5 生きて

やっと日が登ってきた。
皮膚がジリジリと焼け始める。
これでいい。もう終わりにしよう。
そもそも父が死んだあの日にぼくも死んでおけば良かったんだ、そうすればコウが死ぬ事はなかった。

ぼくのせいだ。

「ごめんね、コウ…」

コウ、ぼくの事…好いてくれてたよね。だって、初めて吸った時はなんでもなかった血が最近はとても甘くなっていたんだ。父さんが言ってたよ、自分に好意を持ってる人間の血は特別に甘くなるんだって。
それが友愛なのか恋慕だったのかわからないけど…でも、こんなぼくを愛してくれてありがとう。

きっとぼくは地獄に堕ちるけど もしまた逢えたら…

「今度はちゃんと、ぼくからも好きだってたくさん伝えるから…」



急にコウの体が重くなった。ぼくはそれを支えきれずそのまま一緒に倒れ込んでしまった。

「…」

日陰に倒れていた。
足は日光が当たる所にあるがコウが被さっているので焼けていない。


生き返った、わけではない。
腐敗が進んだとか、死後硬直がどうのとか、そういう類だろう。
それでも。


──生きて、と言われてる気がした。


「…ッ」

死ぬのが怖いぼくの幻聴、妄想かもしれないけど。
コウの体の重さが、ぼくにそう訴えかけているような気がしたんだ。


-END-


4 月