きせつのもの
今日は荷物が良く届く。しかし、毎年のこととはいえこの量は何だ。
溜息を吐いて、ラルは新しい段ボール箱に手をつけた。
周囲の大人たちはやけに綱吉のことを気に入る、もしくは溺愛して、ことあるごとにプレゼントを贈りつける。
それが誕生日となればなおさらで、遠いイタリアから、はたまた任務中なのか奇妙な住所から、荷物が送られてきていた。
「…………暇人どもめ」
荷札を確認しながらラルは毒づいた。こっちの身にもなれ。
送り主の確認はラルが行っているが、包みを開けるのは勿論綱吉の仕事で、先ほどからリビングを紙だらけにして、新しいプレゼントを見る度に可愛らしい歓声を上げている。
「次は……九代目からだなコラ」
「じーさまから!」
「『お誕生日おめでとう、今度また遊びにおいで』だとさ」
添えられていたメッセージカードを代読して、コロネロはびりびりと包装紙を破る綱吉に聞いた。
「ツナはイタリアまで遊びに行きたいか?」
「うん!」
出てきた大きな図鑑を胸に抱き、綱吉はこくこくと頷く。
「じーさまたちにおれいいうの!」
「……すぐには無理だが考えとくぜコラ」
最後に綱吉と九代目が会ったのはいつだろうとコロネロは思い返しながら答えた。半年、下手したら一年近く会っていないだろうか。
定期的に連絡は取っているが、やはり綱吉本人と会うのを九代目は望む。向こうからやってこられる前に一度、渡伊したほうがいいだろう。九代目以外にも綱吉が懐いている金髪や銀髪の姿を思い浮かべながら、コロネロは脳内の片隅で計画を立てた。
「送られてきたのはこれが最後だ」
若干疲れた様子のラルがリビングに姿を見せ、綱吉に緑の包装紙に包まれた箱を渡した。
「おかーさん、だれから?」
「……ヴェルデからだ」
わあい、と大喜びする綱吉を傍目に、コロネロは小声で聞く。
「それ、大丈夫なのかコラ……」
綱吉が知る由も無いが、ヴェルデは奇妙な道具の開発を生きがいとしている。主たる被害者の一人となっているコロネロとしては、いまいち信用が置けない相手なのだろう。
「だが取り上げるわけにもいかんだろう」
万が一、危険物だったら俺が責任を持って制裁する。
仁王立ちで言い切ったラルの背後に、コロネロは鬼を見た気がした。
――結局ヴェルデから送られてきたものはよいこの実験セットなる玩具で、箱の裏に書かれた説明書きが正しいなら、身近なもので色水を作って遊ぶキットらしい。
「流石のヴェルデもまともなの選んできたなコラ」
「そりゃ、ラルに殺されたくねーからな」
いつの間に上がりこんできたのか、コロネロの後ろでリボーンが腕組みして頷いていた。
「リボーン!」
両親に次いで会う機会の多い大人の登場に、綱吉ははしゃいだ声を上げる。
「ちゃおっすツナ、昨日はありがとな。今日は俺が祝う晩だぞ。ほら、誕生日おめでとう」
「ありがと!!」
手ぶらで綱吉の頭を撫でていたリボーンが、何所からか、まるで手品のように紙袋を取り出し手渡す。ぐい、とプレゼントを引き出し綱吉はうわあ、と声を上げた。
「……おようふくだ」
「まだあちーから、もっと寒くなって……って、聞いてんのか?」
「聞いてねえぞコラ」
明らかに冬用と思われるふわふわのコートを早速綱吉は羽織る。しばらくは嬉しそうに跳ねていたが、ふと眉を下げあついと呟いた。
「当たり前だ。これは冬になってから着るんだぞ」
「わかったー」
「じゃあ、これは俺が冬まで預かっておくからな」
もぞもぞとコートを脱ぎながら、綱吉は返事をする。汚されないうちにコートを受け取り、ラルが言った。
たくさんのプレゼントが置かれたリビングを見回し、ふとリボーンが首を傾げコロネロを見た。
「お前等の分はもう渡したのか?」
「今からだぞコラ」
「荷物の開封に手間取ってな」
「……だろうなあ」
部屋の片隅に詰まれた空のダンボールに気付き、リボーンは呆れたように笑った。
