハと出会うまではカカシは気が気じゃなかった。心休まるときが無かったのはナルトもそうだったが、一人で守っていたカカシもそうだったのだ。

神経が磨り減っていくのが手にとるように感じることが出来たが
あの二人を死なせてしまった咎として、限界を超えてまでも
たとえ、自分が死ぬことになろうとも守って見せると。
今思えばかなり無茶をしていたなと我ながら笑えてしまう。
そんなことを続ければ、いずれ守ることも出来なくなり
結局また何も出来ずに…

だから、今は本当の意味でカズハやイルカに感謝している。
自分ひとりでは到底成しえなかった事を二人がやってくれた。

カズハは表立って里の者や上司までも脅してでも守ってくれて、ナルトが気が紛れるように修行やらおしゃべりやら、シカマルの家やらつれだって遊ばせてくれた。

おかげで彼は笑顔を取り戻していった。
そして、今度はイルカ。

彼はナルトの全面的に援護をしてくれるような人だった。
元々、子供好きらしく、一緒に遊んだり、マナーなど精神面で強く優しく導いてくれて…

ナルトはそんな彼を父親のように慕っている。
叱る時は叱り、褒める時は褒める。見事な飴とムチ。

自分は陰ながら守ってやるしか出来なかったから。
だからかは分からないが…こいつのような下衆な輩を見ると
無性に腸を抉り出してのた打ち回らせたくなってくる…

そんなことをカカシが考えているうちにイルカはすでに敵へと突っ込んでいた。

そしてクナイを素早く手に取りあっという間にミズキの目の前にいた。ミズキもクナイをすでに取り出していて、鉄の奏でる音がその場に木霊した。

「ククク。生徒のためにここまで来ちまうたぁ…やっぱりお前はお人よしのバカだな。よりにもよってこんな化け狐のためなんかに。お前の両親を殺した張本人だぜ?」

その言葉を聞いてイルカは驚きと、怒りの顔を見せた。

「お前…まさかとは思うが…ナルトに…」

一度相手との距離を保ちつつ離れたミズキは自身の手を顔に当てながらまたも不気味に静かに笑う。

「幻術の中でだが…教えてやったのさ。何で里中に嫌われてるのか。」
「貴様…!」

またも近くまで距離を縮め、クナイで応戦。

「最初はあいつもシッカリ抵抗してな。だが、段々と力が薄れていって最終的には…」

落ちたのさ。と言い終えるかしないかの内にミズキは手裏剣を放つ。それを綺麗にクナイで受け流すイルカは…気づいてなかったミズキの罠にはまった。

「くっ?!か、体が…!」
「動けないだろ?何でだと思う?ククク。教えてやらねぇよ!!」

そして印を組む。煙が上がり、その中から現れるは人サイズの

「く、傀儡人形くぐつにんぎょう?!」
「あれー?!イルカ、知らなかったか?俺ってよ、傀儡を習うために砂隠れまで出向いたんだ。結構勉強になったぜ?」

その人形には刀や大砲やらがついていて、イルカの方に向いている。

「一つ、同じ教師だったよしみで忠告しといてやる。」

五体の人形全てがイルカへと迫ってきた。

「そいつら、毒付きの武器使ってるから気をつけたほうが身のためだぞ。」

ドッカーーーン!!

凄まじい爆風がイルカが追っていったミズキの方面からした。

「凄い事になっちゃってるみたいね。イルカ先生のほう。」

そう言いながら正面に居る、ナルト浚いを計画したであろう雲隠れのリーダーに話しかける。

カカシは一見冷静に見えるが、腹の中は煮えくり返っていた。だがそんな状況でも冷静に物事を判断することが出来るのは、やはりさすが上忍といったところだろう。

「どうでもいいだろう。もともとミズキは報酬をやる前に殺す手筈だった。この戦いで死んでくれれば手間が省ける。」
「へー。驚いたね。ミズキの力や頭脳に惚れ込んで勧誘してると思ったんだけど?」

