このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

FF7BC

■ぽかぽか



「はぁ…」

思わず、ため息が出た。
白息がふわりと空に舞い上がって消える。

「なんだ、ため息なんてついて」

横に立っている赤髪の先輩が、視線を向けずに問いかけてくる。

「すみません」

今は任務中だ。
ため息を吐いている場合ではない。
キュッと唇を引き締める。

「いや、怒ってるわけじゃない」

気持ちはわかるぞと言う先輩の目線の先には、色とりどりに光る大きなツリー。

「…綺麗ですね」

はあ…と、またため息が出る。
キラキラピカピカ素敵だなあと、思う。

「どうやってすごすんだ、と」

先輩のその問いに視線を向けると、目が合った。
予想外に真剣な顔で先輩が聞くので、何故だか少し鼓動が早くなる。

「…仕事です」

ドギマギしながら答えると、先輩は一瞬不思議そうな顔をした後に、小さく吹き出した。

「そうだったな」

すっかり忘れていたという先輩に、先輩らしいなあと思わず頬が緩む。

「じゃあ、当日はおっさんも含めて本部でパーティーだな、と」

「仕事中ですよ?」

言ったところで、ポケットの中の携帯端末が、振動して存在を主張する。
取り出して、画面を確認する。

「お仕事終了、と」

つぶやく先輩。
直帰していいという上司からのメッセージを一読してから、携帯端末を元あったポケットにしまう。
顔を上げて、おつかれさまですと言おうとしたところで、先輩が被せるように言った。

「よし!メシ奢ってやるぞ、と」

言いながら、ガシッと後ろから肩をホールドされる。
行かないとは言わせない、そんな雰囲気だ。

「何食いたい?」

先輩の声が耳のそばでする。
頬から耳までが、急にぽかぽかしてくる。

これはきっと、ツリーのキラキラピカピカの雰囲気のせいだ。
きっと、そうに違いない。

ちょっとだけ混乱する頭で、先輩が食べたそうな選択肢をいろいろ出して、チョイスする。

「…ラーメンが、食べたいです」
24/27ページ