「どんだけ貰ってんだ、このガキは」
「アルコバレーノにボンゴレに、果てはヴァリアーだコラ」
「すげえラインナップだな……。ま、お前等に貰うものがツナにとっちゃ一番嬉しいだろーが」
何だかんだと大人達に構われても、綱吉はまだ両親が大好きでたまらない年頃の子供だ。一方の両親も、特にラルは厳しい面もあるが、綱吉のことを本当に大事にしている。
「さっさと渡しちまえ」
リボーンの急かすような、けれど楽しそうな声に背を押される
コロネロとラルは一度顔を見合わせ、同時に綱吉の名を呼んだ。
「綱吉」
「はあい」
「誕生日おめでとう」
「また大きくなったなコラ」
産まれてきてくれて有難う。
そんな言葉を掛けられながら、綱吉はコロネロとラルからそれぞれ抱きしめられた。照れくさそうに笑って、綱吉も両親に抱きつく。
「ありがとう!」
「プレゼント、大事にすんだぞコラ」
新たにプレゼントが二つ、綱吉の前に置かれる。それぞれの包みを破り、満面の笑みを浮かべた。
「ロボットとブロック!」
最近綱吉がはまって見ている戦隊もののロボットと、バケツいっぱいに詰められたブロック。流石にいつも一緒に生活しているだけあって、綱吉の趣味はお見通しだったらしい。
「遊んだらきちんと片付けること。いいな?」
「はーい!」
ラルの言いつけにぴし、と手を挙げて答えた綱吉はもう一度両親に飛びつき、「ありがとう」と繰り返した。
*****
「ツナー、九代目達にお礼ついでに写真取るぞコラ」
「なんでおれいがしゃしんなの?」
「ツナがこんだけ大きくなったっていうのを写真で伝えるんだぞコラ」
「去年も撮っただろう?」
「う……オレ、おぼえてない…」
「ちいさかったからな」
「なあラル」
「どうした?」
「どっちだ、お前等が選んだプレゼント」
「……ロボットだ」
「じゃあ、ブロックは家光か。あいつなかなかいい趣味してんな」
どうして、わざわざ親からのプレゼントが二つ用意されているか、綱吉は知らない。
溜息を吐いて、ラルは新しい段ボール箱に手をつけた。
周囲の大人たちはやけに綱吉のことを気に入る、もしくは溺愛して、ことあるごとにプレゼントを贈りつける。
それが誕生日となればなおさらで、遠いイタリアから、はたまた任務中なのか奇妙な住所から、荷物が送られてきていた。
「…………暇人どもめ」
荷札を確認しながらラルは毒づいた。こっちの身にもなれ。
送り主の確認はラルが行っているが、包みを開けるのは勿論綱吉の仕事で、先ほどからリビングを紙だらけにして、新しいプレゼントを見る度に可愛らしい歓声を上げている。
「次は……九代目からだなコラ」
「じーさまから!」
「『お誕生日おめでとう、今度また遊びにおいで』だとさ」
添えられていたメッセージカードを代読して、コロネロはびりびりと包装紙を破る綱吉に聞いた。
「ツナはイタリアまで遊びに行きたいか?」
「うん!」
出てきた大きな図鑑を胸に抱き、綱吉はこくこくと頷く。
「じーさまたちにおれいいうの!」
「……すぐには無理だが考えとくぜコラ」
最後に綱吉と九代目が会ったのはいつだろうとコロネロは思い返しながら答えた。半年、下手したら一年近く会っていないだろうか。
定期的に連絡は取っているが、やはり綱吉本人と会うのを九代目は望む。向こうからやってこられる前に一度、渡伊したほうがいいだろう。九代目以外にも綱吉が懐いている金髪や銀髪の姿を思い浮かべながら、コロネロは脳内の片隅で計画を立てた。
「送られてきたのはこれが最後だ」
若干疲れた様子のラルがリビングに姿を見せ、綱吉に緑の包装紙に包まれた箱を渡した。
「おかーさん、だれから?」
「……ヴェルデからだ」
わあい、と大喜びする綱吉を傍目に、コロネロは小声で聞く。
「それ、大丈夫なのかコラ……」
綱吉が知る由も無いが、ヴェルデは奇妙な道具の開発を生きがいとしている。主たる被害者の一人となっているコロネロとしては、いまいち信用が置けない相手なのだろう。
