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FF7BC

◼︎彼なりの気づかい


ぽこん。
頭にコツンと衝撃があって、痛くもないのに思わず「イテっ」と声が出た。

「わりーわりー」

赤髪の先輩が給湯室の方向へ歩きながら、背中越しに言う。
手には、衝撃の正体であろうマグカップ。
口元にはニヤニヤという笑い。

「もう」

痛くない頭を少し撫でる。
終わらない仕事に張り詰めていた気が、なんとなく抜けた。
私も、コーヒーでも飲もうかな。









ぶに。
肩を叩かれて顔を上げると、頬に何かがささる。
赤髪の先輩が近づいてきたのは、気づいていたのに。

「…レノさん……」
「書類だぞ、と」
「…ありがとうございます」

手にした主任の決裁が下りた書類に目を通し、承認印に漏れがないことを確かめる。

具体的に何故そう思うのかわからないが何故か悔しい。
睨めっこしていたデスクトップ画面の端に目を移して時間を確認する。
これも深夜0時という時間のせいに違いない。
私は疲れているんだと思う。
決裁も下りたし、今はとりあえず寝たい。

いつか、やり返してやる。
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