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FF7BC

■課内旅行



「あいつら今頃何してんだろーな、と」

書類の地層が少しできた机で、開かれているけれどスリープ状態のラップトップの画面を前に頬杖をついたレノが言う。

「この時間だと、夕食ですね」

レノの横で、レノのものとは対照的に煌々と明るく光るラップトップの画面を見つめて、キーボードで何かを入力しながら、金髪の新人が言う。

「知ってる。だって計画したの俺たちだし。
つーか、ありえねーだろ。幹事が居残りって」

レノは、頬杖を解いてそのまま机に突っ伏す。

「ダーツで決めようって言ったの、レノさんです」

答えながらも、新人は入力の手を止めない。

「…なんでダーツって、言ったんだろうな」

突っ伏した状態から、顔だけを横に向けて新人を見る。

「わかりません」

ラップトップ画面に照らされた顔を眺める。
瞳の色に画面の色が写り込んで、いつもと違う色に見える。

「なあ」

呼びかけると、顔がこちらを向く。

「なんですか?」

いつもの瞳の色だ。

「飲み行こうぜ」

言ってみる。

「レノさん」

あからさまに呆れたという顔になる。
最初のうちは、先輩に対してこんな顔しなかったのになあ。

「おっさんなら大丈夫だって。
なんなら、おっさんも誘って行けば問題ないだろ、と」

居残り組のもう1人、今はここにいない元刑事の新人を置いていくつもりはないという意思を伝える。
仲間はずれはよくないぞ、と。

「問題大有りです。
本部を空にするわけにはいかないです。」

職務時間中なのはわかっているが、ほかのタークスは旅行で、自分たちは居残りでデスクワークとは不公平じゃないだろうか。

「真面目ちゃんめ」

レノは、新人に向けていた顔を、また腕の中に戻す。

「真面目で結構です」

新人も、どうやら顔を画面に向けたらしい。
キーボードの入力音が、再び室内に響く。
かちゃかちゃとリズミカルな音だ。

「はぁー…あいつらが帰ってきたら、絶対どっか行ってやるぞ、と」

誰に言うでもなくつぶやく。

「そうですね」

意外にも、返事があった。

「お?乗り気?」

体を起こして、椅子ごと新人の方を向く。

「不公平なのは、いけないと思います」

言いながら、机の引き出しを開けて何かを取り出す。
何かと様子を見ていると、小さく「あった」という声とともに本を一冊取り出して、レノに寄越した。

「ノリがいい子は大好きだぞ、と」

手の中の、最新版のおすすめ観光スポットが載った雑誌を見て、レノが言う。
その言葉に、クスッと笑って新人がこたえる。

「光栄です」
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