英雄の笑顔、悪者の涙

【その3:半信半疑の同乗者達】

「それで? 俺達を集めて、何をしようとしてるんだよ」
「と言うか、この人達は一体?」
 不機嫌その物の幸太郎と、心底不思議そうな翔一に詰め寄られながらも、白刀はポットから客用のカップへコーヒーを注ぎつつ、いつもの冷ややかな視線を二人に返す。
 そして、心底面倒臭そうに一つの溜息を吐くと……
「そうだな、そろそろ説明してもいいだろう。まずは鬼……と言うより、『猛士』という組織に関してからか」
「『鬼』ってそもそも、どう言う事だよ? この間の、クチヒコやミミヒコとは違うのか?」
 「鬼」と言われて幸太郎が思い出すのは、かつて彼らが戦った、「鬼の一族」なる存在。
 歪んだ歴史に乗り、現代に渡った挙句、歴史を自らの物に変えようとした「異形」達だ。破壊と殺戮の権化のような性質をもち、御伽噺の中に現れる「鬼」そのもののような「悪役らしい悪役」であったのを記憶している。
 だが、白刀はふるふると首を横に振り……
「違う。奴らは生まれついての純然たる悪であり異形……『オニ』だが、今回語る『鬼』はそれとは別物だ」
 そう言うと、彼女はちらりと視線をヒビキに送る。
 その意味を察したのか、ヒビキはこくりと頷くと、彼女の言葉を継ぐように語りだした。
「少年らが言ってる『鬼』の事は知らないが、少なくとも俺達は自分の心と体を、鍛えて鍛えて、鍛え抜いて自分の姿を鬼と呼ばれる姿に変える」
「鍛えて、体を鬼に変える? どうしてそんな事を?」
 不思議そうに聞いた翔一に、ヒビキは爽やかな笑顔を向け……
「俺達は、魔化魍と呼ばれる化物を退治するために、自分を鍛えてるんだ。ああ、魔化魍ってのは穢れの塊でな。分り易い例なら、世間一般の『妖怪』を想像してくれれば良い」
「河童や泥田坊、火車と言った物か?」
「そう、まさにそれだよ青年」
 天道の挙げた例は、ヒビキにとっては馴染み深い物だったらしい。その名に力いっぱい頷きつつ、心底嬉しそうに手を叩く。
 一方の天道は、自身を「青年」と呼ばれた事に僅かに驚いたらしく、僅かに眉を顰め、不機嫌そうな表情を返す。
 しかしそんな彼らを無視し、今度は白刀が、更に「鬼」に関する説明を続けた。
「そこにいる日高仁志をはじめとする『ヒトが鍛えた結果の鬼』……『オニ』は古くから存在している。……記録によれば、戦国の世では既にいたとされているな。だが、クチヒコ達のような『生まれながらの鬼』……邪念の塊である『怨』と同一視される事が多く、迫害されていたらしいが」
「……そうなのか……」
「不当な迫害、と言う奴ですね」
 鬼の一族と戦った二人としては、異なる存在だと説明されても「鬼」と呼ばれるヒビキに対して申し訳ない気持ちになる。
 正直、「鬼」全般が悪人だと思っていた節があったからだ。
 だが、そんな幸太郎達の様子を気にするでもなく、ヒビキは爽やかな笑顔のまま、どこか自慢気に胸を張り……
「ま、どんな過去があったのかは俺にはわからないけど、今でも魔化魍と戦うために、俺達がいるって訳だ」
「魔化魍を退治し、人々を守る組織が、『猛士』。およそ千人が属しており、表向きはオリエンテーリングを行うNPO団体で、アウトドア商品も売っている」
「じゃあ、さっきヒビキさんが持っていたテントって……」
「そ。『猛士』の支給品」
 なかなか使い勝手が良いんだぞぅ、と言いながら、さも自分が作ったかのように自慢するヒビキ。
――確かに、戦う拠点となるべき場所に張るから、使い勝手や丈夫さは他に類を見ないだろうなぁ――
 と思いつつ、今度ちょっと買ってみようかと翔一が思ったのは、ご愛嬌。