すると呆れ顔で敵方はシレッと言う。

「あり得ん話だな。あいつは忍びとしては使えない。体力もあまりないし、それほど頭が良いとも言えない。まぁ、勉強熱心で色んな忍術を少しずつ使える事は誉めてもいいが…ただそれだけの奴だ。忍びとしては役立たずの中に入る。どうして木の葉があいつを教師にしたのか解らない。」
「…酷い言われようだな…まぁ、あんな奴でも見つけたい道や夢などがあるから、それが見つかるまでは…って事で三代目も待ってたんだが…どうやら道を踏み外したらしい。」
「なら好都合だな。さっさと始末すれば良い。」

その言葉を聞き終える前にカカシは素早く相手の懐にもぐりこんで足を思いっきり上げて相手のあごを蹴り上げた。

ドゴォ!

その周りの出来た衝撃波で木の葉が舞う。四方に散りじりに。
相手を射殺さんばかりの目つきで睨みながら、怒りで眉間にしわを寄せるカカシは、静かに語った。

「踏み外したのなら、ぶっ飛ばしてでも連れ戻すのが木の葉の忍びなんだよ…」

カカシの蹴りが炸裂するのを見ながらサクラの相手となる忍びは口元を吊り上げた。

「相変わらず木の葉は甘いな。そんなんだから裏切り者が増えるんだよ。」
「そんなのこっちの勝手でしょ?まだ救えるものには手を差し伸べる。まぁ、甘すぎて敵からなめられたり、時々暑いくらいウザイけど。」

サクラのその言葉とウザそうにする態度を見て敵は少し感心した。

「解ってるではないか。お前なら勧誘の価値がありそうだ…どうだ?雲隠れの忍びになってみないか?」

その言葉を聞いてサクラは笑った。夜の空気にその笑いが連動して少し不気味になる。

「お生憎様。」

そう聞こえれば周りは桜の花びらでいっぱいになった。

「私、結構気に入ってるのよ…木の葉の甘い所。だから勧誘お断りなの。」

その花びら達は風に吹かれ台風のように敵の周りを囲む。
中心には花びらと同じようなピンクの髪をした忍びと…黒い髪の短髪のデブな忍び…先に動いたのは黒い方だった。

サクラはクナイを取り出しながら敵に向かって投げる。幾つも投げる。勿論、敵も避けるためにクナイや手裏剣を投げる。
そして敵はすんなりサクラの目の前に行き立つ事に成功。

「俺らは甘くない。死ね。」

クナイを振り上げながら笑う。そして勢い良くピンクの子へと振りかざした。

ザシュッ!