「だが取り上げるわけにもいかんだろう」
万が一、危険物だったら俺が責任を持って制裁する。
仁王立ちで言い切ったラルの背後に、コロネロは鬼を見た気がした。
――結局ヴェルデから送られてきたものはよいこの実験セットなる玩具で、箱の裏に書かれた説明書きが正しいなら、身近なもので色水を作って遊ぶキットらしい。
「流石のヴェルデもまともなの選んできたなコラ」
「そりゃ、ラルに殺されたくねーからな」
いつの間に上がりこんできたのか、コロネロの後ろでリボーンが腕組みして頷いていた。
「リボーン!」
両親に次いで会う機会の多い大人の登場に、綱吉ははしゃいだ声を上げる。
「ちゃおっすツナ、昨日はありがとな。今日は俺が祝う晩だぞ。ほら、誕生日おめでとう」
「ありがと!!」
手ぶらで綱吉の頭を撫でていたリボーンが、何所からか、まるで手品のように紙袋を取り出し手渡す。ぐい、とプレゼントを引き出し綱吉はうわあ、と声を上げた。
「……おようふくだ」
「まだあちーから、もっと寒くなって……って、聞いてんのか?」
「聞いてねえぞコラ」
明らかに冬用と思われるふわふわのコートを早速綱吉は羽織る。しばらくは嬉しそうに跳ねていたが、ふと眉を下げあついと呟いた。
「当たり前だ。これは冬になってから着るんだぞ」
「わかったー」
「じゃあ、これは俺が冬まで預かっておくからな」
もぞもぞとコートを脱ぎながら、綱吉は返事をする。汚されないうちにコートを受け取り、ラルが言った。
たくさんのプレゼントが置かれたリビングを見回し、ふとリボーンが首を傾げコロネロを見た。
「お前等の分はもう渡したのか?」
「今からだぞコラ」
「荷物の開封に手間取ってな」
「……だろうなあ」
部屋の片隅に詰まれた空のダンボールに気付き、リボーンは呆れたように笑った。
「どんだけ貰ってんだ、このガキは」
「アルコバレーノにボンゴレに、果てはヴァリアーだコラ」
「すげえラインナップだな……。ま、お前等に貰うものがツナにとっちゃ一番嬉しいだろーが」
何だかんだと大人達に構われても、綱吉はまだ両親が大好きでたまらない年頃の子供だ。一方の両親も、特にラルは厳しい面もあるが、綱吉のことを本当に大事にしている。
「さっさと渡しちまえ」
リボーンの急かすような、けれど楽しそうな声に背を押される
コロネロとラルは一度顔を見合わせ、同時に綱吉の名を呼んだ。
「綱吉」
「はあい」
「誕生日おめでとう」
「また大きくなったなコラ」
産まれてきてくれて有難う。
そんな言葉を掛けられながら、綱吉はコロネロとラルからそれぞれ抱きしめられた。照れくさそうに笑って、綱吉も両親に抱きつく。
「ありがとう!」
「プレゼント、大事にすんだぞコラ」
新たにプレゼントが二つ、綱吉の前に置かれる。それぞれの包みを破り、満面の笑みを浮かべた。
「ロボットとブロック!」
最近綱吉がはまって見ている戦隊もののロボットと、バケツいっぱいに詰められたブロック。流石にいつも一緒に生活しているだけあって、綱吉の趣味はお見通しだったらしい。
「遊んだらきちんと片付けること。いいな?」
「はーい!」
ラルの言いつけにぴし、と手を挙げて答えた綱吉はもう一度両親に飛びつき、「ありがとう」と繰り返した。
*****
「ツナー、九代目達にお礼ついでに写真取るぞコラ」
「なんでおれいがしゃしんなの?」
「ツナがこんだけ大きくなったっていうのを写真で伝えるんだぞコラ」
「去年も撮っただろう?」
「う……オレ、おぼえてない…」
「ちいさかったからな」
「なあラル」
「どうした?」
「どっちだ、お前等が選んだプレゼント」
「……ロボットだ」
「じゃあ、ブロックは家光か。あいつなかなかいい趣味してんな」
どうして、わざわざ親からのプレゼントが二つ用意されているか、綱吉は知らない。