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ナルトと愉快な仲間たち

「ちっ。上手く事が運ばない。」

そう愚痴ったのは他でもないミズキだった。ナルトを下忍試験で不合格になれるように罠を張ったのだが、上手く発動せず。ナルトを使って極秘巻物を奪わせる はずが、何もかもパァになってしまった。オマケに手を組んだ雲隠れの忍びからは脅迫の手紙が届き、『巻物が手に入らなければお前を消す』とまで書いてあっ た。

「あのガキと漆黒の影のせいで全てが狂った。」

こうなったら。とミズキは危険度最高の作戦をとる事にした。もう後戻りは出来ない。ならばいっその事、闇に染まりきれば良い。自分はもう光に居る事を止めたのだ。恐れる事は何も無い。全て捨ててしまわねば生きる事も危うい。

「捨てられるだけ捨ててやるよ。」

良心も友も、身も心も、何もかも。

「あっ!ミズキ先生!!」
「や。ナルト君。調子はどうだい?」

そう言いながらミズキはナルトの部屋へ入っていった。面に笑顔を貼り付けながら良い先生を演じ通す。役者になれるかもしれないと思ったがそんなの一時の気の迷いだ。まず、手始めに作戦の通りナルトに接近する。

「部屋に上がらせてもらっていいかな?それとも俺が突然表れたの嫌だったかい?」

ナルトと言えばそんな事ないと言い、気前良く部屋に案内した。案内するほど部屋はでかくはないが。

「ビックリしたってばよ。俺んち来るの爺ちゃんと姉ちゃんくらいだもん。」

そう言いながらテーブルにお茶を置く。

「あ、先生ってばコーヒーの方が良かったか?」
「いや、お茶でかまわない。」

結構気が利くな、とも思ったが直ぐに話を切り替える。

「俺さ、君に聞きたい事があるんだけど。」
「うん、何?」

ナルトはミズキの事なんてチリほども疑ってない。素直すぎるのだ。

「どうやって合格したの?」
「?」

上面はニッコリ微笑むミズキ。ナルトは訳がわからずハテナマークを頭につけている。

「下忍昇格試験でさ...たしか内容は君の大の苦手の忍術だったろ?」
「ああ!うん。分身の術だろ?俺ってばいっつもその試験落ちてたんだよな~」

懐かしそうに話し出す様を見て探りを入れる。

「だよね。いつも見てたから知ってるよ。凄く落ち込んでて毎年心配してたんだ。」
「うわ、本当か?!知らなかったってばよ。でもさ、今回はちゃんと受かったんだ!!」
「うん。だからお祝いに来た。それと聞いておきたくて。どうやって受かったんだい?」
「カズハ姉ちゃんに修行つけてもらったんだってばよ。辛い修行だった...」

そう言いながら少し遠い目をする黄色いガキにミズキは、一体どんな凄い修行だったんだと心の中で突っ込みながら冷静さを保つ。

「その修行のおかげで分身の術が出来るように...あ、でも姉ちゃんが特別な分身の術だから他には他言するなって...」

その事にピク...と反応。ナルトよ、それを言っちゃあお終いだろ?これじゃあ聞いてくださいとお願いするような物だ。

「へえ。他には言わないから教えてくれないかな?それとも信用できないかい?同じ里の者として...」

ナルトはその言葉で素直に話した。少しは疑えよ。とも思ったが敵としては聞き出しやすい。

術の名前は影分身。

「凄いじゃないか。上忍レベルの忍術だ。」

そのエセ誉め言葉に嬉しそうに微笑むナルトを見ながらミズキはこいつ、思ったより強いかもと作戦を練り始めた。

「そうそう、ミズキ先生はどんな忍術が得意なんだ?」
「得意とまではいかないけど、幻術が使える。」

半分は嘘。幻術は俺の十八番。敵に自分の情報を易々正確にあげたりしない。

「うげぇ~!俺ってば超苦手なのにミズキ先生ってば使えんのかぁ~!すげぇなぁ!」
「凄いと言えるほどのレベルじゃないさ。平均並みに使えるだけで...」
「使えないよりはマシだぞ先生!俺なんかまったく使えねぇし。」

