4 月

真っ黒な空に丸くてギラリとした満月が浮かんでいた。今日は月がとても近くにあるような気がする。
急に足の力が抜けてその場にへたり込んだ。

「……コウ?」
背中におぶっていたコウに話しかけたが反応がない。きっと疲れて眠っているのだろう。
ぼくの横に彼をそっと下ろして月を見つめた。

「………」
父さんが殺された日もこんな満月だった気がする。
「…コウ…」
コウはぐっすりと眠っている。
ふぅ、とため息をついてからまた満月を見つめた。

丸いはずの月が酷く歪んでいる。
コウはぐったりとぼくにもたれかかっていた。

「…う……」

「…なんで…こんな……ッ」

あの時人間たちはぼくを殺そうとした。
日光のせいで動けないぼくをコウは庇っていた。そんなコウを奴らは「魅入られてしまった」「もう手遅れだ」と、手にもっていた凶器でコウを痛めつけた。
コウの悲鳴と飛び散る血肉で彼が何をされているのか理解した。理解して、理解したから、奴らを殺してやった。
不幸にも奴らは自分たちの行いでぼくにたくさんの栄養と力を与えてしまったんだ。


コウの血と肉を。



「うあああ…!!!」


3 壊れてく
5 生きて