「『王』と呼ばれる支部長をはじめ、シフト管理担当の『金』、実際に魔化魍と戦う鬼は『角』、そのサポートを現地で行うのが『飛車』」
「現地で情報提供してくれるのが『歩』と呼ばれる人達で、鬼の弟子は『と』。『と』が昇格すると、俺の『ヒビキ』と言ったような『鬼名』を貰って『角』になる」
「……将棋の駒の名前が、階級なんですね」
「成程、だから最初にこの女に会った時に……」
「武器などを開発する人、だから『銀』と呼んだ。分かってくれた?」
 にこやかな笑顔で問いかけるヒビキに、天道と白刀を除く三人は、こくりと頷く。
 鬼は鬼でも、気の良い鬼……そう言う事なのだろう。
 この男を見る限り、人を守るために戦っていると言うのも、あながち嘘ではないように思えた。
「そして……話は近代に移る。西暦一九七一年にな」
「戦国時代から考えると、確かに最近って感じがしますけど、やっぱり少し昔ですね。その頃に、何が?」
「……ネイティブか」
 白刀の言葉に翔一が不思議そうに問いかけ……そして、唯一その年の意味に心当たりがあった天道が答えた。
 いつもは冷静なその瞳に、一瞬だけ憎悪と悲哀の色が浮かんだように見えたのは、ヒビキの気のせいか。
「その通りだ、天道総司。その年、あまり知られていないが、一つの隕石が日本に落ちた」
「え? そんな事あったんですか?」
「あったのだ、津上翔一。その隕石は、地球外生命体を運んでいた。それらは自身をネイティブと呼んでいたな。簡単に言えば、ヒトに擬態し、増殖する異形の一種だ。『隠者の虫』ごときが偉そうに」
 そこまで言った時、翔一の口が「あ」の形に開く。
 まるで、今まで忘れていた事を思い出したかのように。
「確か、一九九九年に落ちてきた渋谷隕石にも、そう言うのがいましたよね。確か……」
「ワーム。ネイティブはワームの亜種であり、互いに敵対していた」
「そう言えば、そんな騒ぎもあったっけ。俺は魔化魍退治で忙しかったけど」
「人の中で共存しようとしていた殆どのネイティブに対し、ワーム全体とネイティブの一部は、互いに敵対しながらも、人間を巻き込み、世界を自分達だけの物に変えようとしていた」
 淡々と言いつつも、彼女の顔はどこか呆れたようにも見える。
 ワームやネイティブに対してひょっとしたら憤りを感じているのかもしれない。
 そう思うヒビキに気付いたのかどうかは定かではないが、彼女は思い出したようにズボンのポケットから何かを取り出す。
「こんな物に見覚えはないか?」
 そう言って彼女が投げ渡したのは、緑の石が嵌ったペンダント。
 装飾品としてはごくありふれた女性向けのデザインだが、石の部分が強調された印象を受ける。
 石はエメラルドのような透明感はなく、かと言って翡翠のような冷たさもない。強いて言うなら、生物の一部、あるいは卵のような印象が強い。
「それは……」
「安心しろ、それはレプリカだ」
 珍しく色めきたった天道に、彼女はにやりと笑いながら答えを返す。
――本物には、何か問題があるのか?――
 そう思いながら、幸太郎とテディは彼らが住む時代から見れば、明らかに時代遅れなデザインであるそのペンダントをまじまじと見つめる。そしてそれを後ろから覗き込むようにしてヒビキと翔一が眺め……
「あ、覚えてます。確か真魚ちゃんが昔持ってたんですけど、俺の側に近付けたら黄色に変わったんだよなぁ……それで、捨てちゃったんですけど」
「あー、俺も見た事あるな。日菜佳が着けてたっけ。俺が寄った時は青く変色してさ。イブキやトドロキが近付いても青くなったから、気味悪がって結局捨ててたなぁ」
「オリジナルは、ワームが側にいる時は赤、アギトには黄色、鬼には青く反応するように出来ていたからな」
