Ciao,il mio iride
骸の研究室に行く途中に見かけた、黒いちいさな何かを頭に乗せた、銀髪に黒を身に纏う長身。
それがあまりに知り合いに似すぎていて、後ろを歩いていたツナは思わず銀髪に声を掛けた。
「……スクアーロ?」
銀髪がくるりと振り返る。ツナはやっぱり、と呟いて銀髪――スクアーロに笑いかけた。反対にスクアーロはツナを認識した途端、驚愕の表情を浮かべる。
「ひさしぶり、スクアーロ」
「…………つ、ツナ?なんでてめぇがここに!?」
「知り合い?」
銀髪の上にいた黒いいきものが可愛らしい声で問い、ふわりと浮かんだ。目を丸くして、ツナは支えもないのに、目の前で空中浮遊する小さな姿を見つめる。
黒いフードを目深に被ったその赤子は、不意に口元を笑みの形に変えた。
「マザー」
ぽつり、と赤子が零した声に、スクアーロは首を傾げる。すると赤子は小さな指でツナの胸元に下がるタグを示した。
「スクアーロ、その子マザーだよ。ほら、タグを持ってる」
「…………はあ!?」
更に驚くスクアーロの叫び声を聞き流した赤子はフード越しにツナを見上げ、こう言う。
「黄色。ふーん……君、リボーンのマザーか」
「そうだよ」
ツナが肯定すると、スクアーロは盛大に溜息を吐いた。
「…………てめえが、噂の新しいマザーか」
「え?」
その言葉に、ツナはきょとんとスクアーロを見上げる。銀色の瞳は諦めの色を持って、彼女を見返していた。
「ハルと京子だぁ。えらく可愛いのが来たってわざわざ連絡してきやがったぜぇ」
「…………なんでスクアーロに情報が行ってるの」
「そりゃ、俺も同じだったからだぜぇ」
スクアーロは返答と共に、ツナに何かを突きつけた。
藍色のラインが入る、銀色のタグ。少々色がくすんでいるが、そのデザインはツナの持つタグと全く同じだった。
絶句するツナに、フードの赤子が追い討ちを掛ける。
「自己紹介がまだだったね。僕はマーモン。今回そこのスクアーロをマザーにしちゃった、藍色のアルコバレーノだよ」
「ええええぇっ!?」
今度はツナが叫ぶ番だった。
「どうしたんですか、廊下で騒いで」
話しながら歩いていたせいか、研究室近くまで来ていたらしい。叫び声を聞きつけた骸がドアから顔を出し、ツナ達に声を掛けた。
浮いたままのマーモンを掴んで、スクアーロが骸の方を向く。
「よお六道、来たぜぇ」
「貴女ですか……待ってましたよ、お入りください。おや、ツナさんも一緒ですか」
「来がけに会った」
ぶっきらぼうに答えるスクアーロの横で、ツナはまだショックから立ち直れずにいる。骸は呆れた様子でまたですか、と零した。
「……驚かせたんですね。また男性に間違われたのですか?」
「違げぇ。あいつとは昔馴染みだ」
「まさか、知り合いがマザーとは思わなくて……」
「……そうですか」
それぞれの返事が想像外だったらしい。骸は何とも言い難い顔で、頷いた。そして自分が出てきた扉に向かって呼びかける。
「雲雀君、いらっしゃいましたよ」
「やあ。ちゃんと来たんだ」
研究室の奥から出てきた雲雀は、片手に小さなケースを持っていた。にやりと人の悪い笑みを浮かべて皮肉を口にする彼に、スクアーロは眉間に皺を寄せる。
「来ないとテメエらが煩いからだぁ……ほらよぉ」
彼女は掴んでいたマーモンを、素早く骸へ渡した。
骸に首の根を掴んで持ち上げられ、マーモンはじたばたと暴れた。しかし、目まで覆い隠すほど深く被った黒フードは微塵も乱れない。
「……離せ!」
「お断りします。今日は、貴方の検査が目的です」
「あと、その子もついでに検査だから」
骸の隣で、雲雀が無表情に言う。彼は暴れるマーモンの頭に乗った蛙をつまみ、持ってきたケースに入れてしまった。
「ファンタズマ!」
「大人しくなさい。すぐ終わりますから」
「全部終わったら返してあげる」
全く話を聞こうとしない研究者二人に振り回され、マーモンはぎっ、とスクアーロを見た。どうやらフード越しに睨んでいるらしい。
「っ、騙したねスクアーロ!!」
呆れた様子でスクアーロは答えた。
「言ったぜえ……」
腕から逃れようとじたばた暴れるマーモンをがっちり掴んだまま、骸は笑顔を作る。
「諦めて検査、受けてもらいますよ」
「僕はどうもなってない」
「見た目には見えない不調があっては困ります。大体貴方は平均的に短命ですし」
「仕方ないよ。僕は術士、その分生きていられる時間は短いさ」
「それが、八年持っていますからね。異常事態にカウントしてもいいと思いませんか?」
問われたマーモンは言葉が詰まった様子で、ただ骸をじっと睨んだ。そして、赤子は苛立ちを隠さずにマザーの名を呼ぶ。
「スクアーロ!」
「なんだぁ?」
「置いて帰ったら……呪って口座凍結させてやる」
怨念のこもった声は低い。しかしスクアーロは手を振り、投げやりに答えた。
「あぁ。待ってるからとっとと終わらせてきやがれぇ」
マーモンの消えた研究室の奥を眺め、スクアーロは静かに呟く。
「検査嫌いたあ、手のかかるガキだぜぇ」
その口元は、僅かに微笑みを浮かべていた。
*****
四人目マザーはにょた二人目、スクアーロでした。こうでもしないとマーモン担当が思いつかなかったです。
長身にコートっぽい隊服なので、多分言わないと女性だと思われない気がします。声はハスキーさんを希望。