赤い血飛沫が…その空間に舞った…

「残念だよ…お前はきっと強くなってた…」

しかし、サクラから離れた血は、空中でフヨフヨ浮いている。後に桜の花びらと化しその場に舞った。

「ほーんと。残念でした。」

そう言いながら血まみれの女の子はその景色に打ち解けた。

「なっ?!げ、幻術?!しかも高度が高い…何者なんだ貴様?!」
「ただの木の葉隠れのくの一…」

声が響き渡り、花びらがいっせいに敵へつっこんだ。敵の体は切り刻まれ、その場に倒れる。

「か、解!!」

しかし、花びらは消えない。体をなおも傷つけてくる。

「な、何故だ…?!どうして…」
「教えといてあげる。」

少女の声が木霊する。

「鍛錬された幻術は…そう簡単に解けないものなの。」

そう言いながら本体のサクラは敵を縛り付けるために近づこうとする。
あと少しのところでサクラの手首を敵の手がガッシリと掴んだ。

「!」
「だから…甘いって言ってんだ…」

地面に倒れていた敵はユックリと立ち上がる。敵の手にはサクラの手首と…もう一つの手にはクナイ。

「解除が出来ないんなら…無理やり…があるだろ?」

良く見れば敵の左足からは血がにじみ出ていた。

「よく…解ってるじゃないの…」
「今度こそ終わりだ小娘…じゃーな。」

サクラはニヤリと笑いながらも焦っているのか、額から若干汗がにじみ出ていた。

そのころ、サスケはチビっこい敵を睨んでいた。サクラやカカシと違って少し離れてしまったが、幸いナルトの近くだ。戦ってる最中にナルトを助けられるかもしれない。

「木の葉は…何で化物のために戦う?戦力が失われるからか?」

敵が背中の刀を二丁抜くのをサスケは黙って見つめる。

「…あいつは、化物なんかじゃない。」
「化物じゃないだと?イルカ。」
「ああ、ミズキ。お前には見えてないだけなんだ。あいつは…」

そう言いながら起爆札で破壊した人形達を見つめながらイルカは真っ直ぐミズキを見つめる。

「おっちょこちょいでも、腹黒でも、バカでも木の葉は見捨てたりなんかしない。昔は少し違ってたが…今は違う。間違ってる奴が居るならなにが何でも追う。殴り合って、話し合って…そいつを連れ戻す。」
「…コピー忍者のカカシが甘い事をほざく。」

ガシッバシッと激しく体術で応戦しながら二人は喋っていた。

「それでも…いいんだ。それが木の葉流。お前らみたく、人の芯も見ずに勝手にあいつを化物何だの言う奴には…アイツの良さは解らない。そんなの勿体無い!」

空中回し蹴りが顔にヒットし、その隙をついたカカシは敵の背中に回りこみジャンプをした。木々たちより遥かに上を行き、敵を逆さのまま固定した。

「教えといてやる!あいつはな!!」

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

「あの子がどんな痛みを背負ってるかなんて聞かれても知らないのよ。」

いきなり喋り始めたピンクの子。クナイは途中のサクラの手に掴まれ停止。
彼女の手からは血がポタポタこぼれている。

「聞いたって解る訳ない。でもね、私達が頑張る理由さえ解らない人たちに負ける訳にはいかない…」

そのクナイを持ったまま彼女は華麗に敵を背に担ぎ思いっきり遠くへ投げ飛ばした。
背中の中心部まで伸びたピンクの髪がなびく。
そして彼女はチャクラを自らの手に集中させた。そこから伸びるは蒼いチャクラの筋。

「ちゃ、チャクラを具現化させたチャクラ刀だと?!」
「本来なら医療忍術の応用版で、さらに改良したヤツだけど…知ってた?これで何でも切り刻める最高の刀が出来るんだ…」

敵はサクラの気迫に押されて足が動かない。

「大丈夫。殺しはしない。寝覚めが悪くなるし、それに…そんな事したら医療忍術を侮辱しているようなものだからね。」
「止めろ!!く、くるなぁぁああ!!」

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

「火遁、火走り!!」

そう言って印を組みながら手を地面に着ける。そして地面から溢れるように出てきた炎が敵に向かって地面を走るように攻撃。
対する敵のチビは持ち前の速さで印を組もうとするが…サスケに蹴られ遠くに吹き飛ばされた。

「悪いな。敵として全力で叩き潰させてもらう。」

敵が起きる前に背後に回り、手を地面に着きながら足を使ってまた蹴る。相手が木に当たる前にまた蹴り上げ、敵と共に空中に移動。すぐさま踵落としをお見舞い。

「虫唾が走るてめぇらに、一言言ってやる!!あいつはなぁ!!」

地面に着地したサスケは思いっきり、それこそナルトにまで届くように声高らかに言葉を発した。あちこちでバラバラに戦っていた皆の声が全員ハモりにハモって里まで届くかのような。それはもう力強い、何にもかき消されない思いがそこにはあった。

「「「「「木の葉が誇る立派な忍び。うずまきナルトだ!化物なんかじゃない!!分かったかぁああ!!」」」」」

ドッカーーーーン!!!

言い終わったが直後に、凄まじい衝撃が各自の戦ってる方面で聞こえた。
そして…うな垂れていたナルトに、その皆の声が、想いが…届いた。
それを聞いて、陰ながら戦っていたカズハは口元を緩ませ弧を描いた。

「やっと仲間が出来始めたか」
「ちっ!てめぇは何者なんだ?!」

目の前に対じしている雲隠れの忍びを操っていた、雲隠れの抜け忍が焦ったように問う。
カズハはフフフと冷たく笑う。それはもう、まるで猛獣に心臓を鷲掴みされたかのよう。
彼女は、まだ分からないの?と聞き返した。

