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ナルトと愉快な仲間たち

サスケの物語はある日を境に180℃変わる事になる───…
それはある秋の肌寒い日だった。

いつものように復讐で煮えたぎる本心を持ちながら彷徨っていた少年は、
またいつものようにある池へとおもむいた。
靴や靴下が濡れるのをお構い無しに池へと足だけを入れ、
バシャリと弾けば水滴が上がり柔い昼時の日に当てられてキラキラと光る。

しかし、その光をも拒絶する己の心。

深く傷ついた心は目に見えず、しかしいつも疼き痛む。
苦しくて悲しくて、でも、それに利く薬なんてありゃしない。
逃(に)げたくて、怖(こわ)くて。でも、逃(に)げられない。逃(のが)れられない。

この痛みからはどうしても。
いつからか、サスケは光ある全てを憎むようになっていた。

人も、草も木も、鳥も家も地面や空。
そして、一番に嫌っていたのが、地上にあるべきモノ。なければ何も無く、生きる事すら出来ないほどのモノ。

タイヨウ。



あれは眩しい。ゆえに鬱陶(うっとう)しい。
俺には闇がお似合いだ。キラキラ光る飾り物のような

触る者みんな虜にするような

そんなタイヨウが鬱陶しかった。

怖くも感じた。晴れやかな日に、眩しいはずの日に
影では何人もの弱者達が虐げられ、そして…命を失っていく。
俺が思考できる範囲じゃねぇな

そう思いながら小さく苦笑いした時だ。誰かが近ずくような妙な感覚に襲われた。
慌てて立ち上がってみたものの、見渡せど周りは誰もいない。
いつの間にか夕方だ。馬鹿馬鹿しい。帰ろう。

そう思って足を返した時だ。

ズルッ!

濡れた足が滑った。

ドッボーーーン!!

そのまま池へとダイブ。
季節が秋の池は、結構寒かった。

「ちっ!ついてねぇな」

言いながら端の方へとしがみ付こうと、手を伸ばしながら足を動かす。

後もう少し。そう思った時だ。
ピキッと足が硬直する痛みを感じた。

「やべぇ…足がつっちまった…!!」

バシャバシャとがむしゃらに動いてみるが効果は略なし。
肌に染み込んで来る痛いまでの冷たい池の水につった足。
どんどんと体力は無くなっていく。

体は沈む一方だ。

誰か、誰か俺に…手を…!

しかし、その手さえも飲み込まれ、残るは限られた自分の僅かな体力と

そうだ!チャクラで!火の玉を発生させれば…水を蒸発させて、もしかしたら!

印を組み、チャクラを肺に集め、解放。
デカイ火の玉は水を蒸発させ

…る事は無かった。

水が冷たすぎた。これが夏や春ならまだしも希望はあったが。

やばい…空気が……頼む、だれか…

頭に過ぎるは父、母、親戚そして



『愚かなる弟よ…』

兄さん、俺は…

どうすりゃ良い…?


遠くでドボン!という音が聞こえた。
意識はすでに朦朧としている。もうダメだ。俺はココで終わりだ。

水面に見える僅かなタイヨウの光が恋しく思えた。
あの光を掴む事はもう無いだろう。
自分はここで命を落とすのだから…

できたらもう一度だけ。後もう一度だけ
光に生きてみたかった…

そう思いながら徐々に目を閉じていく。
一瞬、その黒い闇のような瞳に、明るい黄色と青い色が映ったような気がした
そして、冷たいはずの自分の伸ばしていた手に、暖かい温もりを感じた。

誰かの手だろうか?そうだったら一体誰のだろう?
そんな筈はない。きっとコレは死を直前にして作り出した俺の脳の幻だろう。
俺を助けられる奴なんて………



……誰一人として居ないのだから。


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-


どれくらい経ったのだろう?うっすらと意識が浮上することを感じて、自分はどうやら生き延びたらしい。意識を手放す寸前、誰かが自分の手を握ってくれた。
そしてその温もりはまだサスケの右手を包んでいる。

誰だ?

そう思いながらゆっくりと目を開く。

「気がついたか?!」

金髪の綺麗な髪と、どこまでも澄み切った青空のような美しい目が俺を見ていた。
ゆっくりと息を吸うと咳が出てきたが、その後息を吸ったり、はいたり繰り返した。生きている事を噛み締めるように。