それがあまりに知り合いに似すぎていて、後ろを歩いていたツナは思わず銀髪に声を掛けた。
「……スクアーロ?」
銀髪がくるりと振り返る。ツナはやっぱり、と呟いて銀髪――スクアーロに笑いかけた。反対にスクアーロはツナを認識した途端、驚愕の表情を浮かべる。
「ひさしぶり、スクアーロ」
「…………つ、ツナ?なんでてめぇがここに!?」
「知り合い?」
銀髪の上にいた黒いいきものが可愛らしい声で問い、ふわりと浮かんだ。目を丸くして、ツナは支えもないのに、目の前で空中浮遊する小さな姿を見つめる。
黒いフードを目深に被ったその赤子は、不意に口元を笑みの形に変えた。
「マザー」
ぽつり、と赤子が零した声に、スクアーロは首を傾げる。すると赤子は小さな指でツナの胸元に下がるタグを示した。
「スクアーロ、その子マザーだよ。ほら、タグを持ってる」
「…………はあ!?」
更に驚くスクアーロの叫び声を聞き流した赤子はフード越しにツナを見上げ、こう言う。
「黄色。ふーん……君、リボーンのマザーか」
「そうだよ」
ツナが肯定すると、スクアーロは盛大に溜息を吐いた。
「…………てめえが、噂の新しいマザーか」
「え?」
その言葉に、ツナはきょとんとスクアーロを見上げる。銀色の瞳は諦めの色を持って、彼女を見返していた。
「ハルと京子だぁ。えらく可愛いのが来たってわざわざ連絡してきやがったぜぇ」
「…………なんでスクアーロに情報が行ってるの」
「そりゃ、俺も同じだったからだぜぇ」
スクアーロは返答と共に、ツナに何かを突きつけた。
藍色のラインが入る、銀色のタグ。少々色がくすんでいるが、そのデザインはツナの持つタグと全く同じだった。
絶句するツナに、フードの赤子が追い討ちを掛ける。
「自己紹介がまだだったね。僕はマーモン。今回そこのスクアーロをマザーにしちゃった、藍色のアルコバレーノだよ」
「ええええぇっ!?」
今度はツナが叫ぶ番だった。
「どうしたんですか、廊下で騒いで」
話しながら歩いていたせいか、研究室近くまで来ていたらしい。叫び声を聞きつけた骸がドアから顔を出し、ツナ達に声を掛けた。
浮いたままのマーモンを掴んで、スクアーロが骸の方を向く。
「よお六道、来たぜぇ」
「貴女ですか……待ってましたよ、お入りください。おや、ツナさんも一緒ですか」
「来がけに会った」
ぶっきらぼうに答えるスクアーロの横で、ツナはまだショックから立ち直れずにいる。骸は呆れた様子でまたですか、と零した。
「……驚かせたんですね。また男性に間違われたのですか?」
「違げぇ。あいつとは昔馴染みだ」
「まさか、知り合いがマザーとは思わなくて……」
「……そうですか」
それぞれの返事が想像外だったらしい。骸は何とも言い難い顔で、頷いた。そして自分が出てきた扉に向かって呼びかける。
「雲雀君、いらっしゃいましたよ」
「やあ。ちゃんと来たんだ」
研究室の奥から出てきた雲雀は、片手に小さなケースを持っていた。にやりと人の悪い笑みを浮かべて皮肉を口にする彼に、スクアーロは眉間に皺を寄せる。
「来ないとテメエらが煩いからだぁ……ほらよぉ」
彼女は掴んでいたマーモンを、素早く骸へ渡した。
骸に首の根を掴んで持ち上げられ、マーモンはじたばたと暴れた。しかし、目まで覆い隠すほど深く被った黒フードは微塵も乱れない。
「……離せ!」
「お断りします。今日は、貴方の検査が目的です」
「あと、その子もついでに検査だから」
骸の隣で、雲雀が無表情に言う。彼は暴れるマーモンの頭に乗った蛙をつまみ、持ってきたケースに入れてしまった。
「ファンタズマ!」
「大人しくなさい。すぐ終わりますから」
「全部終わったら返してあげる」
全く話を聞こうとしない研究者二人に振り回され、マーモンはぎっ、とスクアーロを見た。どうやらフード越しに睨んでいるらしい。
「っ、騙したねスクアーロ!!」
呆れた様子でスクアーロは答えた。
「言ったぜえ……」
腕から逃れようとじたばた暴れるマーモンをがっちり掴んだまま、骸は笑顔を作る。
「諦めて検査、受けてもらいますよ」
「僕はどうもなってない」
「見た目には見えない不調があっては困ります。大体貴方は平均的に短命ですし」
「仕方ないよ。僕は術士、その分生きていられる時間は短いさ」
「それが、八年持っていますからね。異常事態にカウントしてもいいと思いませんか?」
問われたマーモンは言葉が詰まった様子で、ただ骸をじっと睨んだ。そして、赤子は苛立ちを隠さずにマザーの名を呼ぶ。
「スクアーロ!」
「なんだぁ?」
「置いて帰ったら……呪って口座凍結させてやる」
怨念のこもった声は低い。しかしスクアーロは手を振り、投げやりに答えた。
「あぁ。待ってるからとっとと終わらせてきやがれぇ」
マーモンの消えた研究室の奥を眺め、スクアーロは静かに呟く。
「検査嫌いたあ、手のかかるガキだぜぇ」
その口元は、僅かに微笑みを浮かべていた。
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四人目マザーはにょた二人目、スクアーロでした。こうでもしないとマーモン担当が思いつかなかったです。
長身にコートっぽい隊服なので、多分言わないと女性だと思われない気がします。声はハスキーさんを希望。