「私達のチビヒマに目をつけた時点で、あなた達は終わってるの」
「なにを…「寝ろ」え?」

ヒュッと風を切る音がした後、抜け忍は何が起こったかさえも分からぬまま…頭と胴体が離れ、そのまま地面にひれ伏してしまった。

もちろん、すでに命はない。
カズハは興味なさげに短くため息をし、後ろを振り向かずその場を去っていった。

次は足を振り上げ地面に叩きつける。すると地面がビスケットのように割れていき、地面の中で潜んでいた抜け忍たち数名を首根っこを掴み、嫌な音を鳴らし、動かなくなった相手をまた地面に沈ませていった。

「これで抜け忍は29人は葬った。あとは…三人くらいかな」

さぁ。次はどこの抜け忍を仕留めてやろうか。
そう思いながらナルトの方を見た。また無茶しちゃうんだろうなと思考しながら、敵のほうへ気配もなしに駆けていった。

ナルトはといえば、目からは流れる涙。しかし、その顔はいつものような気持ちの良い笑顔。傷だらけの血だらけだけど…徐々に失われていた光が、強さが目に灯る。

「ありがとう…皆…その想いに答えるってばよ!!」

そう叫び黄色い子は暴れ始める。

「グ、あああ…はあああああ!!!」

両腕に力を込めて変な文字から逃れようとする。

「だあああああ!!!」

バシン!!

その力に耐えられず、ナルトは両腕だけ縛りから開放された。とたんにポッケから巻物を取り出し、印を組ながら流れてる自分の血を使い、巻物を広げ、血だらけの親指を巻物に押し付ける。

「出て来い!!嵐火らんか!!」

カズハに教えてもらった武器の一つで、巻物に仕舞って持ち運んでいる代物だ。
煙と共に現れるは武器。斧の形をしていて、チャクラが流し込みやすい素材で出来ている。ナルトが手に持った瞬間その斧の周りに風のシールドのような物が出来た。それを振り回しながら文字を切り刻む。

早い。あまりの速さで斧の先端から火が上がる。じつはこれがこの武器の名前の由来だ。

「はぁぁああああ!!!」

炎は風をまといながら大きくなっていき周辺の物を焼き付ける。文字の力が弱まった直後、ナルトは解放されたにも関わらず風と炎をまとった斧を地面のあるポイントに投げた。

高速で放った斧は術を保っていた巻物へヒット。ついでに周囲の地面や木を斧が破壊したのは、その衝撃に耐えられなかったためである。

しかし、当の本人はチャクラを随分と吸われながらもチャクラを使う武器を使い、チャクラが切れてしまい、ずっと血を流し続けたために体に力が入らなくなった。よって、地面に真っ逆さまに落ちていく。

「ナルト!!」

そう叫びながらナルトを助けようとするサスケだが、まだ敵を縛っている最中。

がしっ!

「大丈夫?チビヒマ??!」
「カズハ…ねぇちゃん…」

やはりと言っていいのか、影ながらいち早く決着を済まし、ナルトの元へ走っていたカズハがナルトと地面との衝突を回避したのだった。ちなみにカズハの相手の忍び達は…いわずもがな、すでに処理されていたため、そうなったかは知らない。が、カカシは安易に想像できて苦笑した。

「良かった。ナルトを助けてくれてありがとうございます。やっぱりカズハさんは里一番の忍びですね!!」

そのイルカの素直な感謝の言葉と、曇り一つ無いまっすぐな眼差しと、敵に回った友を救おうとし、救った心優しい強い彼を見て、カズハも偽りの無い、彼女にしては珍しく嫌味一つもせず、お礼の言葉と素の笑顔を返した。

「ふふ。イルカ先生、ありがとう。」

ニッコリ笑う二人をよそに、カカシとサスケは悔しそうな顔をしていた。

「一番いいところ持ってかれちゃったよ…」
「あのウスラトンカチの笑顔と言ったら。」
「みんな無事でよかったわ。あ、ほら、こっちに向かって微笑んでるわよ。」

見れば確かにナルトが三人に向かって微笑んでる。大きく息を吸って何か言うらしい。

「みんなー!俺を救ってくれて!!ありがとうってばよーーー!!!」

今は外。しかも真夜中で風が冷たく周りは薄暗い。
そんな中…五人の忍びは一人の小さな黄色い忍びと共に笑い合っていた。

「それよか、ミズキのヤロウはどうする?」

どこか満足したサスケがカカシに聞く。

「そーね、どうでしょう?イルカ先生。」

そうイルカに聞きなおす。カカシはどれほどイルカが優しいかを知っている。だから、あえて彼に聞いたのだ。ミズキが里を裏切ってもなお、そんな彼を救おうと頑張ったイルカだから。