 そこまで言うと、彼女は一息つくためか、自分で入れたコーヒーをすする。
 とは言え、他の面々はその言葉に大きな衝撃を受ける。
 たかが装飾品と思っていたが、あのペンダント……もといそこに嵌っていた石には、そんな機能があったとは露程も思っていなかった。随分と高性能な石だったのだと思うと同時に、ぞわりと彼らの背に冷たい物が走る。
 人間は「ヒトにあらざる者」に対して、時として非情になる。それはアギトである翔一も身に覚えのある事だし、鬼であるヒビキもある程度それは理解している。
 もしも先程白刀が言った事が……石がアギトや鬼にも反応すると言う事が公にされていたら、更に自分達の生き辛い空気が生まれていたかも知れないのだ。
 唯一その事に気付いていないらしい幸太郎が、あまり感心なさそうに息を漏らすと、そのままそれを掲げ、白刀に言葉を投げる。
「それで、これがどうかしたのか? ネイティブやワームの話と、関係あるんだろう?」
「その石はワームを見つけるための『探知機』であると同時に、人間をネイティブに変える為の電波を拾う『受信機』かつ『増幅器』でな」
「ちょっと待ってくれ。……人間をネイティブに、『変える』?」
 テディの言葉に、白刀は再びにやりと笑う。
 嬉しそうな笑みなのか、何かを企んでいる笑みなのか……その辺りは、定かではないが。
「ネイティブの一部は、人間の存在を危険視していた。だからこそ、人類の全てをネイティブに変え、争いのない世に変えようとしていたが……」
「そりゃあ確かに、いい迷惑だなぁ。ひょっとして青年、お前さんがそれを止めたのか?」
「そうだ。俺と、俺の友達が、な」
 珍しくうっすらと嬉しそうな笑みを浮かべ、天道はヒビキに答えを返す。
 彼が唯一認めた「友達」。彼は今も、自分とは違う道で戦っているのだろう。天の道を往く自分とは異なる、新たな道を。
 そう思うと、自然に笑みが零れるのだが、本人は気付いていないようだ。
「なんか、嬉しそうですね天道さん」
「そうか? ……最中に失った者も多いがな」
 最後まで自分を人間だと信じ、そして自らの願いに殉じた紫の蠍。
 闇を見続け、そして最後には抜け出せぬ深い闇を知ってしまった黒い飛蝗。
 自らと同じ姿形を与えられ、自分の居場所を確立しようとした、黒い、もう一人の自分。
 救えなかった数多の命に想いを馳せ、天道は静かに祈る。
 彼らの、穏やかなる休息を。
 そんな天道の祈りを壊すかのように、白刀は一つ、再び溜息を吐くと……
「では、話は西暦二〇〇一年……あかつき号の事故に移す。構わないな?」
 天道と翔一を交互に見やり、一応気遣うように問いかける。
 天道は我に返ったように静かに頷き、翔一も節目がちに首を縦に振った。
「……俺が乗ってた船ですね」
「そうだ。あれは元々、『光の力』が、あの船に入り込んだワームから人間を守る為に、アギト化させようとして失敗した事故だからな」
「えっ!? それじゃあ、俺がアギトになったのは……!」
 さらりと放たれた言葉に、翔一は思わず声を荒げた。
――俺がアギトになったのは……あかつき号の事件は、偶然なんかじゃなくて……――
 そこまで考えた時。その思考を断ち切ったのは……不思議そうなヒビキの声だった。
「ちょっと待った」
「何だ、日高仁志」
「だから、本名で呼ばないで下さい。……ってそうじゃなくて、アギトって何なんですか?」
 はじめて聞く単語に戸惑ったのか、ヒビキが話の流れを断ち切るのを覚悟して問いかける。
 ただ、同じ事を白刀と翔一を除く面々も思っていたのだろう、彼の言葉に同意するように頷くと、じっと二人を見つめて先を促す。