そして眩く光る日の光を存分に濡れて冷え切ってしまった体に当てる。

妙に暖かかった。

「間に合ったってば…間に合ったってばよ~…何とか助ける事に成功したってば」
「誰だ?お前」

するとそいつは顔に満面の笑顔をしながらこういった。

「俺はうずまきナルト!!木の葉の下忍候補だってばよ!!」

その笑顔が温かくて、見ているだけで気持ちよくて
心の中の冷え切った部分が溶けていくような、闇の中に光る小さな光を見つけたような気がした。

それはとても小さく、儚い。
なのにとてつもなく巨大で優しい。

まるで…タイヨウ。

「お前、どうして池へ滑るようなドジ踏んだんだ?いつもなら…」
「いつも?それから、なんで池へ滑った事なんか見ていたかのように…って、お前まさかっ?!」

そう、誰かに見られているような感じは気のせいではなかったのだ。

「た、助けたんだから良いじゃんか!!」
「良くない!!そもそも、何で俺なんかを見てたんだ?!」
「!そ、それは!!」

急に勢いが無くなり、顔を少し赤く染めるナルト。
俯き様にサスケを見て、(不本意だろうが)上目使いになった。その可愛さにサスケが赤くなるのもしょうがない。

「…昔の俺と、同じ目してたから……」
「同じ目?」

コクリ

「いつも見てた。それで気がついたんだ。お前って、俺と同じような寂しさや悲しさ、孤独を知る者だって…」

そして儚く笑う。

ああ、何でこんなにも心が震えるのだろう。
そうか、こいつは唯一俺の痛みが分かる者。
そして、その痛みと戦う事が出来る奴…
興味が湧いた。もっと、こいつの事を知りたいと思った。

「クシュン!」
「あ!俺達、びしょ濡れだった!!こっからは俺んちが近いから、そこ行こうぜ!!ほら、サスケもくるんだよ!!」

無理やりナルトはサスケの手を取り走っていく。
しばらくしてナルトが住むボロアパートへ来た。
躊躇しながらも階段を上り、部屋へとあがらせてもらい、先にシャワーを浴びる。
その後でナルトもシャワーへIN。

「なぁ、ナルト。お前ってもしかして、アカデミーで俺と同じクラスか?」

カップラーメンを二人分用意している黄色い奴にサスケは聞いた。

「うん。そうだってばよ。」
「そうか。だから俺の名前、知ってたんだな」

カップメンが出来上がり、コッチへ来いとナルトがサスケを誘う。

「いただきます!」
「…」

サスケが黙ってそのまま食べようとするとナルトが箸で殴りつけてくる。これが結構痛い。

「なんだよ。」
「いただきますってちゃんと言わないとダメだって!父ちゃん母ちゃんに習わなかったのか?」

突然サスケは立ち上がり机を両手で叩いた。

バン!

「うっせぇ!!」

ナルトはビクついて驚き様にサスケの顔を見上げた。
とても苦しそうな顔がそこにはあった。


「忘れようとしてるのに!!」
「忘れる?家族の事をか?!」
「…辛くて悲しいなら、俺は過去を捨てる!!」

今にも潰れそうな声を出しながら顔を背けるサスケ。しかし…

「そんなの、ダメだってばよ!!」
「…え」
「忘れるなんてこの俺が許さねぇ!」

見ればナルトは目に涙を溜めていて。それでも零さん!と息奮闘しているようだ。

「忘れちまったら!楽しかった事まで思い出せなくなっちまう!!そっちのほうが、お前の死んじまった家族が可哀想だ!!」
「な、ナルト…?」
「人は、死んだら…思い出の中だけでしか生きれないんだよ!お前が忘れたらよぉ…それこそ皆死じまうってば…」

この胸に芽生えた感情は何だろうか?
暖かく気持ちが良いこのポワポワした感覚。

「気が、つかなかった……」

窓から差し込んでくる月明かりが綺麗だ。

「そう言う考えもあるんだな…ただ単に慰め用の気休め…」

ナルトが思いっきりサスケを睨んだ。

「だけど、そっちのほうが…俺は好きだ。」

見ればナルトは泣いてるのに笑顔になった。

「俺も好きだってばよ。」

その夜、一つのベットで二つの毛布に包まり、心も体も暖かくなったサスケは、そのまま心地よく眠りについた。久々に訪れた心地良い眠りだった。

君の笑顔が頭から離れない
君の声が耳に染みこんでいて消えない。
この胸の高鳴りと温かさと一緒に
いつまでも君の隣にいたいと願ってしまうのは...

僕が君を好きだから?
父さんや母さんよりも…兄さんよりも…
誰より君の事を…

そんな十歳のある秋の日だった。
寒くて凍え死にそうだった黒いツバメは
お日様の光に照らされて
心と体の氷が解けたのでした。

もう君を縛るものはないよ。

きっと気持ちよく
青空へ飛べるよ。

そんな声が

聞こえたような気がした─…


*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*-


「あー…」

昨日ナルトに久々に会って、思い出した。

「そうか…あいつだったのか……」

なんで忘れてたんだろうなぁ。

「復讐に囚われて…とかいうヤツか?」

自問自答したって何もわかりゃしねぇ。
まぁ、とりあえず

「今日が正念場だな…」

グッと木の葉のハチマキを頭にしばりなおして、俺は家のドアを開く。
ついで口から出かかった言葉を、呑み込んだ。

だが、あいつのあの言葉を思い出して、俺はふっと笑って。言葉には出さずに口を動かすだけにとどめて、ドアを閉めた。

父さん

母さん



そして──…兄さん




“いってきます”
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