ほぅ。ならば幻術返しも出来ないと言う事か。そう思うとミズキはニタリと不気味に笑った。

「ククク...そうか...」
「え?...先生?」
「お前の弱点はそこか...ククク...」

急にミズキの態度が一変してナルトは少し驚き警戒した。

「じゃ、この作戦で行こう。」

そう言い終え、ミズキは印を組んだ。たちまちナルトの視界はグニャグニャ揺れ始める。

「なんだってばよコレ?!ミズキ先生どう言う事だってば?!」
「悪いな。仕事でお前を攫いに来たんだ。どうせ極秘巻物なんかじゃあいつらはもう納得しないからな。人柱力のお前を貰いたいそうだぜ?」
「じんちゅうりき?な、何を言って...」
「ああ、そうか...お前は何も...なぁ、どうしてお前だけが里の皆に恨まれてるか知ってるか...?」
「...え?」
「見せてやるよ...お前の中に何が居るのか...」

周りは大きく揺さぶり...そして現れるは醜い大きな赤い狐...尻尾は九つに分かれ、里で大暴れしていた。

そして誰かが現れ...狐は封印された。

九尾の妖子の事はナルトでも知っている。そして誰がそいつを封印したのかも。四代目火影...

「なぁ、九尾はドコに封印されたと思う?」

不気味にミズキの声が響く。

「お前にだ。」
「...え?」
「お前が九尾だったんだよ。だから皆から蔑まれ恨まれ憎まれ、酷い扱いを受けていた!!でも、どうしてお前だけが知らされなかったと思う?ククク。三代目がその事を他言無用にした。口走った者には処罰とな。」
「お、俺の事を思いやってそう言うことしたんだろ!三代目の爺ちゃんはああ見えて...」
「違うな。」
「え...?」
「お前が怒り狂って暴れないようにするためだ。」

違う。

「誰もお前の事、思いやったりしてねーよ。お前は九尾の化物なんだぞ?」

違う!

「里の多くの大切な命を、両親を、子供を奪った憎いやつが、誰に好かれるんだ?」
「違う!違う、違う!!そんなの間違ってるってばよ!!」

そしてクククとまた不気味に笑い、ミズキがまた印を組みなおした。

「じゃあ、とっておきのを見せてやるよ」

また場所が移り変わった。今度はやけに騒がしい。

「里を護れ!!」
「ここで食い止めるんだ!!」
「火影様が来るまで辛抱だ!!」

何だってばよ?ココ...森の中...か?

良く見ると巨大なオレンジの何かと忍び達が戦ってる。

「九尾の化物め...!」

九尾...!

そこには見るも恐怖で震え上がるほどの化物が居た...

「はなせ!!俺も行かせてくれぇぇ!!」
「駄目だ!!お前は非難させるように言われてる!!こっちへ来るんだ!!」

一人の子供が大人の忍びに抱えられながらも暴れている。

「母ちゃんと父ちゃんがまだあそこに居るんだ!!戦ってるんだ!!俺もいかせてくれぇ!!」

結局はその忍び、子供を抱え非難させる事に成功したみたいだ。

「その子供に...見覚えないか?」

ミズキの声が響く。

そういえば...いつもどこかで会っていたような...

「そいつはイルカだ。」

え?

「その日以来、イルカは独りぼっちになった。」

と言う事は...両親は戦いながら...?

「両親共々、九尾に殺されたからだ。」

すると、突然、九尾の尾がナルトに巻き付いてきた。ギリギリ締められ息が上手に吸えない。

「お前がイルカの両親を殺したのさ。」

思い出すは一楽...いつも怒ってばかりの教師は何故か決まって落ち込んでいる時に必ずラーメンをおごってくれていた。段々と話すうちに自分もイルカも笑うようになっていった。

でも、内心はどうだったのだろうか。
ミズキのように自分に漬け込んで弱みを握るつもりだったのだろうか。

「イルカはな...お前を憎んでたのさ。」

そんははずは無い。
ならばあの笑顔はなんだったのか。
心底楽しそうに、時には優しそうに微笑むイルカ先生。
あれも全て演技だったのか?

「一人ぼっちにさせた張本人なんだから...」

クククと不気味な笑い声を聞きながらナルトは自分の意識を手放していった。

「やったか...」

気絶したナルトを担ぎ上げながらミズキは周囲に気配が無いか確認。以上なしと解ると雲隠れの忍びどもに例の手紙を送り、夜の中を駆けていった。その顔は期待と自信に満ち溢れていた。

だからかもしれない。

夜の暗闇の中でナルトを連れ去る所を

人が見ていたことに気がつかなかった...―――

「...あれは...ナルトと...ミズキ?」

閉められていたはずの門は少し開き、ミズキはそっと抜け出した。
しばらく森の木々を抜けると落ち合い場所にたどり着く。小さな木でできた小屋。随分と人に使われておらず、殆どの者が見落とせるように結界幻術まで施され ていて、入るにはある特殊の巻物の中に入っているガラスの小瓶をぶつけて穴を開けなければならない。