「アギトとは『光の力』と呼ばれる存在によってもたらされた、人間の進化……いや、変化の一種だ」
「変化の一種。……つまり、俺達が鍛え抜いて鬼になるようなものですか、白刀さん?」
「『変化』という点では同じと言って良いだろうな。だが、自発的に変化する『隠』とは異なり、『アギト』は本人の意思に関係なく、気がついたら変化する、かなり傍迷惑な力だ」
「葦原さんがそうでしたね」
 未だ行方不明の男を思いつつ、翔一は苦笑いで返す。
 自分もそうだが、何よりも「アギトの力」に苦しんでいたのは彼だった。
 異形へと変じていく事への恐怖と、異形ゆえに離れていく親しい人達。そんな、自分では耐えられそうにない孤独を噛み締めていた男は今、どうしているだろう。出来る事なら、一人きりでない事を願う。
 そう思いつつも、翔一は自分が戦ってきた存在の名を挙げた。
 今までの説明で、他の面々も「何と戦ってきたか」を、教えてくれたから。
「その頃、一部では不可能犯罪……アンノウンと呼ばれる怪物に殺される人達が現れたんです」
「話の流れからすると、そいつらと戦うのが、アギト……お前と言う訳か」
「……はい。あ、今はもう、アンノウンは出てこないんですよ」
 天道の言葉に、にこやかな笑顔で返す翔一。
 人類とアギトの共存の可能性を見出した「闇の力」に、もはやアンノウンを送り出す理由はないし……それに、アンノウンの気配を感じる事もなくなったのだ。
 アンノウンは出ない……そう思って、当然と言えば当然なのである。
 だが、白刀は自分をここへ誘う際に「アンノウンが現れた」と言った。それが、どうにも引っかかるのだが……
「アンノウン。『ロード怪人』とも呼び名されるそれらを、私の仲間内では『裁判官』と呼んでいる。連中は、ヒトという種を守護する為に放たれた者だ」
「人を守るのに、どうして人を襲うんですか?」
「簡単な事だ、連中が狙った者は『人間ではない』か、『人間でなくなる可能性がある』か……そのどちらかと言う事になる」
「……それじゃあ、まさかアンノウンが殺していた人って……」
 テディの問いに答えた白刀に、翔一は再び驚いたような表情で彼女に詰め寄る。
 彼の言わんとしている事を理解したのか、詰め寄られた方はこくりと頷き……
「人間に成りすましたワームやネイティブ、ファンガイアと呼ばれる異形達。そして、アギトや鬼、オルフェノクと言った、人知を超える力を得る可能性のあった人間達だ。……ああ、面倒なので、ファンガイアとオルフェノクの説明はせん。なくても今回は話が進む」
 カップに注いだコーヒーを飲み干し、彼女は質問を許さないかのような目で五人を見渡す。
 ……独裁者。そんな単語が、幸太郎の頭をかすめたが、口に出したら更に言葉による攻撃をされそうな気がしたので黙っておく事にした。
「あー……でも、鬼は随分古くからいたはずですよね。何故、今頃になって?」
「あの頃は、人にあらざる者が増えすぎた。だから、彼もアンノウンを増やし、対処したのだ」
「彼……あの、黒衣の青年ですね」
「そうだ。アンノウンを生み出した『闇の力』と、アギトを生み出した『光の力』……二人合わせて、一人の『神』。オーヴァーロードと呼ばれているようだが、我々は『審判ジャッジ』と呼んでいる」
 アンノウンを生み出す存在。人智を越える力を持つなら、確かにそれは「神」と呼んで良い。ただ……その対となる存在が、アギトを生み出すと言う矛盾はなんなのか。
 不思議に思うが、それを理解できるのは恐らく「闇の力」と「光の力」の二人だけだろう。
「ひょっとしてそいつが、今回の敵なのか?」
 幸太郎の不審気な問いに、しかし彼女は首を横に振って否定する。
