このサイトは1ヶ月 (30日) 以上ログインされていません。 サイト管理者の方はこちらからログインすると、この広告を消すことができます。

FF7BC

◼️有給休暇



「知っての通り、ここは、反神羅の色が濃く残る地域だ」

レノの言葉に、新人が問う。

「身分が露呈したら…?」
「生命の危機、ってやつだな。
気を引き締めて取り掛かるぞ、と」

目の前には、エキゾチックな街並みが広がる。
近年まで神羅と敵対していた都市、ウータイ。
独特の文化が育まれており、ミッドガルにはないものを見ることができる。

制服を脱ぎカジュアルな観光客風に偽装した、レノと新人。

「すいませーん。
抹茶パフェと、和三盆と抹茶のドリンクくださーい。」

迷うことなく足を進め入ったその店で、メニューをちらっとみてレノが声を上げた。

程なくして出てきた品を見ながら、新人が言う。

「こういうタイプより、生クリームたっぷり系がお好きなんだと思っていました。」
「まあね。でもさ、本場のはやっぱり違うのよ。」

いただきますと手を合わせて、それぞれの注文した品をひとくち食べる。
なんとも言えない幸せを噛みしめる。
激務の中の、ささやかな幸せだ。

今までなんとなくひとりで楽しんで来た、甘味という趣味。
ひょんなことから新人がそこに加わり、気づけば予定を合わせて出かける趣味仲間だ。

「ひとくち、食ってみ」

スプーンの上には、抹茶アイスと生クリームと餡子。
新人は「いただきます」と小さく言って、パクリとレノが差し出したスプーンに口をつける。

「これは…抹茶と餡子ってすごく相性がいいんですね」
「だろ?抹茶はミッドガルで食べるのよりなんていうか…」
「味が濃くて甘すぎないです」
「そうそう。ほい、まだ餡子あるぞ」
「お嫌いなんですか?」
「こしあん派なんだぞ、と」
「そうなんですね」

レノがスプーンで掬い出した餡子を、新人は差し出されるままにぱくぱくと食べる。
にこにこと幸せそうなその顔を見て、レノもうれしくなる。

「私のも、どうぞ」

新人が、自分の前に置かれたドリンクカップをレノに差し出す。
ストローに口をつけてひとくち飲むと、ふんわりと口の中に抹茶の香りと和三盆のやさしい甘さが、広がる。

「うまいな、これ」
「上品な甘さですよね」

ほぅ…と幸せのため息が漏れる。

「ここまで来た甲斐があったぜ」
「ステキなお店を教えて下さって、ありがとうございます」

のんびりと座っていたいが、そうもしていられない。
食べ終えて、席を立つ。
タークスは多忙だ。

「よし。いくぞ、と」

会計を済ませて外に出る。

「ところで、ここまでの交通手段についてですが」

ミッドガルからウータイまで、会社の輸送便を使って来た。

「明日からのお出かけ先に前乗りするためだから、いーの」
「なるほど」

前乗りの日程に合わせて、有給を取った。
今は業務時間内ではない。
そして、任務地までの移動に輸送便を使うことになっていたのだから、問題ない。

「上手に効率よく巡るのが、レノさんの流儀だぞ、と」
12/27ページ