「ただいま」
「おかえり〜」

こんな会話が日常になってから、どれくらい経つだろうか。午後7時、仕事を終えて帰ってきた草薙さんを出迎える。

「ん」

玄関で何故か目を閉じながら顔を近づけてくる草薙さん。私には意図がわからず首を傾げた。

「おかえりのキスは？」
「何？！やらないけど…？」

予想外、でもベタな台詞に一瞬ドキッとしたがすぐに立て直す。

「釣れへんなぁ…ん、」

逃れる暇もなくキスをされてしまった。今でも突然されるキスには慣れない。

「っっ結局そっちからするんじゃん！」
「満更でもなさそうな顔やん」

意地悪に笑いながらこちらを見てくる草薙さん。相手が余裕すぎて、少し悔しい。

「別に…！違うし…！」

はははと笑いながら頭を撫でられる。私はいつもこの人の手の上で踊らされてる気がする。

「ハイハイ、そういう事にしといたるわ。…んで、今日は何や？」
「…………ステーキ。焼きたての方が良いと思ったから、今から焼く」
「おぉ！楽しみやな〜。待っててくれてありがとうな」

またキスされそうになり、これは頑張って拒んだ。この人の甘い雰囲気は大好きだが、毎回慣れるまで時間がかかる。

「いいのいいの！…焼くから、座って待ってて」
「ははは、りょーかい」

草薙さんは予想していたのか笑って、ソファに向かっていった。