 話の流れから考えると、てっきりその「審判」とやらが、敵として立ち塞がったのかと思ったのだが……
「いや。『審判』は本来、人類に友好的な神だ。以前の……アギトとの戦いにおいて、彼らは人間とアギトの共存の可能性を見出し、今は見守るだけに留めている」
「じゃあ、敵って一体なんなんです?」
「胡乱そうに見るな。今回の敵は……ワームだ。厄介な事に、イマジンと契約していると言う懸念もある」
 あっさりと放たれたその言葉に、全員が一瞬、黙り込んでしまう。
 相手がワームだと言う事は分った。確かに誰になりすましているか分らないと言う点では、厄介だろう。
 ただ、それだけではない。イマジンと契約しているとなると、労力は更に増す事を、幸太郎とテディは知っている。
「ワームがイマジンと契約かよ……」
「ちょ、ちょっと待った青年。イマジン? また新しい単語が出てきたんだけど、今度は何?」
 額を押さえ、深い溜息を吐きながら言った幸太郎に、ヒビキが待ったをかける。
 同様に翔一も不思議そうにテディを見つめ、天道は何を考えているのか分かりにくい目で白刀に視線を送る。
「ざっくり言えば、『選ばれなかった未来』の住人のエネルギー体だ。現代いまの人間と契約して、はじめて実体を得る事ができる」
「ただし、契約の代償は契約者の過去」
「……どういう事だ?」
「契約が完了したとイマジンが判断した時点で、一度だけ過去に飛ぶ事が出来る」
「そして過去において契約者の意識を『乗っ取る』事で、その先の時間を手に入れる。それが最近のイマジンのやり方です」
「人の記憶こそが、時間だからな。記憶が書き換えられれば、時間も変わる。それが、時間運行上のルールだ」
 本当にざっくりとした説明を、幸太郎とテディが交互に行う。
 だが、「選ばれなかった未来」や「時間」などと言われても理解できない。軽く眉を顰める天道達に何を感じたのか、幸太郎はもう一度深い溜息を吐き出し……
「例えば……ヒビキだっけ? イマジンがあんたに憑いて、何でも良いから契約が完了したとする」
「俺? うん」
「そうすると、イマジンはあんたが最も強く記憶に残る時間へ飛んでいく。『あの時ああしていれば』って思う時間に」
 そう言われて、ヒビキが真っ先に思い浮かべるのは「もう一人の弟子」の事。彼は鬼と言う道を選ばなかったが、もしも彼が鬼としての修行を続けていたら、と思う事は多々ある。
「その時間に飛んだイマジンは、その瞬間のあなたの意識を完全に乗っ取ります。そして……二度とあなたに意識を返さない」
「ちょ、ちょい待った。そんな事になったら……」
「恐らく、イマジンはあんたがその先とったであろう行動とは別の行動を起こす。そしてそっちが、他人の記憶に残る」
「そうなれば、『日高仁志』……いや、『ヒビキ』と言う存在は消えたも同然。逆にイマジンはお前の体でその後の人生を謳歌する、と言う訳だ」
 自分が自分でなくなる。
 その事にヒビキはぞっとする。
 自分の意思が消え、全くの他人にその先を塗り替えられる。それは白刀の言う通り、自分と言う存在が消えるのと同じ。
「当然、周囲への影響も変わります。……過去が変わる事で、現在も未来も大幅に変わるんです」
「イマジンって、そんなに恐ろしい存在なんですか……」
「ま、そうさせない為に、俺達がいるって訳」
 極力軽く言いながら、幸太郎はテディの肩に肘を置いて宣言する。
 ワームと契約し、ワームの過去を乗っ取って何をする気なのかは不明だが、少なくとも厄介な状況である事だけは確かだ。
 今更のように白刀の言った「敵」の厄介さを悟り……面々はしばらくの間、沈黙を落とすのであった。
3/30ページ
スキ