もちろん、その穴もあっという間に塞がれてしまう。

小屋の中へ入りナルトを特殊な強い結界忍術で縛る。印を結べば巻物の中の文字が浮かび上がり、気絶しているナルトの体を地面に縛り上げる。これでどんなに暴れようが泣き叫ぼうが小屋の外へは漏れないし何しろ外す事も困難。

小屋の外へいき、一息ついた。

「おい。人柱力はどこだ。」

そこへ雲隠れの忍びがやってきた。

「小屋の中だ。一応結界忍術で縛り上げてる。」
「見せてもらおう。」

そう言いながら男は小屋の中へ入っていった。

「まったく...あの化け狐のせいでとんだ不幸だな...いや、あいつが不幸なのか?ククク...どうでもいいか。」
「たしかに九尾の人柱力だ。後は俺の仲間が到着するのを待って、報酬を渡す。それでいいな?」
「ああ。」

そう言いながら遠くを見つめるミズキの表情は...相手からは見えなかった。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-


ここは...どこだってばよ...

暗い通路みたいな所にナルトはいた。

「誰か...いや、何かがいる。」

通路の奥のほうに唯寄らない気配を感じ取った。
おもむろに足がそっちへと移動すると、大きな檻がある拾い場所へ出た。

「お前が...九尾?!」
『ほう。よくぞここまで来たものだな。なんだ…コッチ側のヤツか。』

どことなく九尾が残念そうに溜息を軽く吐いた。まるで“今のお前ではない奴を待っていた”とでも言いたげに。

『お前をどうこうするつもりはもう、サラサラない。速攻に立ち去れ。』

あれ?聞いてた奴と違わねぇ?なんか大人しくね??

「お、お前ってば、どうして里を襲ったりしたんだってばよ!!」
『んむぅ?あれは我の思考とは違うぞ。マダラに不覚にも操られてしまったのだ。』
「そうか、それで嫌だったのに、あんな事させられたのか...」

少し悲しく俯くナルトを見て、九尾は言った

『お主になら、力を分けてやっても良いぞ。今、お前特殊な術で縛られているだろう。』
「へ?助けてくれんの?」
『まぁな。早くワシをここから出せるようになってもらわねばいかんし、何やら“あっち側”のヤツから頼まれているしな。』
「? それってば、どういうこと…」
『いくぞ。受け取れ』

そう言いながら九尾はナルトにチャクラを与えた。それこそ暖かく、ゆったりとしたチャクラだった。

『じゃあ、またな。“片方”の奴とやら』
「へ?」

なんのことか聞こうとしても、もう九尾は後ろを向いて寝始めていた。

*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-

目をユックリと開け、ナルトは今の状態を確認する。変な文字が体中まきつき、それが天井やら地面やらに伸びている。ナルトは部屋の中心部、床から三メートルくらいの高さにいた。

「貰ったチャクラを体中に!!」

たちまちナルトの体は薄赤いチャクラで覆われ、変な文字を力技で解こうとする。しかし、チャクラを練れば練るほど、暴れれば暴れるほど体に食い込んでチャクラを吸う。そしてわずかな電気ショックが体を痛めつける。

「う、うわぁぁああ!!」

しかし、必死になって痛みに耐えながら解こうと試みる。

「...!くっ!!ぐわぁああ...」

あまりの痛さに眩暈がした。

「うぐっ!...うわああ...」

どうする?助けを待つか?
いや、きっと誰も助けにはこない。

「誰もお前の事、思いやったりしてねーよ。お前は九尾の化物なんだぞ?」

ミズキの言葉が頭の中でリピードする。

「里の多くの大切な命を、両親を、子供を奪った憎いやつが、誰に好かれるんだ?」

実際そうだろう。でも、それでも俺には仲間が出来た。
しかし、本当に仲間だと思ってくれてるのだろうか?
自分だけがそう思ってるんじゃないか?

「その日以来、イルカは独りぼっちになった。」

虚しくもナルトは段々と抵抗するのを止めていった。
あの里には自分の居場所なんてないのだろうか?
瞳からは大粒の涙。しかし、流れないようにナルトが必死になっていた。

そんな時だ。爆発音が聞こえたのは。

「ちいいぃいびひまぁぁぁあ!!」
「この声は...姉ちゃん?!」

外では盛大にほえるカズハ、怒りに震えるサクラ、射殺さんばかりの殺気を放つカカシ、強く睨みつけるイルカ、ニヤリと笑ってるのに目は笑ってないサスケがいた。

「「「「歌姫を返してもらおうか!!」」」」
「え?!歌姫ってだれ?」

四人とは違いナルトの美声を聞いてないイルカだけがツッコミをした。
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