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FF7BC

◼️甘いもの



「なんで!俺がこんなこと!!」

大声でレノが叫ぶ。

「こんなことって!ありえるか!?
泣く子も黙る!タークスだぞ、と!?」

感情に任せて、大声で叫ぶ。

「俺も、お前も!ヘリ、操縦できる!車、運転できる!」

そんなレノの横で、涼しい顔の新人が言う。

「レノさん、なんで片言なんですか?
ヘリは1機はツォンさんが使われていて、1機は緊急修理中。もう1機は緊急時に備えて待機中ですよ。」

金色の髪が、向かい風に揺れている。

「あのお嬢様、はちゃめちゃやって1機お釈迦にしやがって!!」
「車はルードさんが1台使用中です。」
「けど、もう3台あったよな!?」
「メンテナンス中と、副社長が遊びに出かけられました。」
「なんで!タークスの車で!遊びにいくんだよ!
あの人いくらでも持ってんのに!!おかしいだろ!」
「ちなみに、バイクも修理中です。」
「期待のルーキーくんが!またなんかやってんだろ!?
あいつは!自分のバイク!いじってろよ!!」
「そんなに大声を出してたら疲れませんか?」
「向かい風で耳元でぶぼぼぼって言ってて!何言ってんのかわかんねえんだよ!」
「私は、レノさんの声が大きいので聞こえます。」

相変わらず涼しい顔の新人に、レノはがっくりと肩を落とす。
そして天を仰いで息を吸い込む。

「なんでこのレノさんが、チャリなんだよ!!」

タークス2人が、自転車で街を走っていく。
なかなかない光景だ。

「レノさん、ただの自転車じゃありません。
パンクしない電動アシスト付き自転車です。
神羅の技術を結集した最新鋭の自転車です。」

少し嬉しそうな新人。

「宝条博士が開発に携わってるってだけで、胡散臭いんだよ!!」

半泣きのレノ。

大きくため息をついて、レノは勢いに任せて漕いでいたのを、やめる。
並ぶようなスピードで走りながら、レノが口を開く。

「ていうか、なんでそんなうれしそうなわけ?」

なぜかウキウキしている新人に、問う。
新人はにっこりと笑う。

「レノさん。私、寄り道をしたいです」
「お?」

レノは驚く。
この新人に、似つかわしくない発言だ。

「軍事学校首席さんが、寄り道ですか?」
「レノさん」

首席という言葉に反応してか、半目になった新人。
次の瞬間、ふふっと笑って言う。

「よい成績を常にキープして普段から品行方正にしていると、少し何かやっても気にされないんですよ?」

レノは、驚く。
驚くが、それと同時に笑いがこみ上げる。

「おおっと。なかなかタークスらしくなってきたな、と」

レノの言葉に新人は「ありがとうございます」と返す。

「それで?」

話を促すレノに、新人が答える。

「実は、この先に話題のお店があるんです」
「へえ」
「ヘリでも、車でも行きにくい場所です」
「なるほど」

だからうれしそうだったのかと、レノは納得する。

「泣く子も黙るタークスに自転車を使わせるんです。
これくらい特典があっても、いいと思うんです」
「おや?気にしてたんじゃないかよ、と」

言って、2人で笑う。

「あ、レノさん。ここです」
「お…」

目の前にはこぢんまりとした、小さな店。
甘い香りが、漂っている。

「レノさん、甘いものは苦手ではないですか?」
「どっちかっていうと好きだぞ、と」
「そうなんですね」

よかったと笑う新人。

「食べていくのか?」
「いえ、さすがにそれは…業務時間内ですし」
「やっぱり真面目ちゃんじゃないかよ、と」
「おいしいものは、みんなで共有したいじゃないですか」

店の脇に自転車を停めて、鍵をかける。

「そうだ。今度いっしょに出かけようぜ」
「え」
「うまい店、知ってんだぞ、と」
「それは、ぜひごいっしょさせてください。」

というか、レノさんどっちかっていうと好きじゃなくて、甘いもの大好きなんじゃないですか。
そう言う新人よりも早く、レノは店の扉に手をかける。

「大好きだぞ、と」

べ、と舌を出して笑うと、レノは新人よりも早く店の中に入っていく。
ウキウキしたその背中に「ちょっと待ってください!ズルイです!」という声がかかる。


タークスのオフィスで、ケーキを囲んでのブレイクタイムが始まる、少し前の出来事。
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