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◾️Just called



室内に、着信を告げる音が響く。
腕の時計をチラッと確認し、手を伸ばす。

「はい。 神羅電気動力株式会社 総務部調査課です」

ディズプレイされている番号を見て、相手の顔が頭に浮かぶ。

『よう。』

受話器の向こうから聞こえる声が、思い浮かべた顔と一致して、安堵する。

「お疲れ様です、レノさん」
『お疲れさん、と』

電話でも相変わらずの独特の話し方。
左肩で受話器を固定し、ラップトップを引き寄せて入力ができる態勢を整える。
定時連絡や任務完了についての報告は、無線はもちろん電話やメールなどでも良いとされているが、各自に貸与されている端末のシステムから簡単に行える。
この先輩は、上記の連絡についてはシステムを使ってすることがほとんどで、電話をしてくることは珍しい。

「何かありましたか?」

モバイル端末ではできない調べ事、乗り物等の手配…対応できるよう、思いつくアプリケーションを立ち上げる。

『何もないぞ、と』

相手の言葉に、思わず「へ?」という間の抜けた声が出る。
肩で受話器を固定していたせいで相手にもよく聞こえたらしく、あちら側で笑っている声が聞こえる。

「…切っていいですか?」
『待て待て!』

ため息とともに出た言葉に、先輩が慌てて答える。

「なんですか」
『電話したかったんだよ、と』
「今、業務時間中ですよ?」
『知ってるぞ、と』

何がしたいんだろう、と思わず頭を抱える。

『あ』

受話器の向こうから、何かちょっとうれしそうな、そんな声がする。

「なんですか?」
『ターゲットみっけ、と。じゃあな!』

言うか早いか、プッという音がしてビジートーンが鳴り出す。
思わず受話器を一度見つめ、首をかしげる。

「…」

受話器を戻しながら耳に残る声を思い返し、あの人は本当に自由だなあと、思わず笑ってしまう。

「!」

誰が見ているわけでもないのに、笑いを引っ込めて咳払いをひとつ。
そのまま立ち上がる。

「コーヒーでも飲もうかな」
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