だが、みんなの予想とは裏腹に、イルカはもっとも彼らしくない言葉を口にした

「ええ、火影様に報告しますよ。多分ですがミズキは忍びを辞めさせられますね。」

その言葉に少し驚いたのはカカシと、カズハ。お人よしなイルカでもあんな事をいうのだなと。そして、確実に彼もナルトの件についてミズキに怒っていたのだなと、ここで初めて気づいたのだった。

「そっか…」

ポツンとそう言ったのはナルト。残念そうに呟く様は敵に回ったミズキを哀れんでいた。

「腐っても…木の葉の忍び…」

続けられた言葉は悲しみが溢れていた。そんな中、縛り付けてあるミズキが笑う。

「そうだな。俺は元々忍びには向いてないってのは解ってた事だ…」

ミズキが痛々しく笑った。そんな彼を見ながらイルカは話始める。

「まぁ、死にはしないと思う。」

その彼の言葉を聞いて、顔を上げたミズキ。

「ナルトも無事救出できたんだし、罪は重くはならないと思う。忍者辞めても自分で歩く事が許される。木の葉からは追放されるが…やりたい事を出来るいい機会だ。」

そのイルカの笑顔に、言葉に、カカシとカズハは、ああ、やっぱり彼は彼なのだなと思った。変わらず優しいのだなと。やはり、彼は戦闘よりも教師のほうが合っている。あらためて思った二人だった。

「そうなのか?」
「そうだよナルト。何も忍びで居なきゃいけないって訳じゃない。色んな職業があるわけだし…ま、自分次第ってわけだ。」

そう言いながら縛り上げた忍び達を担ぎ上げるカカシ。
重症のナルトはカズハがソソクサと木の葉へ運んでいった。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

それから数ヵ月後…皆のもとに届く驚きの情報。
ミズキが大役者になって映画に出るという…

『是非、一度だけでもいいから木の葉の皆も見に来てください』

そういう手紙を読み終えたイルカは微笑む。

「やっと、お前の行くべき道を見つけられたんだな…」

同じ教師だったもの同士…

君の旅立ちに、夢へ向かっている君に…

かつての仲間として、そして友として、嬉しく思う。心から祝おう。君の門出を。

「さーて、俺も負けてられないなっ!」

そう言いながらイルカは鼻歌を吹き、機嫌よく職員室を出て行った。
彼が頑張っている。いつも自分より要領あって、ルックスよし、頭よし。何でもまぁまぁこなしてしまう友人。
そんな彼の瞳の奥に、隠された闇があったことを、イルカはずっと気にしていた。

なんとかして救ってやりたいとも思っていた。しかし、当の本人が隠し、誰にも助けを求めてこなかったため、イルカも何も出来ないことに胸を痛めながら、ずっと機会をうかがっていたのだった。

自分が、彼を救えたのかは分からない。だが。
彼の運命が変わったのを肌で感じ、それが嬉しい。
それだけでもイルカにとっては大きなことだった。

機会があれば、彼のところへ遊びに行こう。
火影さまにも許可を取って…大勢が行ったらびっくりするだろうなぁ
あ、そうだ…彼の出る映画も観なくては。
今度、ナルトをさそって…そうだ、カズハさんも誘おう。

今日もイルカは教室のドアを開く。相手は数人のクラスの子供たち。

「授業をはじめるぞ!全員席に着けー!」

木の葉の未来を担う、小さな芽たちを…今日もイルカは、飴と鞭を扱いながら、愛情こめて育成するのだった。

「今日は組み手をします!各自列を崩さないように、廊下から外へ出るように!決して窓から出入りしてはダメだぞー!」
「「「はーい!!」」」
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